【最近のウォーニングレター】ASTROM通信 267号

台風2号の進路が気になるところですが、いかがお過ごしですか。

今回も、アメリカ食品医薬品局(FDA)がアメリカ国内外の製薬会社に出したウォーニングレター3件を取り上げ、FDAがどのような点を問題視し指摘したかを確認していきたいと思います。是非最後までお読みいただければ幸いです。

最近のウォーニングレターの概要  

注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。

■Warning Letter 320-23-13■

2022年11月15日に提出された記録のレビュで見つかったインドの製造所の医薬品製造の重大なCGMP違反について発した2023年4月10日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

貴社は、医薬品の成分の同一性を確認するために少なくとも1つの試験を実施することを怠った。
(21 CFR 211.84(d)(1))
<指摘1詳細>
貴社は、いくつかのOTC医薬品とXXへの投与を目的としたXXを含むホメオパシー医薬品を製造している。
貴社の製剤の一部は最大XX%の、高い割合のグリセリンを含む。貴社が提出した記録と情報に基づけば、貴社は、医薬品の製造に使用する入荷したハイリスクの成分であるグリセリンの各ロットの各梱包を、同一性を判断するために適切に試験したと証明しなかった。グリセリンの同一性試験には、他のハイリスクの成分とあわせて、成分がジエチレングリコール(DEG)またはエチレングリコール(EG)の安全限界値を満たしていることを保証するための、米国薬局方(USP)の限界値試験を含む。貴社は、グリセリンの各ロットの各梱包についてこれらの有害な不純物を検出するためのUSP同一性試験を使った同一性試験を実施していなかったので、医薬品の製造に使用されるグリセリンの許容性を保証することを怠った。
DEGまたはEGで汚染されたグリセリンの使用は、世界中の人々に様々な致命的な中毒事件をもたらしてきた。
さらに、我々の記録の要求に対し、貴社は、グリセリンに関する2018年インド薬局方(IP)
モノグラフを使って、DEG とEGの不純物の存在についてアメリカ向けに出荷もしくは販売された最終製品の保管サンプルのテストを行った。しかし貴社は、グリセリンのテストのために使用された2018年のIPの方法が、最終製品のDEGまたはEGのレベルを確認するのに適しているかを示さなかった。さらに貴社は、出荷もしくは販売された製品の全てのロットをテストせず、分析試験の結果を実証するエビデンスを提出することもしなかった。
グリセリンを含む医薬品を製造する際にCGMP要件を満たす助けとして、FDAのガイダンス文書Testing of Glycerin for Diethylene Glycolを見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • この文書を受け取ってから30日以内に、貴社のグリセリン含有医薬品の製造に使用された全てのグリセリンのロットの保管サンプル内のDEGとEGの試験結果を提出せよ。
    DEG またはEGが、XXでの使用を意図した一部/全ての医薬品を製造するために使用されたグリセリンのロットに存在するかどうかを示せ。
  • グリセリンを含み、アメリカ市場にある使用期限内の医薬品に関する完全なリスクアセスメント
    この成分の全てのロットと、DEG またはEGを含む可能性のある関連医薬品の安全性を判断するために、顧客への通知や汚染されたロットの回収を含む、迅速で適切なアクションをとれ。
    これに限定されないが、全ての入荷した原材料のロットが適格性評価をされた製造業者からのもので、安全でない不純物が含まれてないことを保証するなど、今後のサプライチェインを守る、追加の是正処置・予防処置を特定せよ。この文書への回答の中で、これらのアクションを詳しく説明せよ。
  • 成分、容器、蓋の全ての供給者が適格と評価され、原材料には適切な使用期限またはリテスト日が付与されているかどうかを判断するための、貴社の原材料システムの包括的なレビュ
    レビュは、入荷した原材料の管理が、不適切な成分、容器、蓋の使用を防ぐために適切かどうかも判断すべきである。
  • 同一性、濃度、品質、純度に関する全ての適切な規格への一致について、成分の各ロットをいかに試験するつもりかの記述
    濃度、品質、純度に関する成分の各ロットの試験をする代わりに供給者の分析証明書(COA)の結果を受け入れるつもりなら、初期のバリデーションと定期的な再バリデーションを通じて供給者の結果の信頼性をいかに確実に確認するかを明記せよ。さらに、入荷した成分の各ロットについて、少なくとも1つの特定の同一性試験を常に実施するという約束を含めよ。
  • 製造で使用するために入荷した成分の各ロットの試験とリリースのために使用する化学及び微生物の品質管理の規格
  • 貴社の試験の業務、手順、方法、装置、文書、分析者の能力の包括的なアセスメント
    このレビュに基づいて、貴社の試験システムの改善とその効果の評価をするための詳細な計画を提出せよ。

