【最近のウォーニングレター】ASTROM通信 249号

暑さもおさまり、朝晩は虫の声が響くようになってきましたが、いかがお過ごしですか。

さて今回も、アメリカ食品医薬品局(FDA)がアメリカ国内の製薬会社向けに出したウォーニングレター2件を見ていきたいと思います。FDAがどのような点を問題視して指摘しているかをご確認いただければ幸いです。

最近のウォーニングレターの概要  

注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。

■CMS#624281■

2021年11月8日~11月19日のアリゾナ州の製造所の査察でみつかった原薬製造の重大なCGMP違反について発した2022年5月3日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

貴社の製造工程が再現可能な方法で、予め定めた品質属性を満たす中間体及び原薬を製造できるという証明の不履行

<指摘1詳細>

貴社は、アメリカ薬局方甲状腺用原薬の製造工程を適切にバリデートすることを怠った。具体的には、最終混合前にXXやXXのような工程があるが、貴社はプロセスバリデーションに含んでいなかった。貴社の品質部門職員は、貴社が今後これらの工程をバリデートすることを計画していると述べた。

さらに、XXの性能適格性評価は実施されたが、XXの混合時間で最大及び最小の混合サイズで均一な混合品が製造できる能力を示すための事前に定められた合格基準を満たしていなかった。この適合性評価が、工程で製造され、商用にリリースされたアメリカ薬局方甲状腺用原薬のロットのプロセスバリデーションを支持していた。

プロセスバリデーションは、そのライフサイクルを通じて、設計と管理状態の正常性を評価するものである。製造工程の各重要な段階は、投入される原材料、工程内原料、最終の原薬の品質を保証するために適切に設計されなければならない。工程の適格性評価の検証が、初期の管理状態が確立しているかどうかを判断する。

工程の適格性評価の成功は商業流通の前に必要である。その後、製品のライクルを通じて、貴社が安定した製造作業を維持していることを保証するために、工程性能と製品品質の継続的で慎重な監視が必要である。

貴社が製造しているアメリカ薬局方甲状腺用原薬は甲状腺機能低下症を治療するための医薬品を製造するために使用される。これらの製品の治療範囲が狭いため、プロセスバリデーションを通じて適切に評価された貴社の製品の適切な混合と製造は、患者が不十分または過剰な用量を受け取るの防ぐために不可欠である。

貴社は回答の中で、貴社の混合機で製造された全てのロットの回顧的レビュの実施、リスクアセスメントの実施と、プロセスバリデーションの基本計画を立てることを約束した。

貴社は、バリデーション、または、ばらつきの全ての原因を特定するためにとられるアクションに関する工程の性能プロトコルの詳細を提出することを怠ったので、貴社の回答は不十分である。

さらに、貴社の回答は、貴社の各原薬の予測的な工程の性能適格性評価(PPQ)の完了のためのタイムラインを提出しなかった。回顧的バリデーションのアプローチの使用は受け入れられない。

最後に貴社は、この違反が現在市場にある貴社の原薬に与える影響について言及していなかった。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・製品のライフサイクルを通じて管理状態を保証するための、関連する手順を伴ったバリデー ションプログラムの詳細な概要工程の性能適格性評価と、継続的な管理状態を保証するためのロット内とロット間のばらつきの継続的なモニタリングのプログラムについて述べよ。
 〇これには、原薬の最終混合を達成するために原薬ロットを選択する工程も含めるべきである。
・貴社の各原薬のPPQを実施するためのタイムライン
・工程の性能プロトコル、装置と設備に関する適格性評価に関する文書化された手順を含めよ。
・貴社の製造工程の設計、バリデーション、維持、管理、継続的な管理状態を保証するためのロット内及びロット間の慎重な監視を含むモニタリングに関する詳細なプログラムを提出せよ。
 また、貴社の装置と設備の適格性評価に関するプログラムも含めよ。

