【7/1発効PIC/Sデータ・インテグリティ関連ガイドラインについて(2)】ASTROM通信 224号

ようやく暑さはおさまったものの雨が続いていますが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

今回も前回に引き続き、2021年7月1日に発効したPIC/Sガイドライン、「GMP/GDP環境でのデータ管理とインテグリティに関する適正管理基準(PI 041-1」について見ていきたいと思います。

出典
Guidance on Data Integrity (picscheme.org)

PIC/S GUIDANCE
GOOD PRACTICES FOR DATA MANAGEMENT AND INTEGRITY IN REGULATED GMP/GDP ENVIRONMENTS  

7.  一般的なデータ・インテグリティの原則と成功要因


7.1 医薬品品質システム(PQS)は、原薬や医薬品のライフサイクルのさまざまな段階を通じて
     実装され、科学的でリスクベースのアプローチの使用が促進されなければならない。

7.2 意思決定が正しく通知されることを保証し、情報が信頼できるものであることを検証する
     ために、それらの決定を通知したイベントや活動は正しく文書化されているべきである。
     そのため、適正な文書化手順(GDocPs: Good Documentation Practices)は、データ・
     インテグリティを保証するための鍵であり、正しく設計された医薬品品質システムの
     根本的な部分である。(6章参照)

7.3 GDocPsの適用は、データを記録するために使用される媒体(すなわち、物理的 対 
     電子的記録)により変わるかもしれないが、原則はどちらにも適用可能である。この章では、
     鍵となる原則を紹介し、次の章(8章、9章)では、紙ベースと電子ベースの記録保管の
     両方の文書化に関するこれらの原則を探る。

7.4 GDocPsのいくつかの鍵となるコンセプトは、ALCOAという頭文字にまとめられる。
     ALCOA :Attributable(帰属性)、Legible(判読性)、 Contemporaneous(同時性)、
     Original(原本性)、Accurate(正確性)
     次の属性が追加されることがある。Complete(完全性)、Consistent(一貫性)、
     Enduring(耐久性)、Available(利用可能性) (ALCOA+).
     これらの期待は、イベントが適切に文書化され、データは通知された判断を裏付ける
     ために使用できることを保証する。

7.5 紙及び電子システムの両方に適用可能な基本的なデータ・インテグリティの原則(すなわち
ALCOA+).

●Attributable(帰属性)に対する要件

 記録されたタスクを実行した個人またはコンピュータ化システムを特定し、そのタスクがいつ実行されたかを特定することが可能であるべきである。これは、誰が、いつ、なぜ行ったかを知るのが重要な、訂正・削除・変更といった記録に対してなされたいかなる変更にも適用する。

●Legible(判読性) に対する要件

 全ての記録は判読可能でなければならない ー 情報は、理解し、使用するために、読めて、はっきりしていなければならない。これは、オリジナルの記録や入力を含む、完全とみなされることが求められる全ての情報に適用する。電子データの動的性質(検索、照会、傾向分析ができる)が記録の内容と意味にとって重要な場合、適切なアプリケーションを使ってデータとやりとりする能力は、記録の利用可能性として重要である。

●Contemporaneous(同時性)に対する要件

 活動、イベント、または判断のエビデンスは、それが行われた時に記録されなければならない。この文書は、何がされたか、または、何がなぜ決められたか、すなわち、その時点で決定に何が影響したかの正確な証明として役立つべきである。

●Original(原本性)に対する要件

 オリジナルの記録は、紙(静的)または電子的(システムの複雑さによるが、たいてい動的)であっても、情報の“最初の保存”として説明されることができる。動的な状態で最初に保存された情報は、その状態のままで利用可能でなければならない。

●Accurate(正確性)に対する要件

 記録は、正確な事実の、真実の表現である必要がある。記録が正確であることの保証は、安定した医薬品品質システムのたくさんの要素を通して達成される。これは、以下のことからなる。

  • 適格性評価、キャリブレーション、維持管理、コンピュータバリデーションのような要素と関連した装置
  • 手順の要件の遵守を検証するためのデータレビュ手順を含む活動、行動を管理するためのポリシーと手順
  • 根本原因の分析、影響評価、CAPAを含む逸脱管理
  • 制定された手順の遵守や活動や判断の文書化の重要性を理解した訓練され適格性のある職員