●CGMPコンサルタントの推奨

貴社がアメリカ向けの医薬品の製造を再開するつもりなら、我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、貴社がCGMPの要件を満たすための助けをする21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社がFDAと共に貴社のコンプライアンス状態の解決を達成しようとする前に、適格なコンサルタントが貴社のCGMP遵守に関し貴社の全ての作業に関する6つのシステム(※)の包括的な監査を実施し、CAPAの完了と効果も評価すべきである。
※6つのシステム:品質システム、施設及び装置のシステム、原材料システム、製造システム、包装&ラベル貼付システム、試験管理システム
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の製造所に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、全ての違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
FD&C Act 501(a)(2)(B)の意味で、製造、加工、包装、保持に使用される手順と管理の方法はCGMPに従っていないように見えるため、FDAは、貴社で製造された全ての医薬品に対して、2023年3月3日に輸入警告措置66-40をとった。
違反の状態が解決したという証拠があり、当局が今後の登録がFD&C Actに従うと確信するまで、貴社で製造された全ての医薬品はこの輸入警告対象リストに残ったままになる可能性がある。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/champaklal-maganlal-homeo-pharmacy-private-limited-652319-04102023

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■CMS 649122■

2022年10月18日~11月17日のニュージャージー州の製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反について発した2023年3月20日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

貴社は、同一性と、純度・濃度・品質に関する文書化された規格への一致について、各成分のサンプルをテストすることを怠った。(21 CFR 211.84(d)(1), 211.84(d)(2))
<指摘1詳細>

●不十分な有効成分の試験

貴社は、エタノールベースの市販(OTC)の手指の消毒剤の製造を契約している。貴社は、貴社のOTC医薬品を製造するために成分を使用する前に同一性に関して入荷した成分を適切に試験することを怠り、適格性評価を行っていない供給者の分析証明書(COA)を信頼した。具体的には、貴社は、入荷した有効成分のメタノール等の不純物について適切に試験することを怠り、貴社の手順はジエチレングリコール(DEG)の存在についてグリセリンの試験を行うことを保証していなかった。また我々は、貴社の医薬品の製造に使用するために用いる原薬XXのCOAに“この原材料は、医薬品の有効成分とみなされず、医薬品の有効成分として販売されていない”と記載されていることに気付いている。
貴社はエタノールを含む複数の医薬品を製造している。メタノールで汚染されたエタノールの使用は、世界中の人々の様々な致命定的な中毒事件を引き起こしてきた。
エタノールを含む医薬品を製造する際、CGMPの要件を満たすための助けとして、FDAのガイダンス文書Policy for Testing of Alcohol (Ethanol) and Isopropyl Alcohol for Methanolを見よ。
貴社はグリセリンを含む医薬品を製造している。DEGで汚染されたグリセリンの使用は世界中の人々の様々な致命定的な中毒事件を引き起こしてきた。
グリセリンを含む医薬品を製造する際、CGMP要件を満たすための助けとして、FDAのガイダンス文書Testing of Glycerin for Diethylene Glycolを見よ。

●不十分な製薬用水の試験

貴社は貴社の医薬品に成分として水を使用している。貴社は、抵抗率と微生物の増殖に関して貴社の水システムを試験する頻度を裏付けるデータを提供することを怠った。製薬用水は、その使用目的に適していて、適切な化学的及び微生物学的な特性に継続的に適合していることを保証するために定期的かつ適切に試験されなければならない。

●指摘2

貴社は、貴社が製造する医薬品が、それが持つとうたわれている、または、表示されている、同一性、濃度、品質、純度を持っていることを保証するために設計された製造と工程管理に関する手順を文書化して制定することを怠った。(21 CFR 211.100(a))
<指摘2詳細>