●指摘2

中間体及び原薬の各ロットについて、規格への一致を判断するために適切なラボの試験が実施されているという保証の不履行

<指摘2詳細>

貴社は、長期間保持されているアメリカ薬局方甲状腺用原薬が、最終的な混合をする前に全ての品質特性を満たすことを保証するためにラボでの試験を実施することを怠った。例えば、2019年2月5日に試験されたロットXXは、リテストなしに、2021年2月15日にアメリカ薬局方甲状腺用原薬、ロットB20361-FSに混合された。貴社の品質部門の職員は、最終混合の前に、ロットのリテストの要件や手順はないと述べた。

さらに、最終の原薬は、混合品の中の最も古い原薬のロットの製造日付に基づくのではなく、混合の日付から2年の再評価日がラベルに表示された。

貴社は回答の中で、全てのロットの回顧的レビュの実施、2年の期限を超えた全てのロットのリスクアセスメント、再発を防ぐための手順の制定を約束した。貴社はタイムラインの提出を怠っているので、回答は不十分である。

この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・貴社の是正処置・予防処置(CAPA)の完了のタイムライン
 完了したら、リスクアセスメントレポートと改訂された手順を提出せよ。
・成分、容器、蓋の全ての供給者の適格性評価がされていて、最終の原薬の混合の前にロットを含む原材料に、適切な使用期限またはリテスト日付が付与されていることを判断するための、貴社の原材料システムの包括的で独立したレビュレビュは、不適切な成分、容器、蓋の使用を防ぐために、入荷した原材料の管理が適切かどうかの判断も含めるべきである。
・貴社の安定性プログラムの妥当性を評価するための包括的で独立したアセスメントとCAPAの計画

 貴社の修正されたプログラムは、これに限定されないが以下のことを含むべきである:
 〇出荷許可前の、市販の容器施栓システムによる貴社の原薬の安定性の検証
 〇うたわれている品質保証期限が妥当かどうかを判断するために原薬の製品の代表的なロットが毎年 プログラムに追加されていくような継続的なプログラム
 〇各ステーション(タイムポイント)で試験される特定の属性の詳細な定義

●指摘3

不正アクセスやデータの変更を防ぐためのコンピュータ化システムの十分な管理を実施することの不履行と、データの削除を防ぐための適切な管理を実施することの不履行

<指摘3詳細>

査察中、我々査察官は、貴社のコンピュータ化システムの多くが、生成されたデータの完全性を保証するための十分な管理に欠けていることを確認した。例えば:
・我々査察官は、貴社のソフトウエアXXの唯一のユーザの役割として “システム/管理者”を見つけた。 このユーザの役割に関し、データの削除や変更に制限はなかった。システムは、2021年3月から2021年11月まで、完成したアメリカ薬局方甲状腺用原薬の分析と同一性試験に使用されていた。
・我々査察官は、完成したアメリカ薬局方甲状腺用原薬のロットのHPLCの分析に関し、オリジナルのピーク面積の結果との多数の逸脱を見つけた。これらの変更に関する文書はなかったが、貴社の品質部門の職員は、これは、HPLC装置XXの未承認の更新が原因であるかもしれないと述べた。貴社の品質部門の職員によれば、この装置は適格性が評価されたことはなかった。
・全てのバリデーションロットの分析のために、完成したアメリカ薬局方甲状腺用原薬の分析結果を計算するのにバリデートされていなExcelのスプレッドシートが利用された。
 スプレッドシートの数式と結果は計算時に印刷され、保存されていなかった。貴社は、査察中、オリジナルのスプレッドシートの電子的コピーもスプレッドシートの原本も提出できなかった。
・貴社のコンピュータの共有ドライブに電子的に保持されている製造記録書原本には、ユーザアクセスの制限がない。貴社の品質部門の職員は、新規および廃止された製造記録書原本にアクセスするためのログイン資格情報を持つ職員に制限はないと述べた。我々査察官は査察中原薬の製造に複数のバージョンの製造記録が利用されているのを見つけた。貴社は回答の中で、貴社の生データの回顧的レビュを実施すること、全ての試験作業のリスクアセスメントを実行すること、全ての電子的ソフトウエアをコンプライアンス状態にするためにバリデーション計画を立てることを約束した。

