【最近のウォーニングレター】ASTROM通信 244号

梅雨入りしてすっきりしない天気が続いていますがいかがお過ごしですか。

さて今回は、アメリカ食品医薬品局(FDA)がアメリカ国内の製薬会社向けに出したウォーニングレター2件を見ていきたいと思います。
FDAがどのような点を指摘したかをご確認いただければ幸いです。

最近のウォーニングレターの概要  

注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。

■Warning Letter 624650■

2021年11月8日~11月19日のニューヨーク州の製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反について発した2022年3月14日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●XX施設

●指摘1

貴社は装置の洗浄とメンテナンスに関する適切に文書化された手順を制定し従うことを怠った。
(21 CFR 211.67(b))

<指摘1詳細>

貴社は、XX、混合機、打錠機を含む非専用装置を使って、様々な剤形の多数のOTC医薬品を製造している。FDAの査察官は、医薬品と直接接触する面を持つ多数の重要な非専用装置について、洗浄バリデーションの検証が不完全であることを発見した。査察中、貴社は、現在の洗浄手順が医薬品の残留物を適切に取り除き、交叉汚染を防ぐという十分な根拠を提出できなかった。

さらに、貴社の洗浄手順は、一貫して実施されバリデートされるために十分な特異性と詳細が不足していた。例えば、標準操作手順(SOP)MF-22“XXの洗浄手順”の7.3.9章は、XXの指示を含んでいた。XXは、洗浄が非常難しい、製品と接触する装置の例で、それゆえに、通常は特定の医薬品に専用である。

貴社は、一見して清潔なXXが、ある医薬品の残留物を他のものに持ち越さないことを示す化学的なデータを持っていなかった。さらに、視覚的な残留物だけを除去する洗浄は不適切である。洗浄手順上でも、目に見えない残留物も適切に除去されるようになっていなければならない。貴社は、適切でバリデートされた洗浄手順を持っていなければならない。

これは、2020年の査察から繰り返されている指摘事項であり、2020年8月13日の規制会議中に議論された品目であった。

貴社は回答の中で、洗浄手順をレビュして改訂し、洗浄バリデーションプロトコルを最新化し、貴社の洗浄バリデーションを支援するサードパーティと契約するつもりであると述べた。非専用装置の不備がある洗浄手順がアメリカ市場に残っている医薬品に与えたかもしれない影響について検討していないので、貴社の回答は不十分である。さらに、貴社は、製造の再開において暫定的な装置の洗浄バリデーションプロトコルを実装するつもりであると述べたが、そのようなプロトコルについて、十分な詳細を提出しなかった。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・交叉汚染の危険の範囲を評価するための、洗浄効果の包括的で独立した回顧的アセスメント
 残留物の特定、不適切に洗浄された可能性のあるその他の製造装置、交叉汚染された医薬品が販売の ためにリリースされたかどうかのアセスメントを含めよ。
 アセスメントは、洗浄手順の業務の不備を特定し、複数製品の製造に使用されている各製造装置を網羅するべきである。
・貴社の医薬品製造作業におけるワーストケースとして特定された条件を取り入れることに特に重点を置いた貴社の洗浄バリデーションプログラムへの適切な改善
 改善には、これに限定されないが、以下の全てのワーストケースの特定と評価を含むべきである: 
 〇より高い毒性を持つ医薬品
 〇より高い有効性を持つ医薬品または洗浄溶液の中でより低い溶解度の医薬品
 〇洗浄を難しくする特性を持った医薬品
 〇洗浄を最も難しくする拭き取り場所
 〇洗浄前の最大保持時間
・新しい製造装置や新しい製品を導入する前に、貴社の変更管理システムでとられるべき手順の記述
・製品、工程、装置の洗浄手順の検証とバリデーションのための適切なプログラムが実施されていることを保証する最新のSOPのサマリ
・XXを個々の医薬品の専用とするか、貴社の洗浄手順が残留物を適切に除去し交叉汚染を防げることを示す洗浄バリデーションのデータを提出するという約束

●指摘2

貴社は、そのロットが既に出荷されたかどうかに関わらず、ロットまたはその成分の規格に対する説明のつかない不一致や不具合を徹底的に調査することを怠った。(21 CFR 211.192)