●製造工程のバリデーション

貴社は、貴社の医薬品を製造するために使用されている工程をバリデートすることを怠った。
プロセスバリデーションは、設計の安定性と、ライフサイクルを通じて工程の管理状態を評価する。
製造工程のそれぞれの重要な段階は、適切に設計され、投入する原材料、中間材料、最終製品の品質を保証しなければならない。工程の適格性評価は、初期の管理状態が定着しているかを判断する。商用の販売の前に、工程の適格性評価の達成が必要である。その後、製品のライフサイクルを通じて安定した製造作業を維持していることを保証するために、工程の性能と製品の品質の継続的で慎重な監視が必要である。
製品の品質に影響を与える可能性のある全ての製造投入とパラメータを組み込んだ適切なプロセスバリデーションがなければ、貴社が規格を満たす製品を再現可能な状態で提供できるという基本的な保証に欠ける。FDAがプロセスバリデーションの適切な要素と考える一般原則とアプローチについて、
FDAのガイダンス文書Process Validation : General Principles and Practicesを見よ。

●水システムの設計とバリデーション

貴社は、水システムをバリデートすることを怠り、水システムのバリデーションに関する文書化された手順が不足していた。貴社は、最低限、精製水のUSPモノグラムと、適切に厳しい微生物の限界値を満たす、製薬グレードの水を一貫して製造するために、貴社がシステムを効果的に制御、メンテナンス、消毒、モニタ出来ていたことを示すエビデンスに欠けていた。貴社は、製造作業に使用するための適切な水を再現可能な状態で生産するために水システムを設計し制御しなければならない。

●指摘3

貴社の品質管理部門は、製造された医薬品がCGMPに従い、同一性、濃度、品質、純度に関して制定された規格を満たすことを保証するための責任を果たすことを怠った。(21 CFR 211.22)
<指摘3詳細>
貴社の品質部門(QU)は、貴社の医薬品の製造に関する適切な監視をしていなかった。例えば、貴社のQUは、以下のことを保証するのを怠った:

  • 貴社の非専用装置の適切な洗浄バリデーションプログラムの制定(21 CFR 211.67(b))
  • 適切で継続的な安定性プログラムの制定(21 CFR 211.166(a))
  • 適切なデータ・インテグリティの管理の制定(21 CFR 211.68(b))
  • 手指の消毒液に関する適切な製造指図記録書(21 CFR 211.188)
  • 最終製品のリリース、製造指図記録のレビュ、年次製品照査、回収、変更管理等に関する
    文書化されて承認された、品質関連の手順書(21 CFR 211.22(d))

全ての製造作業のQUの適切な監督は、一貫して医薬品の品質を保証するために必要である。CGMPの規制21 CFR parts 210, 211の要件を満たすために、品質システムとリスクマネジメントアプローチを実装する助けとして、
FDAのガイダンス文書Quality Systems approach to Pharmaceutical CGMP Regulationsを見よ。
貴社の品質システムは、貴社が製造する医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるためのデータの正確性と完全性を適切に保証していない。CGMPに合致したデータ・インテグリティの手順を制定し従うためのガイダンスとして、
FDAのガイダンス文書Data Integrity and Compliance with Drug CGMPを見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • アメリカに販売された医薬品のデータレビュの結果を含む、記録及び報告データの不正確さの範囲の包括的な調査
    貴社のデータ・インテグリティの欠如の範囲と根本原因の詳細な記述を含めよ。
  • 発見された不具合が貴社の医薬品の品質に与える潜在的な影響の現在のリスクアセスメント
    貴社のアセスメントは、データ・インテグリティの欠如の影響を受けた医薬品のリリースによる患者へのリスクの分析と、継続的なオペレーションによってもたらされるリスクの分析を含めるべきである。
  • 全体的な是正処置・予防処置(CAPA)の計画の詳細を含む貴社の経営戦略
    詳細な是正処置計画は、微生物データ、分析データ、製造記録、FDAに提出される全てのデータを含む貴社で生成される全てのデータの信頼性と完全性をいかに保証するつもりかを記述すべきである。

●システム的な改善

この文書への回答の中で、貴社が今後、この製造所または他の製造所で医薬品の製造を続けるつもりかどうかを確認せよ。CGMPの活動を継続するつもりなら、貴社は、貴社が継続的にCGMPを遵守できることを保証するために、全ての欠陥とシステム的な欠陥を解決する責任がある。
我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、貴社は、貴社がCGMPの要件を満たすための助けをする21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うべきである。貴社がFDAと共に貴社のコンプライアンス状態の解決を達成しようとする前に、適格なコンサルタントが、FDAのガイダンス文書Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulationsに基づき、貴社のCGMP遵守について、貴社の全ての作業に関する6つのシステム(即ち、品質システム、施設及び装置のシステム、原材料システム、製造システム、包装&ラベル貼付システム、試験管理システム)の包括的な監査を実施し、全てのCAPAの完了と効果を評価すべきである。