貴社の提案したアクションが完了するまでのタイムラインと暫定的措置を提出しなかったので、貴社の回答は不十分である。さらに、貴社の回顧的レビュを実施するための計画には、ラベル上は24ヶ月のリテスト日付だったにもかかわらず、18ヶ月のロットが含まれていた。

この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:

・貴社が回答した約束のタイムラインと、CAPAが完了するまでにとられる暫定措置
・完了時、リスクアセスメントのレポートと電子的ソフトウエアのバリデーション計画を提出せよ。
・他にどこに不備があるかを判断するために貴社の製造及び試験作業で使用されているデータ
 レビュのシステムの包括的なアセスメント
 品質部門の監督を含む、不備のあるデータレビュに対処するためのシステム的修正を伴う詳細
 なCAPAの計画を含めよ。CAPAは、これに限定されないが、改訂された製造記録原本、訓練、
 全てのCGMPの記録の完全性を保証するために実装されたシステム的なアクションを含めるべき
 である。
・誤った数式やその他の不備のような不正確さの範囲を特定し調査するための、CGMP作業を
 サポートするために使用されている全てのExcelのスプレッドシートのアセスメント
 指摘された不備に対処し再発を防ぐための、詳細のCAPAの計画を含めよ。
・変更や削除を防ぐための十分な管理に欠けたコンピュータ化システムを使った、使用期限内にありアメリカに販売された原薬に関し、全てのテストデータとバッチレコードの回顧的レビュとリスクアセスメント
 このアセスメントに基づきOOSの結果を得たら、顧客への通知や回収の開始といった貴社のアクションプランを示せ。
・逸脱、普通でない事象、苦情、OOSの結果、不具合に関する貴社の全体的なシステムの包括的で独立したアセスメント
 貴社のCAPAは、これに限定されないが、調査能力、根本原因の分析、文書化された手順、品質部門の監督に関する改善を含むべきてある。

●指摘4

貴社の中間体や原薬が制定された品質基準に従うことを保証するための、全ての試験の手順が科学的に理にかなって適切であることを保証することの不履行

<指摘4詳細>

貴社のアメリカ薬局方甲状腺用原薬の微生物上の属性をリリース前に判断するために使用されている微生物学的試験方法は、以下の点で不備があった。
・購入された培地または社内の培地での成長促進の検証が、文書化されていなかったか実施
 されていなかった。
・方法の適合性とバリデーションが規定されていなかったか文書化されていなかった。
貴社は回答の中で、微生物試験の結果の回顧的レビュの実施、リスクアセスメントの完了、貴社の微生物試験方法の適格性評価を行うことを約束した。
貴社の提案したアクションが完了するまでのタイムラインと暫定的措置を提出しなかったので、貴社の回答は不十分である。さらに、貴社の回顧的レビュを実施するための計画には、ラベル上は24ヶ月のリテスト日付だったにもかかわらず、18ヶ月のロットが含まれていた。
我々は、”ICH Q7と現在のUSPの両方に従った”方法を実施するという貴社の決定を認めるが、貴社の回答は、原薬の試験中に使用された後続の全てのロットの培地について成長促進試験を実施し文書化するという約束を含んでいなかった。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社が回答した約束のタイムラインと、CAPAが完了するまでにとられる暫定措置
・貴社の各原薬の製品に関し、ロットの適切な微生物のリリース規格(即ち、総菌数、好ましくない微生物を検出するためのバイオバーデンの確認)
・貴社の各製品を分析するために使用されている全ての微生物試験の方法
・使用期限内にある全ての製品のロットの保管サンプルの試験から得られた結果のサマリ
 貴社は、各ロットの微生物学的品質(総菌数と好ましくない微生物を検出するためのバイオバーデンの確認)を試験すべきである。もし試験でOOSの結果を得たら、顧客への通知や回収の開始を含む、貴社がとろうとしている是正処置を示せ。

