【最近のウォーニングレター】ASTROM通信 268号

ジメジメとした天気が続いていますが、いかがお過ごしですか。

今回も、アメリカ食品医薬品局(FDA)がアメリカ国内外の製薬会社に出したウォーニングレター
3件を取り上げ、FDAがどのような点を問題視し指摘したかを確認していきたいと思います。
最後までお読みいただければ幸いです。

最近のウォーニングレターの概要  

注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。

■Warning Letter 320-23-12■

2022年10月10日~10月14日のメキシコの製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反に
ついて発した2023年4月6日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

貴社は、ロットが出荷されたかどうかに関わらず、ロットやその成分の規格との説明のつかない不一致や不具合を徹底的に調査することを怠った。 (21 CFR 211.192)
<指摘1詳細>
貴社は、規格外(OOS)の結果を適切に調査しなかった。具体的には、貴社は、粘度についてOOSの結果となったOTC医薬品XXのロット#XXとXXを、調査をせずにリリースし出荷した。我々のレビュでも、ロット#XXは特定の比重に関してOOSであったが更なる調査が行われていなかったことに気付いた。貴社は回答の中で、OOSの結果を取り扱うための手順がないことを認めている。
貴社は、医薬品の規格が正しくないので、試験結果が誤った合格基準と比較されたと述べている。
しかし、これらのロットの分析証明書には、高い粘度で承認されたと述べたメモが含まれていた。
貴社もロット#XXについて、特定の比重が低い結果であると認めている。
貴社の回答は不十分である。貴社は、貴社が全てのOOSの結果や不一致を確認し徹底的に調査したことを保証する回顧的レビュの結果を提出していない。さらに、貴社は、貴社のOOSの手順や実装の日付を提出していない。また貴社は、貴社の回答に含まれる改訂された規格の裏付けとなるエビデンスや科学的根拠も提出していない。
不具合、規格外、傾向外、または、その他の予期しない結果の取り扱いや、調査の文書化についての更なる情報について、
FDAのガイダンス文書Investigation Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production
を見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 貴社の試験の手順、実務、方法、装置、文書、分析者の能力に関する包括的で独立したアセスメント
    このレビュに基づき、貴社の試験システムを改善し、その効果を評価するための詳細な計画を提出せよ。
  • 査察開始日時点から過去3年間のアメリカ向け製品の全ての無効化されたOOS(工程内試験、リリース試験、安定性試験を含む)の回顧的で独立したレビュと、各OOSに関する以下のことを含む分析結果を要約したレポート
    • 無効化されたOOSの結果に関する科学的な正当化の理由とエビデンスが、断定的もしくは非断定的でも、原因となる試験のエラーを示しているかどうかの判断
    • 試験の根本原因が最終的に確認された調査について、論理的根拠を提出し、同じまたは類似の根本原因に対して脆弱な他の全ての試験方法が改善のために特定されていることを保証せよ。
    • 回顧的レビュで、試験における決定的な根本原因がみつかっていない、または、根本原因が特定されていない全てのOOSについて、製造の徹底的なレビュ(例:バッチ製造記録、製造ステップの適格性、装置/設備の適合性、原材料のばらつき、工程の能力、逸脱の履歴、苦情の履歴、ロットの不具合の履歴)を含めよ。各調査について、潜在的な製造の根本的原因と、製造作業の改善のサマリを提出せよ。
  • 貴社のOOSの結果の調査システムに関する包括的なレビュと改善の計画
    CAPAには、これに限定されないが、以下のことへの対応を含めるべきである:
    • 試験の調査の品質部門の監督
    • 有害な試験管理の傾向の特定
    • 試験のばらつきの原因の解決
    • 試験の原因が決定的に特定できない場合は、製造の潜在的な原因の徹底的な調査の開始
    • 各調査の適切な範囲の決定とそのCAPA
    • これら及びその他の改善を伴うOOSの調査手順の改訂