 これらの要素は、あわせて、製品の品質について重要な決定をするために使用される科学的データを含む情報の正確性を保証することをめざす。

●Complete(完全性)に対する要件

 イベントを再現するために必須の全ての情報は、そのイベントを理解しようとした時に重要である。情報が失われたり削除されたりしないことが重要である。情報に求められる詳細さのレベルは、完全であると考えられるように設定された情報の重要性(5.4 データの重要性を参照)による。電子的に生成された完全なデータの記録は、関連するメタデータを含む。(9章参照)

●Consistent(一貫性)に対する要件

 情報は、明白な一貫性を持った論理的な方法で生成、処理、保持されなければならない。これは、データを管理したり標準化(例:年代順の配列、日付のフォーマット、測定の単位、丸めの方法、有効桁数等)したりするポリシーや手順を含む。

●Enduring(耐久性)に対する要件

 記録は、それが必要とされるだろう全ての期間中、存在するような方法で保存されなければならない。
これは、記録の保持期間を通して、消去できない/耐久性のある記録として、完全なままでアクセス可能であり続ける必要があることを意味している。

●Available(利用可能性)に対する要件

 記録は、求められる保持期間を通して、所定のリリース判断、調査、傾向分析、年次報告、監査、査察に関わらず、 レビュの責任を負う全ての該当する人員が、いつでもレビュのために利用可能で、読むことの可能なフォーマットでアクセス可能でなければならない。

7.6 もしこれらの要素が、医薬品品質システムの他の要素と共に、GMPやGDPに関連する活動の
     全ての適用可能な分野に適切に適用された場合、医薬品の品質に関する重大な決定を下す
     ために使用される情報の信頼性は、適切に保証されるはずである。

7.7 真正なコピー
7.7.1 紙の記録原本のコピー(例:分析サマリレポート、バリデーション報告等)は、一般的に、
       例えば、別々の場所で活動している会社間のコミュニケーションの目的のために、とても
       有用である。これらの記録は、別の場所(関連会社、請負業者等)から受け取ったデータ
       が、必要に応じて“真正なコピー”として保持されていること、また、“真正なコピー”
       の要件を満たさない場合(例:複雑な分析データのサマリ)は“サマリレポート”として
       使われることを保証するためにライフサイクルを通じて管理されなければならない。
7.7.2 電子的な方法で生成されたローデータは、静的なデータがオリジナルデータのインテグリティ
       を保持していることが証明された場合は、容認された紙またはPDF形式で保持されている
       ことが考えられる。しかし、データ保持の過程は、医薬品の品質に全ての面で直接または
       非直接的に影響を与える全ての活動(例:ローデータセットを復元するために必要な、以下
       のものを含む分析の記録:ローデータ、メタデータ、関連する監査証跡や結果ファイル、
       特定の分析実行のソフトウエア/システムの構成設定、処理実行の全てのデータ(方法と
       監査証跡を含む))に関する全てのデータ(メタデータを含む)を記録しなければならない。
       印刷された記録が正確な表示であることを検証するために文書化の方法の記録も必要と
       する。このアプローチは、GMP/GDPに従った記録をするには、管理上、厄介かもしれない。
7.7.3 多数の電子記録は、データと一緒に連携するために、その動的フォーマットを維持すること
       が重要である。データは、インテグリティやその後の検証のために、動的な形式を維持しな
       ければならない。データが動的なフォーマットで、どれくらい長い間保持さているべきかの
       裏付けや証明の際、リスクマネジメントの原則が利用されるべきである。
7.7.4 データを受け取るサイトでは、これらの記録(真正なコピー)は紙または電子的な形式(PDF)
       で管理されるかもしれないが、承認された品質保証の手順に従って管理されるべきである。
7.7.5  文書が、容易に検証される文書の真正性を認める方法、例えば、手書きまたは電子的署名
       の使用や、真のコピーを生成するのにバリデートされた手順に従った生成で、適切に認証
       されていることを保証するための注意が払われるべきである。
———- 表 ———-

●”真正なコピー“は以下に発行され、管理されるべきか?

1.

■紙の”真正なコピー“の生成

真正なコピーを発行する会社で:

  • コピーされる文書のオリジナルを得る
  • 原本からいかなる情報も失われていないことを保証した原本の複写(photocopy)をする
  • コピーされた文書の真正性を検証し、“真正なコピー”として新しいコピーにサインと日付を付ける
    “真正なコピー”は、これで所定の受け手に送ることができる。

■電子文書の”真正なコピー“の生成

全ての必要なメタデータを含む電子記録の”真正なコピー“は、電子的方法(電子ファイルコピー)により生成されなければならない。メタデータの損失の可能性がある場合、電子データのPDFの生成は、禁止されるべきである。
“真正なコピー”は、これで所定の受け手に送ることができる。     