●請負業者として責任

医薬品は、CGMPを遵守して製造されなければならない。FDAは、多数の医薬品製造業者が製造設備、試験機関、包装業者、ラベル貼付業者などの独立した請負業者を使用していることを認識している。
FDAは請負業者を製造業者の延長とみなす。
貴社には、製品のオーナーとの契約に関わらず、受託製造所として、貴社が製造する医薬品の品質に責任がある。貴社には、医薬品が安全性、同一性、濃度、品質、純度に関し、FD&C Act 501(a)(2)(B)に従って製造されていることを保証することが求められている。
FDAのガイダンス文書Contract Manufacturing Arrangements for Drugs : Quality Agreementsを見よ。

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の製造所に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、全ての違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。この問題に迅速かつ適切に対応しない場合、通知なしで、これらに限定されないが、差し押さえや差し止め命令を含む規制または法的措置につながる可能性がある。
未解決の違反は、他の連邦政府当局との契約を阻むかもしれない。
違反への対応の不履行は、FDAの輸出証明書の発行の差し控えにつながる可能性がある。全ての違反が完全に対応され、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の製造業者としての新薬の申請やリストの補完の承認を保留するだろう。また、我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/omega-packaging-corp-649122-03202023

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■CMS 648378■

2022年10月31日~11月8日のペンシルべニア州の製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反について発した2023年4月5日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

貴社は機器の洗浄とメンテナンスに関する文書化された手順を制定してそれに従うことを怠った。
(21 CFR 211.67(b))
<指摘1詳細>
貴社は、洗浄、ポリマー製造、塗料の添加剤を含む工業用化学薬品の製造にも使用されている装置で市販(OTC)の手指の消毒用医薬品を製造していた。交叉汚染のリスクにより、これらの非医薬品製品の製造に使用するのと同じ機器を使って医薬品の製造をすることは、CGMPの問題で受け入れられない。さらに貴社の医薬品の成分とバルク製品の移送用パイプは、外部環境に開放されているのがみつかった。貴社には、移送用パイプと外部の貯蔵タンクを洗浄するための手順が欠けている。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:

  • 貴社が、貴社の製造所の共有機器での医薬品の製造を中止するかどうかの確認
    もし貴社が貴社の製造所で医薬品と非医薬品の製造を継続するつもりなら、いかにエリアを分け、医薬品製造作業と工業用製品作業のための専用装置を維持するかを示す計画を提出せよ。
  • 貴社が工業用製品と共有している機器上で以前に製造した全ての医薬品のリスクアセスメント
    各製品について、共用機器による潜在的な汚染のリスクを評価し、回収や市場からの撤退の可能性を含む、既に販売中の製品の品質と患者の安全性のリスクについて対処するための計画を提出せよ。
  • 医薬品専用機器について、交叉汚染の危険の範囲を評価するための、貴社の洗浄の効果の包括的で独立した回顧的なアセスメント
    残留物、不適切に洗浄された可能性のある他の製造装置、施設の配管、貯蔵タンクの特定と、交叉汚染された製品が販売のために出荷された可能性があるかどうかのアセスメントを含めよ。
    アセスメントには洗浄手順や業務の不備の特定と、2つ以上の製品の製造に使用されている各製造装置まで網羅すべきである。
  • 設備と機器の日常的で慎重な作業管理の監督をするための是正処置・予防処置(CAPA)の計画
    この計画は、とりわけ、機器/施設の性能の問題の迅速な検知、修理の効果的な実施、適切な予防保全スケジュールの遵守、機器/施設のインフラのタイムリな技術的改修、継続的なマネジメントレビュのためのシステムの改善を保証するべきである。
  • 洗浄手順と業務の適切な改善、完了までのタイムラインを含む、貴社の洗浄プログラムの回顧的アセスメントに基づくCAPAの計画
    機器の洗浄のライフサイクル管理に関するプロセスの脆弱性のサマリの詳細を提出せよ。
    洗浄効果の向上、全ての製品及び機器の適切な洗浄実行の継続的な検証、その他全ての改善を含む、貴社の洗浄プログラムへの改善について詳細を述べよ。
  • 製品、工程、機器の洗浄手順の評価とバリデーションのための適切なプログラムが実施されていることを保証する、改訂された標準操作手順書(SOP)のサマリ