●指摘5

貴社の製造所で製造された原薬や中間体がCGMPに準拠していることを保証するために、貴社の品質部門がその責任を果たすことの不履行

<指摘5詳細>

貴社の品質部門(QU)は、医薬品の製造作業が適切であることを保証するためのQUの所定の機能を果たすことを怠った。例えば、貴社のQUは以下のことを怠った:
・脂肪分析、無機ヨウ化物、残留溶媒のような最終製品の試験に使用されているサードパーティの試験機関の適切な評価手順を定め維持すること
 貴社の品質部門は、これらの試験に使用された契約試験機関の適格性評価も評価も実施していなかった。
・貴社の製造所の職員に対してCGMP教育が提供されていることの保証
・2017年から2020年に製造された原薬の年次製品照査の実施
貴社は回答の中で、過去24ヶ月の回顧的なリスクアセスメントの実施や、ベンダを評価し承認するためのシステムの開発といった、サードパーティのベンダの包括的な計画の策定を約束した。
貴社の約束のタイムラインを提出しなかったので、貴社の回答は不十分である。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社のCAPA完了のタイムライン
・貴社のQUが効果的に機能するために権限とリソースが与えられていることを保証するための包括的なアセスメントと改善計画
 アセスメントには、これに限定されないが以下のことを含むべきである:
 〇貴社で使用されている手順が安定していて適切であるかどうかの判断
 〇適切な手順の遵守を評価するための貴社の作業全体のQUによる監督に関する規定
 〇QUによるロットの処遇の判定前に、各ロット及びそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
 〇全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、調査の監督と承認及び他の全てのQU
職務の遂行

  経営陣がこれに限定されないが、新たに発生した製造/品質の問題に積極的に対処し、継続的な管理状態を維持するためのタイムリーなリソースの提供をいかにサポートするかについても述べよ。

●CGMPコンサルタントの推奨

我々が貴社で確認した逸脱の性質に基づき、我々は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために貴社の業務を評価する適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。

●追加の原薬CGMPガイダンス

FDAは、原薬がCGMPに従って製造されているかを判断する際に、ICH Q7で概説されている期待を考慮する。原薬の製造に関するCGMPのガイダンスとして、FDAのガイダンス文書
Q7 Good Manufacturing Practice Guidance for Active Pharmaceutical Ingredientsを見よ。

●複数製造所での繰り返しの不備

FDAは、貴社のネットワーク内の複数の施設で同様のCGMPの不備を挙げた。複数の製造所でのこれらの繰り返される不具合は、医薬品の製造に関する経営陣の監督と管理が不十分であることを示している。貴社の経営陣には全ての不備を完全に解決し、継続的なCGMP遵守を保証する責任がある。貴社は、システム、工程、製造する医薬品がFDAの要件に従うことを保証するために貴社全体の製造作業を迅速かつ包括的に評価するべきである。

●結論

この文書で挙げた逸脱は、貴社の施設に存在する逸脱の包括的なリストではない。貴社には、逸脱を調査し、原因を判断し、再発やその他の逸脱の発生を防止する責任がある。

全ての逸脱を速やかに是正せよ。この問題への即座の適切な対処の不履行は、制限のない差し押さえ、強制命令を含む、さらなる通知のない制限または法的なアクションにつながるかもしれない。未解決の逸脱は、他の連邦機関の契約授与も妨げるかもしれない。

逸脱への対処の不履行は、FDAの輸出証明の発行の差し控えにもつながるかもしれない。全ての逸脱に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての逸脱に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/specialty-process-labs-llc-624281-05032022

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■CMS#624415■

2021年11月8日~11月17日のカリフォルニア州の製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反について発した2022年5月10日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

貴社の品質管理部門は、製造された医薬品がCGMPに準拠し、同一性、濃度、品質、純度に関して制定された規格を満たすことを保証するためにその責任を果たすことを怠った。(21 CFR 211.22)