●指摘2

貴社は、医薬品の安定性を評価し、適切な保管条件や使用有効期限を決定するために安定性試験結果を使用するために設計され文書化された試験プログラムを制定しそれに従うことを怠った。(21 CFR 211.166(a))
<指摘2詳細>
貴社は、設定された有効期間を通じて貴社の医薬品が制定された化学及び微生物学的規格を満たすことを適切に示す安定性データを持っていなかった。
例えば、貴社の安定性の手順は、4週間目でのみOTC医薬品の官能評価(臭い、色、外観)を必要としている。貴社の手順は使用時温度での長期安定性に言及しているが、貴社は長期安定性のエビデンスを提出しなかった。さらに、温度の保管条件は検証を通してモニタされておらず、湿度に関するプロトコルはない。
貴社は回答の中で、使用期限を確認するために、医薬品の現存するロットを試験するつもりであると述べている。貴社は、安定性サンプルの保管について、サードパーティに確認すると約束している。さらに、貴社は医薬品の安定性を評価するための試験プログラムを作成したと主張している。
貴社の回答は不十分である。貴社は、貴社の安定性のプロトコル、新しい試験結果に関する最新の情報、指定された実装の日と暫定的なアクションに関する情報を提供していない。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 貴社の安定性プログラムの妥当性を保証するための、安定性プログラムの包括的で独立したアセスメントとCAPAの計画
    改善されたプログラムには、これに限定されないが以下のことを含むべきである:
    • 安定性を示す方法
    • 出荷許可前に、販売される容器施栓システムの中の各医薬品の安定性の確認
    • うたわれている使用期限が妥当かどうかを判断するための、各医薬品の代表的なロットが毎年プログラムに追加されるような継続的プログラム 
    • 各工程(タイムポイント)で試験される特定の属性の詳細な定義
    • 貴社の改善された安定性プログラムのこれら及びその他の要素を述べた全ての手順
  • 試験方法と合格基準と共に、最新の安定性試験結果を提出せよ。

●指摘3

貴社は、貴社が製造する医薬品が、それが持つとうたわれている、または、表示されている、同一性、濃度、品質、純度を持っていることを保証するために設計された製造と工程管理に関する手順を文書化して制定することを怠った。(21 CFR 211.100(a))
<指摘3詳細>
貴社は、充填ラインXXで製造されたXXの製造プロセスを適切にバリデートすることを怠った。貴社には、貴社の製造プロセスが、予め定義された品質特性を満たす医薬品を一貫して製造できることを保証する責任がある。
貴社は回答の中に貴社のOTC医薬品の工程の適格性評価のプロトコルを含めている。
貴社の回答は不十分である。貴社は貴社の製造プロセスが均一な特性と品質を生み出すために設計され、制御され、再現可能であることを証明していない。適切なプロセスバリデーションの不実施は、医薬品の品質特性の不具合につながる可能性がある。さらに貴社の回答は、タイムフレームと暫定的なアクションを含んでいない。
貴社には、安定した製造作業と一貫した製品品質を保証するための工程管理をモニタリングする継続的なプログラムが不足している。プロセスバリデーションは、ライフサイクルを通じて、工程の設計と管理状態の安定性を評価する。製造工程の各重要な段階は適切に設計され、投入される原材料、中間材料、最終医薬品の品質を保証しなければならない。工程の適格性評価の検証は、初期の管理状態が確立されているかどうかを判断する。商用生産の前に工程の適格性評価の達成は不可欠である。その後、貴社が製品のライフサイクルを通じて、安定した製造作業を維持していることを保証するために、工程性能と製品品質の継続的で慎重な監視が必要である。
FDAがプロセスバリデーションの適切な用途と考える一般原則とアプローチに関し、
FDAのガイダンス文書Process Validation : General Principles and Practices
を見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 製品のライフサイクルを通じて管理状態を保証するためのバリデーションプログラムの詳細な概要と関連する手順継続的な管理状態を保証するために、工程の適格性評価とロット内及びロット間のばらつきを継続的にモニタするプログラムについて述べよ。
  • 貴社の販売されている医薬品に関する適切な工程性能適格性評価(PPQ)を実施するためのタイムライン
  • 装置及び設備の適格性評価に関する最新の工程性能適格性評価のプロトコルと文書化された手順を含めよ。
  • 継続的な管理状態を保証するために、ロット内及びロット間のばらつきの慎重なモニタリングを含む、貴社の各製造工程の設計、バリデーション、保守、管理、監視に関する詳細なプログラムを提出せよ。