発行された全ての”真正なコピー“(ソフト/ハード)の配布リストが保持されなければならない。     

■記録のレビュ時にチェックされるべき特定の要素

  • 真正なコピーの生成手順を検証し、生成方法が適切に管理されていることを保証せよ。
  • 発行された真正なコピーが原本と同一(完全で正確である)ことをチェックせよ。スキャン された画像に改竄がないことを確認するために、コピーされた記録は、原本の記録と 照合されるべきである。
  • データ・インテグリティを保証するために、スキャンもしくは保存された記録が保護されて いることをチェックせよ。
  • 紙の記録のスキャンと“真正なコピー”の生成の検証の後
    • 配布目的(例:顧客への送付)で真正なコピーが生成される場合、どの原本から真正なコピーが生成されたか
      配布目的(例:顧客への送付)で真正なコピーが生成される場合、どの原本からスキャン画像が生成されたか
      は、記録所有者により、それぞれの保管期間中、保持されるべきである。
    • 文書保持を助けるために真正なコピーが作成される場合、スキャン画像が生成されているなら、オリジナルの記録の代わりにコピーを保持することは可能かもしれない。

2.

真正なコピーを受け取った会社で:
紙、スキャンされたコピー、電子ファイルは、適正な文書管理手順に従ってレビュされファイルされるべきである。
文書は、真正なコピーであってオリジナルの記録でないことが明確に示されるべきである。

■記録のレビュ時にチェックされるべき特定の要素

  • 受領した記録が適切にチェックされ保持されていることをチェックせよ。
  • “真正なコピー”の真正性を検証するためのシステムが整備されるべきである。
    例:正しい署名者の検証

————————–
7.7.6 “真正なコピー”の生成と移動や、データ・インテグリティの管理のための責任に取り組む
       ために品質協定を結ぶべきである。“真正なコピー”の発行と管理をするシステムは、
       安定していてデータ・インテグリティの原則を満たすことを保証するために契約の
       委託者と受託者により監査されるべきである。

7.8 サマリレポートのリモートでのレビュの限界
7.8.1 サマリレポート内のデータのリモートでのレビュは一般的に必要である。しかし、データ・
       インテグリティの適切な管理を可能にするためにリモートのデータレビュの限界が十分
       に理解されるべきである。
7.8.2 データのサマリレポートはしばしば物理的に離れた製造場所、販売承認取得者、利害
       関係者の間で提供される。しかし、サマリレポートはその性質や重要な裏付けデータの
       点で本質的に限界があり、メタデータはしばしば含まれていないので、オリジナルデータ
       はレビュできない。
7.8.3 従って、サマリレポートは、必須ではあるが、データ転送のプロセスの1つの要素として
       みなされ、利害関係者や査察当局はサマリレポートのデータだけに全幅の信頼を置か
       ない。
7.8.4 サマリレポートを受け入れる前に、供給者の品質システムとデータ・インテグリティの原則
       の遵守は検証されるべきである。通常、机上やそれと類似のアセスメントの使用を通じ
       て、データ・インテグリティの原則の遵守を判断することは受け入れられないし、不可能で
       ある。
7.8.4.1 外部の組織については、品質リスクマネジメントの観点から重要と考えられる場合は、
         オンサイトの監査を通じて判断されるべきである。監査は、その会社によって生成され
         たデータの精密さを保証し、サマリデータやレポートを生成し配布するのに使用されて
         いるメカニズムのレビュを含むべきである。
7.8.4.2 同じ組織の異なる場所間でサマリデータが配布される場合、供給しているサイトの
         データ・インテグリティの原則の遵守の評価は、他の方法(例:会社の手順の遵守の
         エビデンス、内部監査レポート等)を通じて判断が行われてもよいかもしれない。
7.8.5 サマリデータは、合意された手順に従って準備され、レビュされ、原本のあるサイトの
       権限のある職員によって承認されるべきである。サマリは、サマリの真正性と正確性を
       言明したオーソライズド・パーソンによるサイン付の宣言を伴うべきである。サマリレポート
       の生成、移動、検証に関する取り決めは、品質/技術協定の中で取り扱われるべきである。