<指摘1詳細>

貴社は、XXや手指の消毒剤のようなOTCの局所医薬品を製造している。貴社の品質部門(QU)は、貴社のOTC医薬品製造に関し適切な監督を行わなかった。例えば、貴社のQUは以下のことを保証するのを怠った:
・医薬品の各ロットのリリース前に、有効成分の同一性と濃度に関する試験が行われ、レビュされたこと(21 CFR 211.165(a))
・OOSの結果、苦情、逸脱、その他の不一致の結果について、適切な文書化され承認された手順
 による徹底的な調査(21 CFR 211.192)
・生産と工程管理の変更の適切な文書化とアセスメント(21 CFR 211.100(a))
・適切で継続的な安定性プログラムの確立(21 CFR 211.166(a))
・適切な年次製品照査の実行(21 CFR 211.180(e))
・安定した医薬品品質を保証するために必要な全ての製造作業の適切なQUの監督

■品質システム

貴社の品質システムは不十分である。CGMPの規制要件を満たすための品質システムとリスクマネジメントアプローチを実装する助けとして、FDAのガイダンス文書
Quality System Approach to Pharmaceutical CGMP Regulationsを見よ。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・QUが効果的に機能するために権限とリソースが与えられていることを保証するための包括的なアセスメントと改善計画
 アセスメントにはこれに限定されないが以下のことも含むべきである:
 〇貴社により使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
 〇適切な手順の遵守を評価するための貴社作業全体のQUの監督の規定
 〇ロットの処遇を判断する前に貴社製品の各ロットを分析するために使用されている化学試験及び微生物試験の方法と規格のリストと、関連する文書化された手順
・この文書の日付時点で使用期限内にありアメリカに出荷された医薬品の全てのロットの品質を判断するために、保管サンプルの全ての化学試験及び微生物試験を実施するための
 アクションプランとタイムライン
・各ロットの保管サンプルの試験から得られた全ての結果のサマリ
 それらの試験で医薬品が基準以下の品質であることが明らかになった場合、顧客への通知や製品の回収といった迅速な是正処置をとれ。
・QUのロットの処遇の判断の前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
・全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための調査の監督と承認及びその他のQUの職務の遂行
・逸脱、不一致、苦情、OOSの結果、不具合を調査するための貴社の全体的なシステムの包括的で独立したアセスメント
 このシステムを改善するための詳細なアクションプランを提出せよ。貴社のアクションプランには、これに限定されないが、調査の能力、調査範囲の決定、根本原因の評価、是正処置と予防処置(CAPA)の効果、QUの監督、文書化された手順を含むべきである。調査の全てのフェーズが適切に実施されていることを貴社がいかに保証するつもりか説明せよ。
・貴社の変更管理システムの包括的で独立したアセスメント
 このアセスメントには、これに限定されないが、変更が貴社のQUによって正当であるという根拠が示され、レビュされ、承認されていることを保証するための手順を含めるべきである。
 貴社の変更管理プログラムは、変更の効果の判断に関する規定も含むべきである。
・貴社の安定性プログラムの妥当性を保証するための包括的独立したアセスメントとCAPAの計画貴社の改善されたプログラムには、これに限定されないが、以下のことを含むべきである:
 〇安定性を示す方法
 〇出荷許可前の、市販の容器施栓システムの中の貴社の各製品の安定性の検証
 〇うたわれている品質保証期限が妥当かどうかを判断するために、各製品の代表的なロットが毎年プログラムに追加されていくような継続的なプログラム
 〇各ステーション(タイムポイント)で試験される特定の属性の詳細な定義
 〇貴社の改善された安定性プログラムのこれら及びのその他の要素を述べた全ての手順

●指摘2

貴社は、貴社が製造した製品が、それが持つとされている同一性、濃度、品質、純度を持っていることを保証するために設計された製造及び工程管理の文書化された手順を制定することを怠った。 (21 CFR 211.100(a))

<指摘2詳細>

貴社は、貴社の医薬品のための適切なプロセスバリデーションが不足していた。例えば、貴社は、我々査察官に対し、貴社のXXまたは手指の消毒剤の製品に関するプロセスバリデーションが実施されていないと認めた。さらに貴社は、プロセスバリデーション実施のための文書や文書化された手順も提出しなかった。貴社は、貴社の医薬品を製造するために使用されているXX水XXや、装置(例:混合タンク、充填ライン、包装ライン)について、装置の適格性評価が実施されていないことも認めた。