●指摘4

貴社の品質管理部門は、製造された医薬品がCGMPに従い、同一性、濃度、品質、純度に関して制定された規格を満たすことを保証するための責任を果たすことを怠った。(21 CFR 211.22)
<指摘4詳細>
貴社の品質部門(QU)は貴社のOTC医薬品の製造に関し適切に監督していなかった。例えば、貴社のQUは、年次製品レビュの文書化された手順や、苦情の取り扱いに関する文書化された手順を保証していなかった。さらに、OOSの値に関する食い違いが査察中に見つかったが、リリース時点では、貴社の品質部門によって確認されていなかった。
貴社は回答の中で、年次製品レビュについて文書化された手順は制定されていると述べている。
また貴社は、QUの関与、根本原因の分析、是正処置・予防処置を含んだ苦情の手順を最新化すると約束している。
貴社の回答は不十分である。貴社は、手順のエビセンスと実装のタイムフレームを提出していない。また貴社は、ロットのリリース前に不具合を特定することを保証するためにQUが作業をどのように監視するかを示していない。
この文書内の調査結果は、貴社がCGMPに従って効果的な品質システムを運用していないことを示している。信頼性の高い施設や装置を保証するための効果的な製造作業の監督不足に加え、我々は、貴社の品質部門が適切な権限を行使できないか、その責任を十分に果たしていないことに気付いた。貴社は、システム、工程、製造された製品がFDAの要件に従っていることを保証するために、迅速かつ包括的に貴社全体の製造作業を評価する必要がある。

●品質システム

貴社の品質システムは不十分である。CGMPの規制要件21 CFR Parts 210, 211を満たすよう品質システムとリスクマネジメントアプローチを実装する助けとして
FDAのガイダンス文書Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulations
を見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 貴社のQUが効果的に機能するために権限とリソースが与えられていることを保証するための包括的で独立したアセスメントと改善計画を提出せよ。アセスメントにはこれに限定されないが、以下のことを含むべきである:
    • 貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
    • 適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体のQUの監督に関する規定
    • QUのロットの処遇の決定前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュの実施
    • 調査の監督と承認と、全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するためのQUのその他全ての職務の遂行

我々のレビュで、貴社が、アメリカ薬局方(USP)が要求する“ヒ素”のレベと、“XXの限度”の判断をせずに、有効成分XXを使ってOTC医薬品を製造していることがわかった。
この文書への回答の中で、過去3年の間に貴社により受け取ったXXロット全ての分析証明書のコピーと、入荷した原材料をテストするための貴社の手順を提出せよ。
FDAは、別のタイプのOTC医薬品を対象とした貴社の製造所の前の査察で同様のCGMP違反を指摘した。その時、貴社はその医薬品の販売と製造を中止した。しかし、今回の査察で、プロセスバリデーションと安定性に関し、違反が繰り返されているのが見つかった。これらの繰り返しの不具合は、医薬品製造に対する経営陣の監督と管理が不十分であることを示している。

●CGMPコンサルタントの推奨

貴社が繰り返し違反を是正することを怠っているので、我々は、貴社がCGMPの要件を満たすための助けをする21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。貴社の品質システムは、貴社が製造した医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるデータの正確性とインテグリティを適切に保証していない。CGMPに従ったデータ・インテグリティ手順を制定し従うためのガイダンスとして、
FDAのガイダンス文書Data Integrity and Compliance With Drug CGMP
を見よ。
我々は、貴社の改善の助けをする適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
A.アメリカに販売された医薬品のデータレビュの結果を含む、記録及び報告データの不正確さの範囲の包括的な調査
貴社のデータ・インテグリティの欠如の範囲と根本原因の詳細な記述を含めよ。
B.発見された不具合が貴社の医薬品の品質に与える潜在的な影響の現在のリスクアセスメント
貴社のアセスメントは、データ・インテグリティの欠如の影響を受けた医薬品のリリースによる患者へのリスクの分析と、継続的なオペレーションによってもたらされるリスクの分析を含めるべきである。
C.全体的な是正処置・予防処置(CAPA)の計画の詳細を含む貴社の経営戦略
詳細な是正処置計画は、微生物データ、分析データ、製造記録、FDAに提出される全てのデータを含む貴社で生成される全てのデータの信頼性と完全性をいかに保証するつもりかを記述すべきである。