<指摘2詳細>

貴社は規格外(OOS)の試験結果や、説明のつかない不一致について適切に調査することを怠った。例えば:
・製剤XXの成分でない原薬グアイフェネシンを含む錠剤XXの22ロットの交叉汚染についての調査で、汚染の根本原因を科学的に特定することを怠った。各OOSの結果を調査する代わりに、貴社は、全てのOOSの結果を1つの調査にまとめ、その結果、なんの是正処置・予防処置(CAPA)も行われなかった。

 その後、貴社は、新しいサンプルの標本を再試験するために、承認済の分析方法TM-48Aの修正を開始した。貴社の再試験は、また、グアイフェネシンの交叉汚染に関し不合格となった。貴社は好ま しい結果が得られなかった場合、不合格のサンプルだけをテストするために新しいバリデートされて いない試験方法TM-149を使用し、合格の結果を得て、その後、販売のためにロットをリリースした。

・製剤XXの成分でない原薬カフェインを含む錠剤の4ロットの交叉汚染についての調査で、汚染の根本 原因を科学的に特定することを怠った。仮定に基づいて、貴社はバリデートされていない試験方法で 不合格のロットについて、合格の結果が得られるまで、繰り返しのOOSの結果の根本原因を特定する ことなくXX回再試験を行い、その後、販売のためにロットをリリースした。

交叉汚染のいずれの場合も、貴社は、もともとのOOSを無効にしたり根本原因を特定したりするための適切な科学的根拠を提供することなく全ての不合格の結果を無視した。代りに貴社は合格の結果を得られるまで、バリデートされておらず検証されていない試験方法を使って不合格のロットを再サンプリングして再試験を行った。

貴社は回答の中で、製品を回収したと述べたが、追加の市場でのアクションを必要とするかもしれない使用期限内の全ての製品のOOSの調査のレビュを実施しなかった。規格に準拠するよう繰り返しの試験を許す貴社の品質部門(QU)のシステム的な不具合を認識して対処することを怠っているので、貴社の回答は不十分である。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・最終的にロットがアメリカに出荷されたかどうかにかかわらず、アメリカ向け製品について、全ての無効化されたOOS(工程内とリリース/安定性試験を含む)の結果の回顧的で独立したレビュと、各OOSに関し以下のことを含む、分析結果の要約したレポート:
 〇無効化されたOOSの結果に関する科学的な正当性やエビデンスが、決定的または決定的でなくても試験のエラーが原因であると示しているかどうかの判断
 〇試験の根本原因を決定的に立証した調査について、論理的根拠を提出し、同じ(または類似の)根本原因に脆弱なその他すべての試験方法が修正のために特定されていることを保証せよ。
 〇根本原因がない、または、試験室が根本原因という結論が出ていない、回顧的レビュでみつかった
  全てのOOSの結果について、製造の徹底的なレビュ(例えば、バッチの製造記録、製造ステップの妥当性、機器/設備の適合性、原材料のばらつき、工程の能力、逸脱の履歴、苦情の履歴、ロットの不具合の履歴)を含めよ。各調査において可能性のある製造の根本原因と、製造作業の改善のサマリを提出せよ。
・貴社のOOSの結果の調査システムに関する包括的なレビュと改善の計画 CAPAは、これに限定されないが、以下のことの対処を含めよ。
 〇試験の調査のQUの監督
 〇有害な試験管理の傾向の特定
 〇試験のばらつきの原因の解決
 〇試験の原因が決定的であると特定されていない場合は、潜在的な製造の根本原因の徹底的な調査の開始
 〇各調査とCAPAの適切な範囲
 〇これら及びその他の修正を含む改訂されたOOSの調査手順
・逸脱、不一致、苦情、OOSの結果、不具合の調査に関する貴社の包括的なシステムの包括的で独立したアセスメント
 このシステムを修正するめの詳細なアクションプランを提出せよ。貴社のアクションプランには、これに限定されないが、調査能力、調査の範囲の決定、根本原因の評価、CAPAの効果、QUの監督、文書化された手順の大幅な改善を含めるべきである。調査の全てのフェーズが適切に実施されることを いかに保証するかについて説明せよ。
・顧客への通知や回収を含む、アメリカで流通している貴社の全ての製品に関する、製品の品質や患者の安全のリスクに対処するためのアクションプラン不合格、OOS、傾向外、その他の意図しない結果や貴社の調査の文書化の取り扱いについての更なる情報に関し、FDAのガイダンス文書Investigating Out-of-Specification(OOS) Test Results for Pharmaceutical Productionを見よ。