プロセスバリデーションは、そのライフサイクルを通じて、設計と管理状態の正常性を評価するものである。製造工程の各重要な段階は適切に設計され、投入される原材料、工程内原料、最終の原薬の品質を保証しなければならない。工程の適格性評価の検証は、初期の管理状態が確立しているかどうかを判断する。

工程の適格性評価の成功は商業流通の前に必要である。その後、製品のライクルを通じて、貴社が安定した製造作業を維持していることを保証するために、工程性能と製品品質の継続的で慎重な監視が必要である。

■プロセスバリデーション

FDAがプロセスバリデーションの適切な要素と考える一般的な原則とアプローチについて、FDAのガイダンス文書Process Validation: General Principles and practicesを見よ。

この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・貴社の製造工程が、一貫して適切な規格と製造の基準を満たすよう、ばらつきの全ての原因を特定し管理するデータ駆動型の科学的に理にかなったプログラムが存在することを保証するための各製品プロセスのアセスメント
 アセスメントには、これに限定されないが、機器の使用目的への適合性の評価、貴社のモニタリング及び試験のシステム(貴社及び契約試験機関で使用されている分析方法を含む)の検出能力の十分性、投入原材料の品質、各製造工程のステップと管理の信頼性を含むべきである。
・製品のライフサイクルを通じた管理状態を保証するための、関連する手順も添えた、貴社のバリデーションプログラムの詳細なサマリ
 貴社の工程の性能適格性評価、継続的な管理状態を保証するためのロット内及びロット間のばらつきの継続的なモニタリングに関する貴社のプログラムについて述べよ。
・販売されている貴社の各製品の工程の性能適格性評価を実施するためのタイムライン
・貴社の工程性能のプロトコルと、装置及び施設の適格性評価に関する文書化された手順
・継続的な管理状態を保証するためのロット内及びロット間のばらつきの慎重なモニタリングを含む貴社の各製造工程の設計、バリデーション、維持、管理、モニタリングに関する詳細なプログラム
 貴社の装置及び設備の適格性評価のプログラムも含めよ。
・設備と装置の定期的で慎重な作業管理の監督を実施するためのCAPAの計画
 この計画は、とりわけ、装置/施設の性能問題の迅速な検知、修理の効果的な実施、適切な予防保全スケジュールの遵守、装置/施設のインフラストラクチャのタイムリーな技術的アップグレード、継続的なマネジメントレビュのためのシステムの改善を保証すべきである。

●指摘3

貴社は、公的またはその他の制定された要件を超えて、製品の安全性、同一性、濃度、品質、純度を変える誤動作や汚染を防ぐために適切な間隔で装置や器具を洗浄、維持、また医薬品の性質により必要に応じて、消毒・滅菌することを怠った。また、装置の洗浄及び維持に関する文書化された手順の制定を怠った。(21 CFR 211.67(a)&(b))

<指摘3詳細>

貴社は、貴社のOTC医薬品と医薬品以外の製品を製造するのに使用される共用装置から汚染を除去するために貴社の洗浄手順が適切であるということを示していなかった。例えば、我々査察官は、貴社の医薬品製造装置の不十分な洗浄と維持を見た。具体的には:

■洗浄バリデーションの不足

貴社は我々査察官に対して、貴社のOTC医薬品を製造するために使用される装置(例:混合タンク、ホース、充填ライン、包装ライン)について、洗浄バリデーションは実施していなかったと認めた。

■装置の洗浄の不足

貴社は、貴社の医薬品を製造するために使用されている装置の洗浄及び維持の手順が不足している。貴社は貴社の充填ラインの洗浄を文書化しているが、貴社の医薬品製造に使用されるその他の装置の洗浄は文書化していないと我々査察官に認めた。そのうえ貴社は我々査察官に、充填ラインの洗浄の文書化は、2021年8月になってようやく始めたと述べた。さらに、我々査察官は、製品の記述、ロット番号、洗浄・消毒の開始時刻と終了時刻を含む、充填ラインの洗浄ログに欠落している情報があることに気付いた。