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の製造所に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、全ての違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。全ての違反が完全に対応され、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の製造業者としての新薬の申請やリストの補完の承認を保留するだろう。
また、我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/zermat-international-sa-de-cv-647232-04062023

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■Warning Letter 320-23-14■

2022年11月6日~11月10日のエジプトの製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反について発した2023年4月13日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

貴社は、同一性と、純度・濃度・品質に関する文書化された規格への一致について、各成分のサンプルをテストすることを怠った。また貴社は適切な間隔で成分の供給者の分析試験の信頼性をバリデートし確証することも怠った。(21 CFR 211.84(d)(1), 211.84(d)(2))
<指摘1詳細>
貴社は、貴社の医薬品XXに使用される、有効成分(API)であるエタノールを含む各成分の適切な同一性試験を行うことを怠った。さらに貴社のAPIであるエタノールは、メタノールの含有量について試験されていなかった。また貴社の手順は、ジエチレングリコール(DEG)またはエチレングリコール(EG)の存在に関してグリセリンを試験することを保証していなかった。例えば、貴社は、ジェルXXロットXXを製造する前に同一性に関して入荷した成分を試験することを怠った。
成分の試験は品質の基本である。適切な試験を実施しなければ、貴社は入荷した成分が医薬品の製造の使用前に適切な規格に従うという科学的なエビデンスを持っていない。
貴社は回答の中で、貴社の倉庫内の原材料のサンプルが供給者の分析証明書(COA)に準拠しているかどうかを試験すると述べた是正処置・予防処置(CAPA)を提出している。貴社はまたグリセリンもDEGとEGに関して試験すると述べている。
貴社は、試験方法等、原材料をどのように試験し、公定書の要件をいかにレビュするかに関する詳細の計画を含めていないので、貴社の回答は不十分である。貴社が提案したアクションプランは、是正処置を実施する戦略を含んでいない。また、以前に出荷した医薬品が同一性と不純物試験の試験に合格した入荷成分を使って製造されたと保証するための詳細な計画を提出していない。

●グリセリンを含む製品

貴社は、グリセリンを含む医薬品を製造している。ジエチレングリコール(DEG)で汚染されたグリセリンの使用は世界中の人々に様々な致命的な中毒事件を引き起こしてきた。
グリセリンを含む医薬品を製造する際のCGMPの要件を満たす助けに、
FDAのガイダンス文書Testing of Glycerin for Diethylene Glycol
を見よ。

●エタノールを含む製品

貴社は、エタノールを含む医薬品を製造している。メタノールで汚染されたエタノールの使用は世界中の人々に様々な致命的な中毒事件を引き起こしてきた。
FDAのガイダンス文書Policy for Testing of Alcohol(Ethanol) and Isopropyl Alcohol for Methanol, Including During the Public Health Emergency(COVID-19)
を見よ。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 成分、容器、蓋の全ての供給者が適格と評価され、原材料には適切な使用期限またはリテスト日 が付与されているかどうかを判断するための、貴社の原材料システムの包括的なレビュ
    レビュは、入荷した原材料の管理が、不適切な成分、容器、蓋の使用を防ぐために適切かどうかも判断すべきである。
  • 同一性、濃度、品質、純度に関する全ての適切な規格への一致について、成分の各ロットをいかに試験するつもりかの記述
    濃度、品質、純度に関する成分の各ロットの試験をする代わりに供給者の分析証明書(COA)の結果を受け入れるつもりなら、初期のバリデーションと定期的な再バリデーションを通じて供給者の結果の信頼性をいかに確実に確認するかを明記せよ。さらに、入荷した成分の各ロットについて、少なくとも1つの特定の同一性試験を常に実施するという約束を含めよ。
  • 貴社の医薬品を製造するために使用された全てのグリセリンの保管サンプルのDFGとEGの試験結果
  • グリセリンを含み、アメリカ市場内にある使用期限内の医薬品に関する完全なリスクアセスメント
    迅速は是正処置・予防処置を取り、貴社の供給者の適切な選択、サプライチェインの継続的な監視、入荷ロットの適切な管理を保証するための貴社の今後のアクションを詳細に述べよ。
  • リリースされ、出荷されたXXの全てのロットに関するメタノールの限界試験と試験結果