●XX施設

●指摘1

貴社は、そのロットが既に出荷されたかどうかに関わらず、ロットまたはその成分の規格に対する説明のつかない不一致や不具合を徹底的に調査することを怠った。(21 CFR 211.192)

<指摘1詳細>

貴社のXX施設は、XX施設で製造された製品の分析試験を実施している。貴社は、OOSの試験結果や説明のつかない不一致について適切に調査しなかった。貴社は、潜在的な根本原因を適切に正当化し、影響を受けた可能性のあるすべてのロットに調査を広げ、CAPAを実施することを怠った。

具体的に、貴社は、XXとXXで、アセトアミノフェン250㎎/アスピリン250㎎/カフェイン65㎎の錠剤の多数のロットに関し、25℃±2℃、60%±5%の相対湿度の安定性試験において、OOSの分析試験結果を得て、不純物XXを発見した。

調査中、貴社は、XXで相対湿度が管理されていない低ストレス条件のもとで保管されている保管サンプルを試験した。合格結果を得た後、貴社は、OOSの結果は “市場の製品のロット18J024の状態を表していないかもしれない”と主張し、科学的な根拠もなく、湿度60%±5%の保管条件がアスピリンの副次的効能と不純物XXの原因であると結論づけた。当時、貴社は、市場にアクションを起こさなかった。貴社は回答の中で、サードパーティのコンサルタントを雇い、アセトアミノフェン250㎎/アスピリン250㎎/カフェイン65㎎の錠剤の製造と販売を中止し、自主回収を開始したと述べた。さらに、貴社は試験作業をレビュし、CAPAを策定し実施するつもりであると述べた。貴社の回答は、60%±5%の湿度の保管条件に対応していなかった。

貴社の回答は不十分である。アメリカの標準的な安定性の保管条件は、相対湿度60%±5%である。さらに、分析試験作業は、XX施設からXX施設に移管された。しかし、XXのマネージャはXXのQUに報告しており、2018年と2020年のXXのFDA査察中に、同様の問題の報告がされていた。貴社の回答は、貴社の試験作業のQUの監督を改善するために2018年から現在の査察の間にとられたアクションの十分な情報に欠けている。

さらに、貴社の回答は以下の詳細な情報が欠けていた:
・現在市場にある他の医薬品の不適切なOOSの調査に潜在的な影響への対応
・繰り返される不十分な調査と、不十分なQUの監督の根本原因の特定
・調査と関連するCAPAに関する貴社の品質システムの効果の評価

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・最終的にロットがアメリカに出荷されたかどうかにかかわらず、アメリカ向け製品について、全ての無効化されたOOS(工程内とリリース/安定性試験を含む)の結果の回顧的で独立したレビュと、各OOSに関し以下のことを含む、分析結果の要約したレポート:
 〇無効化されたOOSの結果に関する科学的な正当性やエビデンスが、決定的または決定的でなくても試験のエラーが原因であると示しているかどうかの判断
 〇試験の根本原因を決定的に立証した調査について、論理的根拠を提出し、同じ(または類似の)根本原因に脆弱なその他すべての試験方法が修正のために特定されていることを保証せよ。
 〇根本原因がない、または、試験室が根本原因という結論が出ていない、回顧的レビュでみつかった全てのOOSの結果について、製造の徹底的なレビュ(例えば、バッチの製造記録、製造ステップの
  妥当性、機器/設備の適合性、原材料のばらつき、工程の能力、逸脱の履歴、苦情の履歴、ロットの不具合の履歴)を含めよ。各調査において可能性のある製造の根本原因と、製造作業の改善のサマリを提出せよ。
・貴社のOOSの結果の調査システムに関する包括的なレビュと改善の計画
 CAPAは、これに限定されないが、以下のことの対処を含めよ。
 〇試験の調査のQUの監督
 〇有害な試験管理の傾向の特定
 〇試験のばらつきの原因の解決
 〇試験の原因が決定的であると特定されていない場合は、潜在的な製造の根本原因の徹底的な調査の開始
 〇各調査とCAPAの適切な範囲
 〇これら及びその他の修正を含む改訂されたOOSの調査手順
・逸脱、不一致、苦情、OOSの結果、不具合の調査に関する貴社の包括的なシステムの包括的で独立したアセスメント
 このシステムを修正するめの詳細なアクションプランを提出せよ。貴社のアクションプランには、これに限定されないが、調査能力、調査の範囲の決定、根本原因の評価、CAPAのっ効果、QUの監督、文書化された手順の大幅な改善を含めるべきである。調査の全てのフェーズが適切に実施されることをいかに保証するかについて説明せよ。
・顧客への通知や回収を含む、アメリカで流通している貴社の全ての製品に関する、製品の品質や患者の安全のリスクに対処するためのアクションプラン不合格、OOS、傾向外、その他の意図しない結果や貴社の調査の文書化の取り扱いについての更なる情報に関し、FDAのガイダンス文書Investigating Out-of-Specification(OOS) Test Results for Pharmaceutical Productionを見よ。