8. 紙ベースのシステム固有のデータ・インテグリティの留意事項
8.1 医薬品品質システム(PQS)の体制と、ブランクフォーム/テンプレート/記録の管理
8.1.1 紙ベースの文書の効果的な管理は、GMP/GDPの重要な要素である。従って、文書システム
       はGMP/GDP要件に合うように設計され、文書や記録のインテグリティが維持されるように
       効果的な管理を保証するべきである。
8.1.2 紙の記録は、データのライフサイクルを通じて管理され、帰属性、判読性、同時性、原本性、
       正確性、完全性、一貫した耐久性(消去できない/耐久性のある)、利用可能性(ALCOA+)
       が維持されなければならない。
8.1.3 適正な文書管理基準の概要を述べた手順と文書管理の手筈は、PQSの中で利用可能で
       あるべきである。これらの手順は、データ・インテグリティの手順がいかにデータのライフ
       サイクルを通じて維持されるかについて、以下のことを含み詳細に記述すべきである。

  • 文書の原本と手順の生成、レビュ、承認
  • データを記録するために使用されるテンプレートの生成、配布、管理(原本、ログ等)
  •   記録に関する検索と障害回復手順
  • 文書のコピーの保証に特に重点を置いた、通常使用する文書の生成手順 例:SOP      
    とブランクフォームが、管理され、トレース可能な方法で、発行され、照合される
  • 紙ベースの文書の完成、個々のオペレータの特定方法の記述、データ入力フォーマット、録の修正、正確性・真正性・完全性の所定のレビュ
  • 記録のファイリング、検索、保持、アーカイブ、廃棄

8.2 記録の管理の重要性
8.2.1 GMP/GDPの作業にとって記録は重要であり、以下のことを保証するために記録の管理が
       必要である:

  • 実施された活動のエビデンス
  • GMP/GDP要件の遵守のエビデンスと、会社のポリシー、手順、作業指図
  • 医薬品品質システム(PQS)の効果
  • トレーサビリティ
  • 手順の信頼性と一貫性
  • 製造された医薬品の正しい品質特性のエビデンス
  • 苦情や回収の場合、記録は調査目的で使用できる
  • 逸脱や試験の不合格の場合、記録は、効果的な調査の完了のために重要である

8.3 テンプレートの記録の生成、配布、管理
8.3.1 原本文書の管理・監督は、誰かの不適切な使用や、‘通常の方法による’(すなわち専門家に
    よる不正技術の使用を必要としない)記録の偽造が、許容可能なレベルまで減らされることを
       保証するために必要である。次章の期待は、品質リスクマネジメントアプローチを使い、リスク
       と記録されたデータの重要性を考慮して実施されるべきである。

8.4 記録の生成、配布、管理の期待
———- 表 ———-

●生成

1-期待

  • 全ての文書は、ユニークな識別番号(バージョン番号を含む)を持ち、チェックされ、承認され、サインされ、日付がつけられなければならない。
  • 管理されていない文書の使用は、部門の手順で禁止されるべきである。一時的な記録の手順の使用(例:紙の廃棄)は禁止すべきである。

1-期待を満たさない場合の潜在的なリスク/チェック項目

  • 管理されていない文書は、トレーサビリティがなく、これらの文書が廃棄されたり破壊されたりして、重要なデータの削除や紛失の可能性を増す。さらに、管理されていない記録は、重要なデータを正しく記録するために設計されていないかもしれない。
  • 管理されていない記録を偽造することはより簡単かもしれない。
  • 記録の手順の一次的な使用は、データの削除につながる可能性があり、これらの一時的な記録は保持に関して明確に記述されていない。
  • もし、記録が管理なく作成され、アクセスされたら、イベントの発生した時に記録がされていない 可能性がある。
  • バージョンの管理や発行の管理がされていなければ、廃止されたフォームを使用するリスクがある。

2-期待

  • 文書のデザインは、手書きのデータ入力のために十分なスペースが提供されるべきである。

2-期待を満たさない場合の潜在的なリスク/チェック項目

  • 手書きのデータは、もし、データの入力のためのスペースが十分でないと、はっきりしていなかっ たり読めなかったりする可能性がある。
  • 文書は、コメント(例:記述エラーの場合、エラーの取り消し、イニシャルと日付、説明のための 十分なスペースがあるべきである)のための十分なスペースを提供するためにデザインされるべきである。
  • もし、文書の完成のために、文書に追加のページが加えられたら、メインの記録のページに追加されたページ数と参照が明確に文書化されサインされなければならない。
  • 例えば、目的からはずれ、印刷されたページの裏側に記録されることを防ぐために、全ての必要 なデータを追加するために文書のフォーマットに十分なスペースが提供されるべきであり、データ は文書にやみくもに記録されるべきでない。