●指摘2

貴社は装置の洗浄とメンテナンスに関する文書化された手順を制定してそれに従うことを怠った。(21 CFR 211.67(b))
<指摘2詳細>
貴社は、医薬品及びデバイス製品の製造に使用される全ての製品接触装置を、洗浄バリデーションのプロトコルと手順に含めることを怠った。貴社の洗浄バリデーションのプロトコルと手順に、製造中に医薬品や化学デバイスの成分を移動するために使用される移送用台車の容器が含まれていなかったため、交叉汚染のリスクが生じていた。
貴社は回答の中で、CAPAと移送用台車の容器の洗浄バリデーションを提出した。貴社のCAPAには、移送用台車の容器の使用に関して評価された製品のリストが含まれいていた。
CAPA内で提出された製品のリストには、「指図」のない製品が含まれていて、移送用台車の容器の使用の全ての可能性の完全な評価が不足しているため、貴社の回答は不十分である。貴社は、XXとXXの最終製品は、洗浄に関するワーストケースになると述べた。しかし、貴社の回答は、「指図」なしで、CAPAに記載されている製品の情報、それらの製品が移送用台車の容器を使用したかどうか、それらの製品がワーストケースの製品の選択にどんな影響があるかについての情報を提出していない。この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:

  • 装置の洗浄のライフサイクルの管理に関する貴社の手順の脆弱性の詳細なサマリ
    洗浄効果の向上、全ての製品及び装置に関する適切な洗浄実施の継続的な検証の改善、その他全ての必要とされる改善を含む、貴社の洗浄プログラムの改善点について説明せよ。
  • 貴社の医薬品製造作業におけるワーストケースとして特定された条件を取り入れることに特に重点を置いた洗浄バリデーションプログラムの適切な改善
    改善には、これに限定されないが、以下の全てのワーストケースの特定と評価を含むべきである:
    • より高い毒性を持つ医薬品
    • より高い有効性を持つ医薬品
    • 洗浄溶液の中でより低い溶解度の医薬品
    • 洗浄を難しくする特性を持つ医薬品
    • 洗浄を最も難しくする拭き取り場所
    • 洗浄前の最大ホールドタイム
      さらに、新しい製造装置や新しい製品を導入する前に貴社の変更管理システムでとられるべき手順を述べよ。
  • 製品、工程、装置の洗浄手順の検証とバリデーションのための適切なプログラムが実施されていることを保証する最新の標準操作手順(SOP)のサマリ

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の製造所に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、全ての違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
FDAは、貴社に対して、2023年4月4日に輸入警告措置66-40をとった。
全ての違反を速やかに修正せよ。全ての違反が完全に対応され、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の製造業者としての新薬の申請やリストの補完の承認を保留するだろう。
また、我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/pharmaplast-sae-648883-04132023

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■CMS 643600■

2022年8月23日~9月2日のインディアナ州の製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反について発した2023年4月20日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