●指摘2

貴社は、試験管理の仕組みを確立しそれに従うことを怠った。(21 CFR 211.160(a))

<指摘2詳細>

貴社は医薬品の試験で使用される多数の試験方法を適切にバリデートしていなかった。CAPA2020-034によると、貴社のXXの試験方法のうち、およそ60の試験方法が不完全であると報告され、75の試験方法はバリデーションまたは検証レポートが見つからなかった。これらの不備またはバリデーション・検証が未実施の可能性のある試験方法は、薬剤の混合の工程内試験や、バルクや製品のリリース及び安定性試験にて、引き続き使用されていた。例えば、方法TM-19“フェニレフリンHCLの分析”は、バリデートされていなかったが、現在市場にあるXX錠剤の少なくともXXロットのリリースの際に使用された。さらに、計算に使用される貴社のEXCELのワークブックは、多数のエラーが示す通り、信頼できる結果を生んでいない。

貴社は回答の中でリリースと安定性試験の作業を一時的に停止し、方法のバリデーションまたは検証を2021年11月1日まで終了するつもりであると述べた。貴社は、医薬品の潜在的な影響について、全ての試験方法と関連するバリデーション及び検証レポートのレビュをするのを助けるCGMPコンサルタントを雇ったと述べた。その後の2021年11月5日の貴社の回答の中では、貴社は、化学及び製品の安定性試と洗浄バリデーションの化学試験を実施するためにXXと契約したと述べた。

貴社の回答は、以下の詳細情報を欠いているために不十分である:
・試験のシステム的な問題の修正の有効性の評価
・現在市場にある医薬品の潜在的な品質上の懸念の回顧的なアセスメントの効果の評価
・貴社の安定性サンプルのCGMP契約試験機関として、XXの適格性評価をいかに実施しているかの説明
・XXを含む貴社の契約試験機関で使用されている試験方法のバリデーションの状況と比較可能性についての取り組み

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社の試験の業務、手順、方法、装置、文書、分析者の能力の包括的で独立したアセスメント
 このレビュに基づいて貴社の試験システムを修正しその効果を評価するための詳細の計画を提出せよ。
・市場にある医薬品の安全性、同一性、濃度、品質、純度への影響の回顧的レビュと包括的アセスメントFDAが方法のバリ―ションの適切な要素と考える一般原則とアプローチについて、FDAのガイダンス文書Analytical Procedures and Methods Validation for Drugs and Biologicsを見よ。

●指摘3

貴社は、権限のある職員のみが製造指図書原本またはその他の記録への変更を実施することを保証するためにコンピュータまたは関連システムの適切な管理を実施することを怠った。(21 CFR 211.68(b))

<指摘3詳細>

貴社は電子データおよびソフトウエアシステムに対する適切な監督と管理をしていなかった。査察中、我々査察官は、貴社の分析者が正当な理由もなく高速液体クロマトグラフィ(HPLC)の1回の注入を実施、文書化された理由もなく“シングル実行”と名付けられたフォルダに関連データを保存するのを確認した。我々査察官は、HPLCの監査証跡の中で、文書化された理由のない“削除された方法”、“中止された実行”、“削除された手動積分”、“データ収集の停止”などの多数の操作も発見した。

さらに、貴社の分析者は、HPLC装置の中の承認された試験方法を変更する権限を持っていた。貴社の電子記録保持システムの不適切な管理は、データが信頼できて正確であることを保証していなかった。