3-期待

  • 文書のデザインは、どのデータが入力されるものかを明確にするべきである。

3-期待を満たさない場合の潜在的なリスク/チェック項目

  • 不明確な指図は、一貫性のない/間違ったデータの記録につながるかもしれない。
  • 適正なデザインは、全ての重要なデータが記録されていることを保証し、入力が同時で、耐久性 (消去できない/耐久性のある)があって完全であることを保証する。
  • 文書は、重要なデータがうっかり省略されるリスクを最小化するために、操作手順や関連する SOPと同じ順番で情報が記録されるように構築されるべきである。

4-期待

  • 文書は適切なバージョン管理を保証する状態で保管されるべきである。
  • 原本とコピーを区別するために、原本の文書は目立つマークを含むべきである。(例:うっかりした使用を防ぐための色のついた紙やインクの使用)
  • 原本の文書(電子フォーム)は、許可のない変更やうっかりした変更を防ぐべきである。
  • 例えば電子的に保管されているテンプレートについて、以下の予防策がとられるべきである。
    • 原本テンプレートへのアクセスは管理されるべきである。
    • バージョンの作成と更新に関する手順の管理は、明確で、実用的に適用され、確認される  べきである。
    • 原本の文書は、許可のない変更を防ぐ方法で保管されるべきである。

4-期待を満たさない場合の潜在的なリスク/チェック項目

  • 不適切な保管状態は、許可されていな修正、期限切れやドラフトの文書の使用を許し、原本の紛失を引き起こす可能性がある。
  • 場合により事前の適切な教育による実装の手順と効果的なコミュニケーションは、文書と同じくらい重要である。

●配布と管理

1-期待

  • 更新されたバージョンは、タイミングよく配布されるべきである。
  • 廃止された原本の文書やファイルは保管され、それらのアクセスは制限されるべきである。
  • 全ての発行済で未使用の物理的文書は検索されたり照合されたりするべきである。
  • 品質部門により許可された場合、文書の回収されたコピーは破棄されてよい。しかし、承認された  文書の原本のコピーは保管されるべきである。

1-期待を満たさない場合の潜在的なリスク/チェック項目

  • もし、廃止されたバージョンが使用可能な状態の場合、誤って使用されるリスクがあるかもしれない。

2-期待

  • 文書の発行は、以下の条件を含む文書化された手順により管理されるべきである。
    •  誰が、いつコピーを発行したかの詳細
    •  文書の承認されたコピーを識別する明確な方法 例:安全なスタンプの使用、または、作業場所で利用不可能という紙の色の規則、または、他の適切なシステム
    •  現在承認されているバージョンのみが使用可能であることを保証すること
    •  発行されたそれぞれのブランク文書にユニークな識別子を割り当てることと、記録簿での各文書の発行の記録
    • すべての配布されたコピーへのナンバリング(例:コピー2/2)と、綴じられた帳簿内での発行ページの連番
    • ブランクのテンプレートの追加コピーを再発行する場合、全ての配布されたコピーは保管され、追加のコピーの必要性の正当な理由と承認が記録される(例:オリジナルのテンプレートの記録が傷んだ)と共に、再発行に関する管理された手順に従うべきである。
    • 重要なGMP/GDPのブランクフォーム(例:ワークシート、ラボノート、バッチレコード、管理記録)は、 記録の正確性と完全性を保証するために、次の使用で照合されるべきである。
    • 記録以外の文書(例:手順)のコピーが持ち出し禁止で印刷される場合、文書上にしるされた生成のタイムスタンプと、短期の有効性の提示により、照合は必要ないかもしれない。

2-期待を満たさない場合の潜在的なリスク/チェック項目

  • 安全な方法が使用されないと、テンプレートの複写(photocopy)やスキャン(ユーザに別のテンプレートのコピーを与える)がされた後にデータの書き直しや改ざんをされるリスクがある。
  • 廃止されたバージョンが意図的または間違って使用される可能性がある。
  • 変則のデータ入力により記入された記録は、新しく書き直された記録のテンプレートにより置き 換えられる可能性がある。
  • 全ての未使用のフォームは、理由が報告され、表面を汚してボツにするか破棄するか、安全なファイルに戻されるべきである。
  • 文書の参照用コピーは、生成日、有効期間と持ち出し禁止で正式なコピーでないという明確な表示(例:印刷時に”管理外“と表示)が示されていることをチェックせよ。

————————–

8.4.1 全ての承認された原本の文書(SOP、フォーム、テンプレート及び記録)のインデックスは、
       医薬品品質システムの中で保持されなければならない。このインデックスは、少なくとも
       以下の情報を含む、テンプレートの記録のタイプについて述べられなければならない:
       タイトル、バージョン番号を含む参照番号、ロケーション(例:文書のデータベース、発効日、
       次回のレビュ日付等)