■XXの消毒の不足

貴社には、貴社のXXを消毒して維持する方法の手順が不足している。貴社は、2021年9月に貴社の水システムのサンプリングを始めたと述べた。我々査察官により収集された貴社の水システム試験結果のレビュで、総プレートカウント(TPC)はXX cfu/mLだった。貴社は我々査察官に、水システムを再度消毒し、再度サンプリングしたと述べた。我々は、リテスト結果のレビュで、全有機体炭素計(TOC)の試験のみを見た。貴社は、貴社のXXが管理状態で作業していることを示すエビデンスを提供していなかった。さらに、貴社は、文書化された調査、再消毒作業、高い微生物試験結果の根本原因、適切なCAPAを提供しなかった。

洗浄中の製造装置からの有効成分や残留物の不十分な除去は、貴社の医薬品の交叉汚染につながる可能性がある。さらに貴社の水システムXXの不十分な洗浄や消毒は、貴社の医薬品の微生物汚染につながる可能性がある。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・交叉汚染の危険の範囲を評価するための、洗浄の効果の包括的で独立した回顧的アセスメント残留物の特定、不十分に洗浄されていた可能性のあるその他の製造装置、交叉汚染された製品が販売のためにリリースされたかどうかのアセスメントを含めよ。アセスメントは、洗浄手順や実務の不備を特定し、複数製品を製造するのに使用されている製造装置を網羅すべきである。
・工業製品と共有された装置で貴社が以前に製造した全ての医薬品のリスクアセスメント各製品に関し、共有された装置による潜在的な汚染のリスクを評価し、まだ販売中の製品について、回収や市場からの撤退も含めた、製品の品質と患者のリスクに対処するための貴社の計画を提出せよ。
・貴社の設備での医薬品及び医薬品以外の製品の両方の製造に関する貴社の計画
 もし貴社の設備で医薬品及び医薬品以外の製品の両方の製造を継続するつもりなら、医薬品の製造と工業製品の製造作業のための専用製造装置を維持するエリア分割の計画を提出せよ。
・洗浄手順と実務の適切な改善、完了までのタイムラインを含む、貴社の洗浄プログラムの回顧的なアセスメントに基づくCAPAの計画
 装置洗浄のライフサイクル管理に関する貴社の手順の脆弱性の詳細を提出せよ。洗浄効果の増大、全ての製品と装置に関する適切な洗浄の実施の継続的な検証の改善、その他全ての必要とされる改善を含む、貴社の洗浄プログラムの改善について述べよ。
・貴社の医薬品製造作業におけるワーストケースとして特定された条件を取り入れることに特に重点を置いた洗浄バリデーションプログラムへの適切な改善
 改善には、これに限定されないが、以下の全てのワーストケースの特定と評価を含むべきである:
 〇より高い毒性を持つ医薬品
 〇より高い有効性を持つ医薬品
 〇洗浄溶液の中でより低い溶解度の医薬品
 〇洗浄を難しくする特性を持った医薬品
 〇洗浄を最も難しくする拭き取り場所
 〇洗浄前の最大保持時間
 さらに、新しい製造装置や新しい製品を導入する前に、貴社の変更管理システムでとられるべき手順を述べよ。
・製品、工程、装置の洗浄手順の検証とバリデーションのための適切なプログラムが実施されていることを保証する最新の標準操作手順(SOP)のサマリ
・貴社の水システムの設計、管理、維持、該当するCAPAの包括的で独立したアセスメント
・適切な水システムの設置と運用のための徹底的な改善計画
 改善されたシステムの設計または新しいシステムが一貫して、USPモノグラフの規格や適切な微生物の限界値(微生物総数、好ましくない微生物)を遵守したXX水を製造できることを保証するための安定した継続的な管理、維持、モニタリングのプログラムを含めよ。
・後者に関しては、水に関する微生物の総数の限界値が、貴社が製造する製品の意図された用途を考慮して適切であることを保証せよ。