貴社は回答の中で、ソフトウエアXXをインストールして適格性評価を実施し、1回の注入実施の定期的なレビュを含めるためのSOPの改訂、調査目的のために試験室での試験を管理するためのポリシーと手順の確立をするつもりであると述べた。さらに、試験室に品質保証のプロをアサインした。

シングル実行がいつ行われるかの詳細情報を提供したり、明確にしたりしなかったので、貴社の回答は不十分である。さらに、回答には、市場にある製品への影響の回顧的評価も、電子記録保持システムや関連データの監督の改善をいかに計画するかの記述も含まれていなかった。

この文書への回答の中で、以下の情報を含めよ:

・監査証跡をアクティブにした全ての試験機器とソフトウエアのリスト
・ソフトウエアの構成設定、管理者権限を含む全てのユーザ権限の詳細、貴社の各試験システムの監督の役目
 ユーザの権限に関しては、試験室のコンピュータシステムへのアクセス権を持った全て職員に関し、所属組織と役職と共に、役割と関連する権限を明記せよ。管理者権限が完全に分離され、QUの試験職員と完全に独立していることをいかに保証するつもりか詳細を説明せよ。
・暫定的な管理、全てのレベルで全ての該当する試験装置と電子データシステムに関する監査証跡が 有効になる時期、CGMPの対象となる分析結果のリリース前に監査証跡のレビュのための手順が実装 される時期を述べたタイムライン付の貴社のアクションプラン
・貴社の監査証跡内の全ての手動の積分の回顧的レビュとリスクアセスメント
 手動の積分が許可される条件と状況を定義し科学的根拠に基づく手動の積分を事前に定義するために
 文書化された手順を含めよ。それらのイベントの文書化、追跡、調査のための手順を提供せよ。

●契約試験施設の責任

貴社の施設は、他の医薬品製造業者のための試験も実施している。FDAは、請負業者も製造業者自身の施設の延長とみなす。CGMPの遵守の不備は、貴社が貴社のクライアントのために試験した医薬品の品質、安全性、有効性に影響を与える可能性がある。貴社がCGMPを完全に遵守して運用する責任を理解し、これらの医薬品の全ての規格外の試験結果や試験中に発生した重大な問題を全ての顧客に通知することは不可欠である。

更なる情報については、FDAのガイダンス文書Contract Manufacturing Arrangements for Drugsを参照せよ。

●XX社

●指摘1

貴社は、全ての成分、医薬品の容器、蓋、中間材料、包装材料、ラベル、医薬品を承認または拒否する責任と権限を持った品質管理部門を制定することを怠った。(21 CFR 211.22(a))

<指摘1詳細>

XX社は、自身の事業に加えて、上記の両施設を監督し、州際通商への医薬品のリリースに関する責任を持っている。貴社のQUは、洗浄、調査、試験作業の監督を含む、貴社の複数の製造所で製造される貴社の医薬品の製造の適切な監督を実施していなかった。

貴社のQUは、最終製品のリリースに関する責任を適切に果たすことを怠った。貴社のQUは、XX施設か得られた試験結果に基づき医薬品のリリースの判断をしている。上記の通り、医薬品のリリースと安定性試験で使用されている貴社の試験施設における試験方法は検証もバリデートもされていないので、貴社は、貴社の医薬品の同一性、濃度、品質、純度に関する適切な試験を保証することを怠った。

しかし、少なくとも2021年初期以来、貴社のQUは、これらのバリデートされていない試験方法から得られた試験結果に基づき医薬品の多数のロットのリリースを続けた。

貴社は、安定性のサンプルがSOP QA-65“安定性システム手順”に従って、指定された時点で試験されることを保証する責任を適切に果たすことを怠った。その結果、貴社には、現在市場にある医薬品が、ラベルに表示された使用期限を通して、同一性、濃度、品質、純度、安全性を維持していることを保証するための適切なデータが不足していた。

貴社は回答の中で、試験方法は、検証を必要とするUSPモノグラフに基づいており、しかも、検証されていない試験方法を使用して医薬品のロットのリリースに関する根本原因を特定するつもりであると述べた。また貴社は、方法の検証を実施し安定性サンプルを試験するために、サードパーティの試験機関と契約したと述べた。