貴社は、ロットが出荷されたかどうかに関わらず、ロットやその成分の規格との説明のつかない不一致や不具合を徹底的に調査することを怠った。 (21 CFR 211.192)
<指摘1詳細>
貴社は、共有装置を使って、OTCの局所エアゾール医薬品と、多数の顧客向けの化粧品を製造している。貴社は、医薬品の13.3ppmの高いベンゼン汚染について適切な調査の実施を怠った。
イソブタン高圧ガスを使って製造された最終医薬品がベンゼンで汚染されていることを示すデータを含む情報を貴社の顧客から取得後、貴社の高圧ガスの調査は、イソブタン高圧ガスに限定されていた。しかし、貴社は高圧ガスとしてジメチルエーテルを使った化粧品も許容できないレベルのベンゼンを含んでいるという情報を顧客から受領した時、ジメチルエーテル等の他の高圧ガスに調査を拡大することを怠った。我々は、貴社がジメチルエーテルの高圧ガスも医薬品に使用していることに注目している。ベンゼンの汚染のイソブタンの役割に焦点を当てた貴社の調査は、医薬品と共用される装置で使用されている異なる高圧ガスを使用して製造された化粧品内に
許容できないレベルのベンゼンが見つかった時、他の根本原因を説明することを怠っているので、欠陥がある。
ベンゼンの汚染の根本原因がよくわかっていないため、貴社の製品への影響調査の範囲も不十分だった。貴社と貴社の顧客により実施された共同調査の一貫として、貴社と貴社の顧客はより高い濃度の高圧ガスを使った最終医薬品の保管サンプルを選択的にテストしたが、全ての医薬品のロットが影響を受けたかを特定するために他の保管サンプルを適切にテストすることを怠った。
貴社の回答は不十分である。リスクアセスメントのための貴社のサンプリングとテストのアプローチは、最終製品のロットに使用された高圧ガスのロットトレースに基づいている。しかし貴社は炭化水素類高圧ガスのために非専用タンクを使用しているので、入荷した高圧ガスの各ロット内のベンゼンをテストしたり、高圧ガス貯蔵タンク内のベンゼンを定期的にテストしたりできないので、高圧ガスを正確にトレースする能力が損なわれる。従って、貴社のリスクアセスメントは影響を受けた医薬品のロット数を低く見積もる可能性がある。貴社は今は使用前に高圧ガスの各ロットをテストしていると認識している。しかし貴社の回答は、“(貯蔵)タンクに残った各高圧ガスのブレンドの終わりの部分は、1.0ppm以下の高圧ガスとブレンドし、その後再テストをして、最終結果が規格を満たしていることを保証している”と述べている。貴社の回答で、貴社の手順は、規格に適合していない高圧ガスと適合している高圧ガスをブレンドすることを許すか不明である。規格を満たす目的で、不適合のロットと他のロットをブレンドする手順は受け入れられない。この文書に答えて、科学的に妥当で適切な規格を満たすベンゼンを含む高圧ガスが、現場で使用するためにブレンドされることは許可されないことを確認せよ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 逸脱、不一致、苦情、OOSの結果、不具合を調査するためのシステム全体の包括的なアセスメント
    このシステムを改善するための詳細なアクションプランを提出せよ。貴社のアクションプランは、これに限定されないが、調査能力、調査の範囲の決定、根本原因の評価、是正処置及び予防処置(CAPA)の効果、品質部門の監督、文書化された手順の著しい改善を含むべきである。調査の全ての段階が適切に実施されていることを貴社がいかに保証するか述べよ。
  • 回収の対象ではなく、現在アメリカ市場にある使用期限内の最終製品の全ての保管サンプルの、最終製品内のベンゼンに適した試験方法を使用して行った試験結果
  • ベンゼンの汚染の根本原因を包括的に理解し貴社の医薬品への汚染を防ぐための適切な管理を実装するまで、リリース前に最終製品内のベンゼンを試験するために貴社が制定した方法の詳細な記述
  • CAPAの実施と有効性の定期的なアセスメントのレポート
  • 貯蔵タンクに移される前または後の入荷した高圧ガスの各ロットの現在のサンプリング及び試験の手順の詳細な記述

●指摘2

貴社は、好ましくない微生物がないことが求められる医薬品の各ロットについて、必要に応じて適切な試験を実施することを怠った。 (21 CFR 211.165(b))
<指摘2詳細>
貴社は重要な微生物学的な特性について、貴社の局所医薬品の多くを試験することを怠った。
リリース前に各ロットの試験をせずに、貴社は、全ての医薬品のロットに使用目的の観点で好ましくない微生物汚染がないという科学的なエビデンスを持っていない。
貴社は回答の中で、貴社は品質契約に基づく契約製造業者で、貴社の顧客が試験の計画と規格を決定すると言及した。また貴社は製品の水分含有量を評価し、微生物学的な特性を評価していない全ての製品のリスクアセスメントを実施すると述べた。
貴社の回答は不十分である。貴社は、製品オーナーとの契約の有無に関わらず、契約設備として、貴社が製造した医薬品の品質に責任がある。さらに、製品の水分量ではなく水分活性のほうが、製品微生物の増殖の可能性に関する有用な情報を提供できる。また、多くの微生物は、通常は水分活性が最小限の医薬品の中でも生き残り、製造し続けることも十分に確証されている。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • ロットの処遇の判断をする前に、医薬品の各ロットを分析するために使用される、試験方法を含む微生物学的規格(即ち、総菌数、好ましくない微生物)のリスト
  • 各ロットの保管サンプルの試験から得られた全ての結果のサマリ
    それらの試験で、医薬品が基準を満たさない品質であることが明らかになった場合、顧客への通知や製品の回収などの迅速な是正処置をとれ。