●指摘4

貴社は、許可された職員のみが製造指図書原本またはその他の記録の変更を始められるということを保証するために、コンピュータまたは関連システムに適切な管理を行うことを怠った。(21 CFR 211.68(b))

<指摘4詳細>

貴社は、貴社の医薬品の製造に使用されているXXの完全性を保証するための管理が不足していた。例えば、貴社は、医薬品の処方や、医薬品の隔離・リリースのステイタスを含むデータの保持のためにソフトウエア(すなわちXX)を使用していた。このソフトウエアは、XXの量、製造作業、計算を含むバッチ記録における製造ステップの完了を文書化するのにも使用されている。貴社は、このソフトウエアXXは、バリデートされておらず、監査証跡がないと我々査察官に述べた。

さらに貴社には、操作が、ユニークで共用されていないログイン資格を持つ許可された個人に帰属することを保証するための適切な管理が欠けていた。例えば、我々査察官は、従業員XXのログイン資格が2021年3月17日と2021日7月19日の2つの医薬品のバッチレコードのいくつかの製造記録の完了の文書化に使用されているのを見つけた。しかし、貴社は我々査察官に、XXは、2019年9月以降会社に雇用されていないと述べた。さらに、XXとXXを含むログイン資格がいくつかの製造活動の完了を文書化するのに使用されているが見つかった。貴社は我々査察官に、これらのログイン資格は、複数の職員によって共有されていると述べた。この行為は管理されたシステムにアクセスする特定の個人の識別を妨げるので、共有されたログイン資格は受け入れられない。

貴社の品質システムは貴社が製造する医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるためのデータの正確性と完全性を適切に保証していない。CGMPに則ったデータ・インテグリティの手順を制定し遵守するためのガイダンスとして、FDAのガイダンス文書Data Integrity and Compliance With Drug CGMPを参照せよ。我々は、貴社が貴社の改善を支援するための適格なコンサルタントを雇うことを強く勧める。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

・アメリカに販売された医薬品のデータレビュの結果を含む、記録及び報告データの不正確さの
 範囲の包括的な調査
 貴社のデータ・インテグリティの欠如の範囲と根本原因の詳細な記述を含めよ。
・発見された不具合が貴社の医薬品の品質に与える潜在的な影響の現在のリスクアセスメント貴社のアセスメントは、データ・インテグリティの欠如の影響を受けた医薬品のリリースによる患者へのリスクの分析と、継続的なオペレーションによってもたらされるリスクの分析を含めるべきである。
・全体的な是正処置・予防処置の計画の詳細を含む貴社の経営戦略
 詳細な是正処置計画は、微生物データ、分析データ、製造記録、FDAに提出される全てのデータを含む貴社で生成された全てのデータの信頼性と完全性をいかに保証するつもりかを記述すべきである。

●CGMPコンサルタントの推奨

貴社で確認した違反の性質に基づき、我々は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。全ての違反を速やかに是正せよ。この問題への即座の適切な対処の不履行は、制限のない差し押さえ、強制命令を含む、さらなる通知のない制限または法的なアクションにつながるかもしれない。未解決の違反は、他の連邦機関の契約授与も妨げるかもしれない。

違反への対処の不履行は、FDAの輸出証明の発行の差し控えにもつながるかもしれない。全ての違反に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
出典:
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/colorful-products-corporation-624415-05102022

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は、2件のウォーニングレターでデータ・インテグリティに関する指摘がありました。退職者のユーザ資格で製造記録の完了が登録されているというのは、なかなかすごい内容でしたが、
・システムのバリデーションの不備
・ユーザ資格の管理の不備
・監査証跡の不備
・製造記録のバージョン管理の不備
・EXCELの管理の不備といったことは、身近で起こりうる内容かと思います。

是非、参考にしてみていただければと思います。

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株式会社プロス 『ASTROM通信』担当 橋本奈央子 hashimoto@e-pros.co.jp

※本記事は株式会社プロスの許可を得て転載しております。

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