貴社は医薬品にUSPモノグラフがあるかどうかに関わらず、バリデートも検証もされていない試験方法を使うことにより現在市場にある医薬品の同一性、濃度、品質、純度への影響に対処することを怠ったので貴社の回答は不十分である。

この文書内の重要な調査結果は、貴社のQUがその権限と責任を完全に果たすことができないことを示している。貴社はQUに、その責任を果たし、医薬品の品質を一貫して保証するための適切な権限と十分なリソースを提供しなければならない。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・QUが効果的に機能するための権限とリソースを与えられていることを保証するための包括的なアセス
 メントと改善の計画
 アセスメントには、これに限定されないが以下の情報も含むべきである:
 〇貴社で用いられている手順が安定していて適切かどうかの判断
 〇適切な手順の遵守を評価するための、貴社の業務全体のQUの監督の規定
 〇QUがロットの処遇を判断する前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
 〇調査の監督と承認及び全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するためのQUのその他の職務の遂行
 〇これに限定されないが、タイムリーなリソースの提供、新たに発生した製造及び品質の問題への
  積極的な対処、継続的な管理状態の保証を含む、いかに経営陣が品質保証と信頼できる業務をサポートするかの説明
・検証されていない、またはバリデートされていない試験方法を使って医薬品をリリースするための、貴社の品質マニュアルからの逸脱の独立した調査
・バリデートされた、または、検証された試験方法から得られた試験データのみがロットのリリースの判断に使用されていることを保証するための貴社の計画または手順
・顧客への通知や回収の可能性も含む、アメリカで流通している貴社の全ての医薬品に関する製品品質や患者の安全性のリスクに対処するためのアクションプラン

●複数製造所での繰り返しの査察結果

FDAは、貴社のネットワーク内の複数の施設で同様のGMPの査察結果を挙げた。多数の施設でのこれらの繰り返される不具合は、貴社の経営陣の医薬品製造の監督と管理が不十分であることを示している。
・2018年6月29日、XX施設は、とりわけ、不十分な安定性プログラム、不十分なOOSの調査、不十分な装置の洗浄手順とバリデーションについて指摘された。
・2020年1月31日、XX社は、とりわけ、不十分なOOSの調査、不十分な装置の洗浄手順とバリデーション、不十分なコンピュータ、関連システムの管理について指摘された。貴社の経営陣には全ての不備を完全に解決し、継続的なCGMP遵守を保証する責任がある。貴社は、システム、工程、製造する医薬品がFDAの要件に従うことを保証するために貴社全体の製造作業を迅速かつ包括的に評価するべきである。

●医薬品製造と試験の停止

我々は貴社が、改善が完了するまで2つの施設で、それぞれ医薬品の製造と試験を停止すると約束したと認識している。この文書への回答の中で、貴社がいつこれらの施設での製造作業の再開するつもりかの見込みを提供せよ。さらに、貴社作業の再開前にはこの事務所に連絡せよ。

●データ・インテグリティの改善

貴社の品質システムは、貴社が試験した医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるデータの正確性と完全性を適切に保証していない。CGMPを遵守したデータ・インテグリティ業務を確立し、それに従うためのガイダンスとして、FDAのガイダンス文書Data integrity and Compliance with Drug CGMPを見よ。

我々は、貴社が貴社の作業を監査しFDAの要件を満たす助けをするためのコンサルタントを使用していることを知っている。この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
A.アメリカに出荷された医薬品のデータのレビュ結果を含む、データ記録と報告の不正確な範囲の包括的な調査
  貴社のデータ・インテグリティの欠如の範囲と根本原因の詳細な記述を含めよ。
B.みつかった不具合の貴社の医薬品の品質への潜在的な影響の、現在のリスクアセスメント
  貴社のアセスメントには、データ・インテグリティの欠如の影響を受けた医薬品のリリースによる患者のリスクの分析と、継続的な作業により引き起こされるリスクの分析を含めるべきである。
C.貴社の全社的な是正処置・予防処置の詳細を含む、貴社の経営戦略
  是正処置の詳細な計画には、貴社が、微生物及び分析のデータ、製造記録、FDAに提出される全てのデータを含む、貴社で生成された全てのデータの信頼性と網羅性をいかに保証するつもりかも記述すべきである。

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストでもない。貴社には、違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。