●指摘2

貴社は適切な間隔で成分の供給者の分析試験結果の信頼性をバリデートし確証することを怠った。
(21 CFR 211.84(d)(2))
<指摘2詳細>
貴社は、エタノールの純度、濃度、品質等の規格について、適格性評価のされていない供給者の分析証明書(COA)を信頼した。同一性、純度、濃度、品質に関する成分の適切な分析の不実施により、貴社は、入荷した成分が適切な規格を満たすことを保証することを怠った。
さらに、査察中、貴社は、エタノールのサプライヤXXのみを確認し、製造で使用しているのを見た。
しかしFD&C Actに基づく2022年8月31日の記録とその他の情報の提出の依頼に対する回答では、貴社は、追加のXXのエタノールの供給者を扱っていた。
さらに、異なるエタノールのロットが、手指の消毒薬の製造に使用するために貯蔵タンクで混合されたようだった。供給者とエタノールのロット番号は、貴社の製造記録には記録されず、エタノールの供給源は“バルク”としてだけリスト化されている。供給者のテストの検証の不足、成分ロットの混合、不十分なロットのトレーサビリティは、消費者に重大なリスクをもたらし、エタノール関連の調査や製品の回収の適切な対応能力を妨げる。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 貴社が医薬品の原薬として使用するエタノールが、少なくとも、エタノールに関するUSPモノグラムに記載されている標準を満たすことの確認
  • 製造に使用するために入荷した成分の各ロットの試験とリリースのために貴社が使用している化学的及び微生物学的な品質管理規格
  • 同一性、濃度、品質、純度に関する全ての適切な規格への一致について、成分の各ロットをいかに試験するつもりかの記述
    もし貴社が濃度、品質、純度に関し成分の各ロットの試験をする代わりに、供給者のCOAの結果を受け入れるつもりなら、初期のバリデーションと定期的な再バリデーションを通して供給者の結果の信頼性をいかに確実に検証するかを明記せよ。さらに、入荷した成分の各ロットについて少なくとも1つの特定の同一性試験を常に実施するという約束を含めよ。
  • これに限定されないが、入荷した原材料に関し、それらが混合されていないということを保証することを含む管理の手順
    さらに、エタノールやバルクの手指の消毒薬を保管する貯蔵タンクの分析について情報を提供せよ。また、それらのタンクからの原材料が混合や不十分な洗浄で汚染された可能性の分析も提供せよ。
  • 2022年1月から現在までに使用された全てのエタノールのグレード、ロット、製造業者のリスト
  • USPの標準に従っていないエタノールを使って製造され市場にリリースされた手指の消毒薬に関するアクションプラン
    このプランには、ロット、出荷された量、製造日と使用期限、テスト結果を含めよ。
  • 手順と改訂された製造指図記録を含む、医薬品の製造に使用されたエタノールのロットのトレーサビリティの維持のための管理

●指摘3

貴社は、医薬品のロットが、承認及びリリースの条件である、適切な規格や統計的品質管理の基準を満たすことを保証するために適切な品質管理部門によって実施されるサンプリング及び試験に関する合格基準を制定することを怠った。 (21 CFR 211.165(d))
<指摘3詳細>
貴社は、ロットのリリースの目的で中間材料をサンプリングしたが、貴社が製造した医薬品が使用目的にあった予め定めた品質特性に一致することを保証するための全ての試験を含んでいなかった。
具体的には、ロットは手指の消毒薬のバルクXXから取り除かれ、貴社のロットのリリース試験にはメタノールやベンゼンなどの既知の不純物は含んでいなかった。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:

  • 処遇を判断する前に製品の各ロットを分析するために使用される試験方法を含む化学及び微生物学的な規格のリスト
    • この文書の日付時点で使用期限内にあるアメリカに出荷された医薬品の全てのロットの品質を判断するために保管サンプルの全ての化学及び微生物学的試験を実施するためのアクションプランとタイムライン
    • 各ロットの保管サンプルから得られた全ての試験結果のサマリ
      それらの試験で医薬品の基準以下の品質が明らかになった場合、顧客への通知や製品の回収等の迅速な是正処置をとれ。
  • 貴社の試験手順、業務、方法、機器、文書、分析者の能力の包括的で独立したアセスメント
    このレビュに基づき、貴社の試験システムの改善とその効果を評価をするための詳細な計画を提出せよ。