8.5 ユースポイントでの記録の使用と管理
8.5.1 記録は、ユースポイントでオペレータが利用可能であり、これらの記録を扱うために適切な
       管理が行われていなければならない。これらの管理は、記録の損傷や紛失を最小化し、
       データ・インテグリティを保証するために実行されなければならない。必要な場合、汚れ
       (例:原材料により濡れたり、着色したりする)ことから記録を守るための方法がとられ
       なければならない。
8.5.2 記録は、これらのエリアの中で、文書化された手順に従って、指定された人または手順に
       より、適切に管理されなければならない。

8.6 記録の記入
8.6.1 以下に挙げられた項目は、記録が適切に記入されていることを保証するために管理されな
    ければならない。
———- 表 ———-
1-期待

  • 手書きの記入は、業務を実行した人により作成されなければならない。
  • 文書内の未使用の空欄は、斜線を入れ、日付とサインがされなければならない。
  • 手書きの記入は、明瞭で判読できるようにされなければならない。
  • 日付欄の記入は、製造所で定義されたフォーマットでされなければならない。(例:dd/mm/yyyy またはmm/dd/yyyy)

1-期待を満たさない場合の潜在的なリスク/チェック項目

  • 手書きは、同じ人物により一貫して記入されていることのチェック
  • 記入が判読でき、明瞭であることのチェック(例:はっきりしている:未知の記号や略語を含まないこと。例えば前と同じ(“)の記号)
  • 記録された日付の完全性のチェック
  • 記録の正しいページ数と、全てのページの存在のチェック

2-期待

  • 操作に関する記録は、同時に完成されるべきである。

2-期待を満たさない場合の潜在的なリスク/チェック項目

  • 記録が、それらが使用されるエリア周辺内で利用可能であることを検証せよ。すなわち、査察官 は、作業場所で一連の記録がされることを期待するべきである。もしフォームがユースポイントで 利用可能でなければ、作業者が発生時に記録を作成する余地はないだろう。

3-期待

  • 記録は耐久性(消去できない)がなければならない。

3-期待を満たさない場合の潜在的なリスク/チェック項目

  • 手書きされた記入がインクであり、(保持期間中)消せず、ぼけたり、あせたりしないことをチェックせよ。
  • 記録がペンの使用の前に鉛筆で書かれていないことをチェックせよ。(重ね書き)
  • システムからある種の紙への印刷物は、時間と共にあせることに注意せよ。例:感熱紙 
    これらの消せないサインと日付が書かれた真正なコピーが作られ保管されるべきである。

4-期待

  • 記録は、作成者に帰属可能なユニークな識別子を使い、サインと日付が書かれているべきである。

4-期待を満たさない場合の潜在的なリスク/チェック項目

  • 標準化された印刷された文書ではなく、管理され、最新でユニークなサインとイニシャルのログが 書かれていることを確認せよ。
  • 手順が時間と共に発生する場合、全ての重要な入力は、ページや工程の終わりにサインされるのではなく、時間と共にサインされ、日付が書かれていることを保証せよ。
  • 個人の印鑑の使用は一般的には勧められないが、もし使用する場合は、利用が管理されていなければならない。個人と個人の印鑑のトレーサビリティを明確に示す記録がなければならない。個人の印鑑の使用は、所有者により日付が書かれ、許容できると判断されなければならない。

————————–

8.7 記録の訂正
記録の訂正は、完全なトレーサビリティが維持される方法でされなければならない。
———- 表 ———-
記録はどのように訂正されるべきか?
1-期待

  • 変更されるものの1本線による取り消し
  • 適宜、訂正の理由が明確に記録され、重要な場合は検証されること
  • 変更を行った人のイニシャルと日付

1-記録をレビュした時にチェックされるべき特定の要素

  • オリジナルのデータが読めて、不明確になっていないことをチェックせよ。(例:修正液の使用に より目立たなくされていないこと。上書きは認められない)
  • 重要な入力データに変更がされた場合、変更の正当な理由が記録され、変更を裏付けするエビデンスが利用可能であることを確認せよ。
  • 記録の中の、説明のつかない記号や入力をチェックせよ。

2-期待

  • 訂正は、消えないインクで行われなければならない。

2-記録をレビュした時にチェックされるべき特定の要素

  • 手書きされた記入がインクであり、(保持期間中)消せず、ぼけたり、あせたりしないことをチェックせよ。
  • 記録がペンの使用の前に鉛筆で書かれていないことをチェックせよ。(重ね書き)

————————–

8.8 記録の検証(第二のチェック)
———- 表 ———-
いつ、誰が記録の検証を行うべきか?