全ての違反を速やかに是正せよ。この問題への即座の適切な対処の不履行は、制限のない差し押さえ、強制命令を含む、さらなる通知のない制限または法的なアクションにつながるかもしれない。未解決の違反は、他の連邦機関の契約授与も妨げるかもしれない。

違反への対処の不履行は、FDAの輸出証明の発行の差し控えにもつながるかもしれない。全ての違反に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/ultra-seal-corporation-624650-03142022

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■CMS#623475■

2021年10月21日~11月3日のプエルトリコの製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反について発した2022年3月25日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

貴社の品質管理部門は、製造された医薬品がCGMPを遵守し、同一性、濃度、品質、純度に関して制定された規格を満たしていることを保証することを怠った。(21 CFR 211.22)

<指摘1詳細>

貴社は、医療従事者が使用するためにラベル表示された、開いた傷口の消毒や手指の消毒剤のOTC医薬品を製造している。貴社の品質部門(QU)は、貴社の医薬品の製造のための適切な監督を行わなかった。

例えば、QUは以下のことを保証することを怠った:
・入荷した成分の同一性、純度、濃度、その他の品質特性に関する適切な試験
 (21 CFR 211.84(d)(1)と(2))
・貴社の最終製品の適切な試験と適切な規格(21 CFR 211.165(a))
・プロセスバリデーション、調査、逸脱、機器の洗浄、変更管理について述べた適切な手順
 (21 CFR 211.22(d))
・継続的な安定性プログラムの遵守(21 CFR 211.166(a))

・年次製品照査の実行(21 CFR 211.180(e))
貴社の品質システムは不適切である。CGMPの規制要件を満たすための品質システムとリスクマネジメントのアプローチを実装する助けとして、FDAガイダンス文書Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulationsを見よ。

この文書への回答の中で、貴社のQUが効果的に機能するために権限とリソースを与えられていることを保証するための包括的なアセスメントと改善計画を提出せよ。アセスメントには、これに限定されない

が以下の情報も含めるべきである:
・貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
・適切な手順の遵守を評価するための貴社の作業全体のQUの監督に関する規定
・QUがロットの処遇を判断する前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
・調査の監督と承認及び全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するためのQUのその他の職務の遂行

●指摘2

貴社は、製造、加工、包装、保持に使用される建物を、清潔で衛生的な状態に維持することを怠った。(21 CFR 211.56(a))

<指摘2詳細>

貴社の施設の医薬品製造エリアは荒れていた。例えば、我々査察官は、製造エリアで壊れた壁、ごみ、開放された製造装置のすぐ近くの溜まった水を発見した。

この文書への回答の中で、施設及び装置の、日常的で慎重な作業の管理監督を実装するための是正処・予防処置(CAPA)の計画を提出せよ。この計画には、とりわけ、装置/施設の性能の問題の迅速な検知、修理の効果的な実施、適切な予防保全スケジュールの遵守、装置/施設インフラストラクチャへのタイムリーな技術的アップグレード、継続的なマネジメントレビュのためのシステムの改善を含めるべきである。

●指摘3

貴社は、貴社が、それが持つとうたわれている、または、表示されている同一性、濃度、品質、純度を持つ医薬品を製造していることを保証するために設計した製造及び工程管理のための文書化された手順を制定することを怠った。(21 CFR 211.100(a))

<指摘3詳細>

貴社は、医薬品の製造に使用されている工程がバリデートされていることを立証していなかった。さらに、貴社は医薬品の製造のための成分として、貴社の水システムの水を使用しているが、貴社は、水システムが使用目的に適した水を継続して製造することを保証するために適切に設計され、管理され、保全され、モニタされていることを立証していなかった。

貴社には、プロセスバリデーションのプログラムが欠けている。プロセスバリデーションは設計やライフサイクルを通じた工程の管理状態の安定性を評価する。製造工程の各重要な段階が適切に設計されていなければならず、投入される原材料、中間材料、最終製品の品質を保証しなければならない。

工程の適格性評価は、初期の管理状態が確証されているかどうか判断する。商用流通の前に工程の適格性評価を成功させる必要がある。その後、製品のライフサイクルを通じて貴社が安定した製造作業を維持していることを保証するために、工程の性能と製品品質の継続的で慎重な監視が必要である。