●指摘4

貴社の品質管理部門は、製造された医薬品がCGMPに従い、同一性、濃度、品質、純度に関する制定された規格を満たすことを保証するための責任を果たすことを怠った。 (21 CFR 211.22)
<指摘4詳細>
貴社の品質部門(QU)は、貴社のOTC製造の適切な監督を怠った。例えば、貴社のQUは、以下のことを保証するのを怠った:

  • 装置及び設備の洗浄、モニタリング、貴社の水システムの洗浄、ベンダの適格性評価、包装及びラベル貼付作業、プロセスバリデーション、医薬品のリリースに関する文書化された手順
    (21 CFR 211.22(d))
  • 貴社の医薬品用の成分の水XXを生成するために使用されるXXシステムの高いコロニー数の適切な調査 (21 CFR 211.192)
  • 原材料を市場にリリースする前の製造プロセスのバリデーション(21 CFR 100(a))

CGMPの規則は、入荷原材料、中間材料、医薬品の合否判定;製造作業中に十分に管理が実施され完了していることの保証;製造記録のレビュと説明のつかない矛盾の調査を含む責任をQUに付与する。
貴社がこれらの責任を果たすことのできるQUを持っていることを証明していなかった。
貴社の品質システムは不十分である。CGMPの規制21 CFR parts 210, 211の要件を満たすために、品質システムとリスクマネジメントアプローチを実装する助けとして、
FDAのガイダンス文書Quality Systems approach to Pharmaceutical CGMP Regulations
を見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 貴社のQUが効果的に機能するための権限とリソースを与えられていることを保証するための包括的なアセスメントと改善計画
    アセスメントは、これに限定されないが、以下のことも含むべきである:
    • 貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
    • 適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体のQUの監督に関する規定
    • QUのロットの処遇の決定前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュの実施
    • 調査の監督と承認と、全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するためのQUのその他全ての職務の遂行
  • 貴社の製造工程が適切な規格と製造の標準を一貫して満たすために、ばらつきの全ての原因を特定し制御するデータ駆動型で科学的に妥当なプログラムがあることを保証するための、医薬品の各製造工程のアセスメント
    評価には、これに限定されないが、使用目的に対する機器の適合性、貴社のモニタリング及び試験システムの検出能力の十分性、投入原材料の品質、製造工程の各段階の信頼性と管理も含むべきである。
  • 逸脱、不一致、苦情、OOSの結果、不具合を調査するための貴社の全体的なシステムの包括的で独立したアセスメント
    このシステムを改修するための詳細なアクションプランを提出せよ。貴社のアクションプランは、これに限定されないが、調査能力、調査の範囲の決定、根本原因の評価、CAPAの効果、品質部門の監督、文書化された手順の著しい改善を含むべきである。調査の全ての段階が適切に実施されていることを貴社がいかに保証するか述べよ。
  • 文書化手順が不十分な場所を特定するために、貴社の製造と試験室の作業を通して使用される文書システムの完全なアセスメント
    貴社が、貴社の作業を通じて、帰属可能で判読可能、完全で原本性があり正確で同時性のある記録を保持していることを保証するために、貴社の文書化手順を包括的に改善する詳細なCAPAの計画を含めよ。

●CGMPコンサルタントの推奨

我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、貴社がCGMPの要件を満たすための助けをする21 CFR211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の製造所に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、全ての違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。この問題に迅速かつ適切に対応しない場合、通知なしで、これらに限定されないが、差し押さえや差し止め命令を含む規制または法的措置につながる可能性がある。未解決の違反は、他の連邦政府当局との契約を阻むかもしれない。
違反への対応の不履行は、FDAの輸出証明書の発行の差し控えにつながる可能性がある。全ての違反が完全に対応され、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の製造業者としての新薬の申請やリストの補完の承認を保留するだろう。また、我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/chemical-services-group-incroyal-chemical-company-648378-04052023

まとめ

いかがでしたでしょうか。

  • エタノール、グリセリンの不純物の不十分な試験
  • 共用の設備、機器の不十分な洗浄
  • 委託/受託製造の管理の不備
  • データ・インテグリティの不備

と、定番の指摘事項が多数あがっていました。
これらは、おろそかになりがちで、かつ、査察で目につきやすい不備と言えるのではないでしょうか。是非、参考にしていただければ幸いです。

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【発行責任者】

株式会社プロス 『ASTROM通信』担当 橋本奈央子 hashimoto@e-pros.co.jp

※本記事は株式会社プロスの許可を得て転載しております。

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