●指摘3

貴社は、医薬品の各成分の同一性を確認するために少なくとも1つの試験を実施することを怠った。(21 CFR 211.84(d)(1))
<指摘3詳細>
貴社は貴社の医薬品を製造するために使用される入荷原材料を適切に試験することを怠った。
具体的には、貴社の成分の同一性試験は、医薬品の製造または調製の使用前の、グリセリンの全てのロットのジエチレングリコール(DEG)とエチレングリコール(EG)の限界試験を含んでいない。貴社はグリセリンを含む複数の医薬品を製造している。
貴社は回答の中で、医薬品を製造するために使用されるグリセリンのロットの保管サンプルのDEGとEGの適合試験結果を提供した。しかし貴社は、グリセリンXXの在庫が激減したため、子供用の日焼け止め製品を製造するために使用されたグリセリンXXの中のDEG及びEGに関する試験をしなかった。また貴社はグリセリンXXを使って製造された、市場にあり使用期限内の最終製品に関するリスクアセスメントを提供することも怠った。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • グリセリンXXを使って製造された全ての最終製品のロットの保管サンプルに関する試験結果のサマリ
  • 同一性、濃度、品質、純度に関する全ての適切な規格への一致について、成分の各ロットをいかに試験するつもりかの記述
    濃度、品質、純度に関する成分の各ロットの試験をする代わりに供給者の分析証明書(COA)の結果を受け入れるつもりなら、初期のバリデーションと定期的な再バリデーションを通じて供給者の結果の信頼性をいかに確実に確認するかを明記せよ。さらに、入荷した成分の各ロットについて、少なくとも1つの特定の同一性試験を常に実施するという約束を含めよ。
    グリセリンの場合は、これには、米国薬局方(USP)モノグラムのパートA,B,Cの実施を含むことに注意せよ。
  • 適切な同一性試験が実施されていることを保証するための、貴社の医薬品に使用される成分の包括的なレビュ

DEGで汚染されたグリセリンの使用は世界中の人々に様々な致命的な中毒事件を引き起こしてきた。更なる情報については、
FDAのガイダンス文書Testing of Glycerin for Diethylene Glycol
を見よ。

●FDAに試験された医薬品サンプル

省略

●品質協定

医薬品は、CGMPを遵守して製造されなければならない。FDAは、多数の医薬品製造業者が製造設備、
試験機関、包装業者、ラベル貼付業者などの独立した請負業者を使用していることを認識している。
FDAは請負業者を製造業者の延長とみなす。
貴社には、製品のオーナーとの契約に関わらず、受託製造所として、貴社が製造する医薬品の品質
に責任がある。貴社には、医薬品が安全性、同一性、濃度、品質、純度に関し、
FD&C Act 501(a)(2)(B)に従って製造されていることを保証することが求められている。
FDAのガイダンス文書Contract Manufacturing Arrangements for Drugs : Quality Agreements
を見よ。

●XXの製造中止

省略

●化粧品

省略

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の製造所に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、全ての違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。この問題に迅速かつ適切に対応しない場合、通知なしで、これらに限定されないが、差し押さえや差し止め命令を含む規制または法的措置につながる可能性がある。未解決の違反は、他の連邦政府当局との契約を阻むかもしれない。
違反への対応の不履行は、FDAの輸出証明書の発行の差し控えにつながる可能性がある。全ての違反が完全に対応され、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の製造業者としての新薬の申請やリストの補完の承認を保留するだろう。また、我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/accra-pac-inc-dba-voyant-beauty-643600-04202023

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回も、以下の定番の指摘事項が挙がっていました。

  • データ・インテグリティの不備
  • OOSの不十分な調査
  • エタノール、グリセリンの不十分な試験
  • 共用の設備、機器の不十分な洗浄
  • 委託/受託製造の管理の不備

アメリカの国の内外を問わず、これだけいつも同じ指摘が挙がっているということは、我々の周りでも同様の問題があると思って間違いないと思われます。今一度、自社の業や、供給者の管理方法についてレビュをする必要があるのではないでしょうか。
是非、参考にしていただければ幸いです。

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【発行責任者】

株式会社プロス 『ASTROM通信』担当 橋本奈央子 hashimoto@e-pros.co.jp

※本記事は株式会社プロスの許可を得て転載しております。

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