1-期待

  • 重要な工程のステップの記録(例:ロットの記録の中の重要なステップ)は
    • 作業が行われた時に、独立し、指名された職員によりレビュされ署名されるべきである。 また
    • 品質保証部門に送られる前に、製造部門内の承認された職員によりレビュされること
    • 製造されたロットがリリースまたは出荷される前に品質保証部門 (例:オーソライズド・パーソン/クオリファイド・パーソン) によりレビュされ、承認されるべきである。
      重要でない工程のステップのロットの製造記録は、一般的に、承認された手順により、製造部門の職員によりレビュされる。

  試験のステップに関する試験室の記録は、試験の完了後に、指名された職員(例:第二の分析者)によりレビュされること。レビュ者は、全ての入力、重要な計算をチェックし、データ・インテグリティの原則に従って試験結果の信頼性の適切なレビュを行うことが期待される。
重要な試験の判断が一人の職員(例:寒天培地プレート上の微生物のコロニーの記録)によってされる場合、追加の管理が考慮されるべきである。第二のレビュは、リスクマネジメントの原則に従って必要とされるべきである。
一部のケースでは、このレビュはリアルタイムで実施されることが求められるかもしれない。重要なデータの検証の適切な電子的手段(例:データの写真の画像をとる)は、許容可能な代替手段になるかもしれない。
この検証は、製造関連の業務や作業の後に実施され、適切な職員により、サインされるか、頭文字が記され、日付が書かれていなければならない。
部門のSOPには、文書のレビュのための手順が記述されていなければならない。

1-記録のレビュ時にチェックされるべき特定の要素

  • 関連する活動が実施された時に関連する記録が的確な職員により直ちに利用可能であることを保証するために、製造エリア内での製造記録の取扱に関する手順を検証せよ。
  • 作業中に行われたいかなる第二のチェックも、適切に資格要件を満たし、独立した職員(例:製造管理者またはQA)により実施されたことを検証せよ。
  • 文書が製造部門の職員によりレビュされ、それから、作業の完了後に品質保証部門の職員により  レビュされたことをチェックせよ。

2-期待

  • 現在の承認されたテンプレートを使って、全ての欄が正しく完成されていて、そのデータとデータの許容範囲がじっくりと対比されているかをチェックせよ。
  • 8.6章のチェック項目1,2,3,4と、8.7章のチェック項目1,2をチェックせよ。

2-記録のレビュ時にチェックされるべき特定の要素

  • 査察官は、手順の適格性を判断するために、マニュアルで入力されたデータのレビュに関する会社の手順をレビュすべきである。
  • 第二のチェックの必要性と範囲は、品質リスクマネジメントの原則、生成されるデータの重要性に  基づくべきである。
  • データの第二のレビュが使用された全ての式の計算検証を含んでいることをチェックせよ。
  • 正しいデータが計算のために複写されていることを確認するためにオリジナルデータを調査せよ  (可能であれば)。

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8.9.1 いくつかの非常にシンプルな電子システム(例:秤、pH計)またはデータを蓄積しないシンプルな
    処理装置は、直接印刷して紙の記録を生成する。これらのタイプのシステムと記録は、(再)加工
       や電子の日付/タイムスタンプの変更によるデータの提出に影響を与える機会が限定される。
       これらの状況では、オリジナルの記録は、例えばサンプルID、ロットナンバーなどのトレーサ
       ビリティを保証するために、記録や情報を作成した職員によりサインと日付が書かれるべきで
       ある。これらのオリジナルの記録は、ロットの製造記録や試験記録に添付されるべきである。
8.9.2 これらの記録の耐久性を保証するために検討がされるべきである。(8.6.1章を見よ)

8.10 文書の保持(記録の保持要件の特定と、アーカイブした記録)
8.10.1 記録の各タイプの保持期間は、GMP/GDP要件により指定された期間を(少なくとも)満たさ
    ないといけない。より長い保管期間を規定しているかもしれない他の地域や国の法律が考慮
    されるべきである。
8.10.2 記録は、内部的に、または、品質協定の対象となる外部のストレージサービスを使用すること
    により、保持されることができる。この場合、データの中心位置が特定されなければならな い。
    保持するシステム/設備/サービスが適切で、残存リスクが理解されていることを証明するため
    に、リスクアセスメントが利用可能でなければならない。
———- 表 ———-
どこで、どのように記録がアーカイブされるべきか?
1-期待