FDAがプロセスバリデーションの適切な要素と考える一般原則とアプローチに関し、FDAのガイダンス文書Process Validation : General Principles and Practicesを見よ。この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・製品のライフサイクルを通じて管理状態を保証するために、関連する手順を添えたバリデーションプログラムの詳細なサマリ
 継続的な管理状態を保証するための、工程の性能適格性評価と、ロット内およびロット間のばらつき の継続的なモニタリングに関するプログラムを述べよ。
・貴社の販売している各医薬品に関する適切な工程の性能適格性評価の実施に関するタイムライン
・装置と設備の適格性評価に関する工程性能プロトコルと文書化された手順を含めよ。
・継続的な管理状態を保証するために、ロット内およびロット間のばらつきの慎重なモニタリングを含む、各製造工程の設計、バリデーション、保全、管理、モニタリングに関する詳細なプログラムを提供せよ。また、貴社の装置と設備の適格性評価に関する貴社のプログラムと、貴社の水システムの設計、管理、保全の包括的で独立したアセスメントも含めよ。
・適切な水システムを設置し運用するための徹底的な改善計画
 改善されたシステムの設計が、USPモノグラフの精製水の規格及び適切な微生物数の上限に準拠した水を一貫して製造することを保証するための、安定した継続的な管理、保全、モニタリングのプログラムを含めよ。
・微生物数の上限に関しては、貴社の水の微生物総数の上限が、貴社で製造される製品の使用目的を考慮して適切であることを保証せよ。
・発見された水システムの不具合の、現在アメリカで販売中または使用期限内の製品の全てのロットの品質への潜在的な影響に対応した詳細のリスクアセスメント
 リスクアセスメントに対応して貴社がとろうとしている、顧客への通知や製品の回収などのアクションを明記せよ。

●医薬品の製造停止

我々は、この施設で医薬品の製造を停止するという貴社の約束を認識している。しかし、貴社は製造業者として引き続き登録されている。この文書への回答の中で、貴社がこの施設または別の施設で今後医薬品の製造を再開するつもりかどうかを明確にせよ。

もし貴社が医薬品の製造を再開するつもりなら、適切な是正処置がとられることを保証し、作業を再開する前に会議の計画をこのオフィスに通知せよ。

我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、もし貴社がアメリカ向けの医薬品の製造を再開するつもりなら、我々は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。

貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを遵守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。

●施設での繰り返しの違反と査察結果

2010年10月13日付の以前の無題の文書(11-SJN-UTL-02)と、その後の査察で、FDAは、類似のCGMP違反と査察結果を指摘した。繰り返しの違反は、医薬品の製造に対する貴社の経営陣の監督と管理が不十分であることを示している。

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストでもない。貴社には、違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。

全ての違反を速やかに是正せよ。これらの問題への即座の適切な対処の不履行は、制限のない差し押さえ、強制命令を含む、さらなる通知のない制限または法的なアクションにつながるかもしれない。未解決の違反は、他の連邦機関の契約授与も妨げるかもしれない。

違反への対処の不履行は、FDAの輸出証明の発行の差し控えにもつながるかもしれない。全ての違反に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/agropharma-laboratories-inc-623475-03252022

まとめ

いかがでしたでしょうか。

どの指摘事項も、日本の製薬企業でも起こりうる内容だったのではないでしょうか。1件目のウォーニングレターの“契約試験設備の責任”に、“FDAは、請負業者も製造業者自身の施設の延長とみなす。“とありましたが、委受託に関わらず、製薬企業が製品に対する責任を負うことが求められています。

ちょうど、2022年5月に日本で出たオレンジレターにも、受託製造であっても、自らの製造所から出荷する製品の有効性、安全性に対する責任を持つべきであるという指摘がありました。

 オレンジレター:https://www.pmda.go.jp/files/000246593.pdf

是非、ウォーニングレターの指摘内容を参考にしていただければと思います。委受託に関しては、ちょうど、2022年6月22日版の薬事日報でも、厚生労働行政推進調査事業で「医薬品の製造販売業者による品質管理の体制構築に向けた調査研究」で、製造販売業者と製造業者が適切に委受託を行うためのGQP省令の運用に課題があることが指摘されたという記事がありました。この機会に、委受託に関する管理を見直してみるのもいいかもしれません。

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株式会社プロス 『ASTROM通信』担当 橋本奈央子 hashimoto@e-pros.co.jp

※本記事は株式会社プロスの許可を得て転載しております。

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