  • システムは記録のアーカイブに関しさまざまな段階の記述が整えられるべきである。(アーカイブ ボックスの確認、ボックスによる記録のリスト、保持期間、アーカイブする場所等)
  • アクセスや、記録の再生はもちろん、ストレージでの管理に関する指図が定められるべきである。
  • システムは、全てのGMP/GDP関連の記録が、GMP/GDP要件を満す期間中保持されることを保証 すべきである。

1-記録をレビュした時にチェックされるべき特定の要素

  • アーカイブされた記録を検索するために実装されているシステムが効果的でトレース可能であることをチェックせよ。
  • 記録が規則に従った方法で保存され、簡単に識別可能かどうかをチェックせよ。
  • 記録が規定された場所にあり、適切に保護されていることをチェックせよ。
  • 保管された記録の完全性を保証するために、アーカイブされた文書のアクセスが、オーソライズド・パーソンに限定されていることをチェックせよ。
  • アクセスした記録の存在と記録の回復についてチェックせよ。
  • 使用される保管方法は、必要な時に効果的な文書の検索が可能でなければならない。

2-期待

  • 全ての品質記録のハードコピーは下記のようにアーカイブされるべきである。
    • 損害や紛失を防ぐための安全な場所
    • 簡単にトレースできて、検索できる方法
    • 記録がアーカイブ期間中、耐久性があることを保証する方法

2-記録をレビュした時にチェックされるべき特定の要素

  • 外注したアーカイブ作業に関して、品質協定が整っているか、また、保管場所が監査されているかをチェックせよ。
  • 文書が、全てのアーカイブ期間中、判読可能で利用可能であることを保証するためのなんらかの アセスメントがあることを保証せよ。
  • 印刷物が永久的でない(例:熱転紙)場合、非永久の原本と一緒に検証された(“真正な”)コピー  が保持されなければならない。
  • 使用される保管方法は、必要な時に効果的な文書の検索が可能かどうか検証せよ。

3-期待

  • 全ての記録は、下記の原因による損失や破壊から保護されなければならない。
    • 火事
    • 液体(例:水、溶剤、緩衝液)
    • ネズミ
    • 湿度 など
    • 記録を修正、破壊、差し替えるかもしれない権限のない職員のアクセス

3-記録をレビュした時にチェックされるべき特定の要素

  • 記録を保護するためのシステムがあるかチェックせよ。(例:害虫駆除、スプリンクラー)
    注:スプリンクラーシステムは、その場所の安全要求に従って実装されているべきである。しかし、スプリンクラーシステムは文書への損害を防ぐために設計されているはずである。(例:文書 が水から保護されていること。)
  • 記録への適切なアクセスコントロールについてチェックせよ。

————————–

8.11 オリジナルの記録または真正なコピーの廃棄
8.11.1 記録の廃棄に関する文書化された手順は、定められた保持期間後に、正しい記録の原本や
        真正なコピーが廃棄されることを保証するために準備が整っていなければならない。システム
        は、偶然に現在の記録が破棄されないことと、過去の文書がうっかり現在の記録の中に戻る
        (例:過去の記録が、現在の記録と混同/混合する)ことがないことを保証すべきである。
8.11.2 部門の方針に従って、適切でタイムリーなアーカイブまたは不要となった記録の破壊を証明する
        ために、記録/登録が、利用可能でなければならない。
8.11.3 間違った文書を消去するリスクを減らすための手段が整えられていなければならない。記録の
        削除が許されたアクセス権限は数人の職員に限定されるべきである。

まとめ

長い。。。とげっそりされたかもしれません。

いろいろ注意しないといけない点がありますが、個人的には、真正なコピー(7章)が気になりました。『これは原本のコピーです』と言うには、クリアすべき条件があり、安易な対応はできないと感じました。

  • 真正なコピーの要件を満たさないものはサマリレポートとして扱わないといけない(7.7.1章)が、サマリレポートのリモートでのレビュに限界があること(7.8章)
  • 電子的に作られたローデータを真正なコピーとして紙やPDFで保管するには、ローデータだけでなく関連するデータも保持する必要があり、相当面倒であること(7.7.2章)

など、注意が必要だと思います。

 

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【発行責任者】

株式会社プロス 『ASTROM通信』担当 橋本奈央子 hashimoto@e-pros.co.jp

※本記事は株式会社プロスの許可を得て転載しております。

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