【最近のウォーニングレター】ASTROM通信 271号

厳しい暑さが続いていますが、いかがお過ごしですか。

今回は、アメリカ食品医薬品局(FDA)がアメリカ国内の試験機関、生物製剤の製造業者、製薬会社に出したウォーニングレター3件を取り上げ、FDAがどのような点を問題視し指摘したかを確認していきたいと思います。
最後までお読みいただければ幸いです。

最近のウォーニングレターの概要  

注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。

■CMS 646619■

2022年9月28日~10月7日のニュージャージー州の受託試験機関の査察でみつかった医薬品に関するCGMP違反について発した2023年3月24日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

貴社は必要な試験室の管理メカニズムに従うことを怠った。また、成分、医薬品の容器、蓋、中間材料、ラベル、医薬品が、同一性、濃度、品質、純度の適切な標準に従うことを保証するために科学的に理にかなった適切な規格、標準、サンプリング計画、試験手順を含む試験管理を設計して確立することを怠った。(21 CFR 211.160(a), 211.160(b))
<指摘1詳細>
培地の適切な成長を裏付けることできることを保証するための試験条件や合格基準の制定の不履行を含む、使用前に適合性を保証するための微生物の培地の成長促進試験の手順を確立し、それに従うことを怠った。例えば2022年7月13日のサルモネラ菌の成長促進試験の培地ロット番号XXは、大腸菌を含む軽度で中程度の細菌の成長を確認した。貴社は、大腸菌の増殖を抑制することが明記してある指定された手順で要求された逸脱に言及することもなく、そのロットを使用すること承認した。さらに入荷した培地の各ロットの成長促進試験を行うことも怠った。
さらに、医薬品を試験するために使用された代替の微生物試験法が、米国薬局方(USP)の方法と同等またはそれよりよいと保証するためのバリデートをしなかった。具体的には、貴社は貴社の微生物試験法が好ましくない微生物を確実に検出できると適切に立証することを怠った。例えば、試験番号XXとXXは、手術前と施術後の口腔ケア用の、特に感染しやすい患者に使用する目的で販売されている医薬品XXのサンプルだった。
貴社の微生物試験法はセパシア菌群(Bcc)を検出できず、貴社の顧客に“異常なし”と報告した。
その後、貴社はこれらのサンプルの微生物の二次培養を別の外部試験機関に送り、両サンプルからBccの一種であるバークホルデリア・コンタミナンスを検出した。試験される各医薬品内の好ましくない微生物を検出するための微生物試験法の能力は、検証されバリデートされなければならない。
貴社は回答の中で、購入した培地の全てのロットについて、成長促進試験を実施し、培地が許容可能な成長をサポートできることを保証するために成長促進手順を改訂することを約束した。また貴社は、貴社の医薬品を試験するために使用されている代替試験法がBccを検出するのに不十分であったことを認め、USP<60>試験法に関する試験手順を開発するつもりであると述べた。
しかし、貴社は、貴社の代替試験法を使った前の試験結果の妥当性をいかにレビュするつもりか、また、手順を遵守していない可能性のある分析について、顧客とどのようなコミュニケーションをとるつもりか検討していないので、貴社の回答は不十分である。また貴社は製品の各タイプについて、方法の適合性の検証を実施するつもりであるとも述べたが、適合性検証が不十分であると判明した場合に貴社がとるアクションについて詳細を述べていない。
貴社の顧客は、医薬品の品質に関する重要な情報について、貴社の試験データを信頼している。
従って、貴社の試験方法が適切に検証、または、バリデートされていて、顧客が適切な判断(例:ロットの処遇)をするために貴社が適切な試験方法を使用していることが重要である。検証されていない、または、バリデートされていない方法を使って生成された結果は、顧客を誤解させ、消費者を危険にさらす可能性がある。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 貴社の試験の業務、手順、方法、装置、文書、分析者の能力に関する包括的で独立したアセスメント
    このレビュに基づき、貴社の試験システムを改善しその有効性を評価するための詳細な計画を提出せよ。
  • 過去XX年間の試験の方法の“適合性”を保証するための以前のテストの回顧的なアセスメントと、いかなる不備も顧客へ通知するという約束
    正しくない計数の計算で顧客に提供され改訂された試験結果も含めよ。
  • 試験された医薬品のデータのレビュ結果を含む、データ、記録、報告の不正確な範囲に関する包括的な調査
    データ・インテグリティの欠落している範囲と根本原因の詳細な記述を含めよ。
  • 成長促進試験に含まれる定性的な成長(例:X)ではなく、定量的な合格基準を検証する手順
  • これに限定されないがBccを含む好ましくない微生物の適切な特定を保証するための、貴社の医薬品の 植菌研究から得たローデータ

●指摘2

貴社は適切な品質部門を制定するのを怠り、品質管理部門に適用する責任と手順を文書化しそれに従わせることを怠った。 (21 CFR 211.22(a), 211.22(d))
<指摘2詳細>
貴社の品質部門(QU)は、試験作業の適切な管理に欠け、適切な手順を持つことを保証することを怠った。例えば、QUは以下のことを怠った:

  • 緩衝材、試薬、培地等の原材料の試験のレビュ、合否判断の文書を保持すること
    入荷したロットを使用する前に微生物試験を実施した試験材料が、分析証明書(COA)の評価を含む全ての規格を満たすという保証がない。
  • 試験室の調査、是正処置・予防処置(CAPA)の計画、変更管理等の記録を文書化して保持する 手順が守られていると保証すること
    貴社は我々査察官、多くの標準操作手順(SOP)は守られていないと話した。
  • 適切なCGMP教育プログラムを制定すること
    貴社には、QU関連の機能を実施するリソースが欠けていて、我々の査察で、基本的なCGMPの違反が明らかになった。

貴社は回答の中で、SOPを遵守していないことを認め、入荷した全ての試験する材料の受領を文書化し、関連する文書を保持するつもりであると述べた。また貴社は、CGMP教育プログラムを開発し、品質機能を果たすために、品質コンサルタントを雇うと約束した。しかし、貴社は医薬品の試験に使用されている材料が意図した用途に合っていることを保証するための回顧的レビュを実施する約束をしなかったので、貴社の回答は不十分である。さらに、貴社は医療
機器に適用される21 CFR 820の教育に、貴社の試験の技術者が参加する予定であると述べたが、医薬品のCGMP教育の欠如に対処していない。
貴社の品質システムは不十分である。CGMPの規制要件である21 CFR part210, 211を満たすために品質システムとリスクマネジメントアプローチを実装する助けして、FDAガイダンス文書Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulationsを見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 正しい原材料が使用され許容できることを保証するための、入荷した原材料に実施したテストの記録の回顧的レビュ
  • 貴社のQUが効果的に機能するために、権限とリソースを与えられていることを保証するための、包括的なアセスメントと改善計画。アセスメントにはこれに限定されないが、以下のことを含むべきである:
    • 貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
    • 適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体のQUの監督に関する規定
    • QUのロットの処遇の決定前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュの実施
    • 調査の監督と承認と、全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するためのQUのその他全ての職務の遂行
  • 貴社の変更管理システムの包括的で独立したアセスメント
    このアセスメントには、これに限定されないが、変更が正当化され、レビュされ、QUによって承認されていることを保証するための貴社の手順を含むべきである。
    貴社の変更管理プログラムは、変更の効果を判断するための規定も含むべきである。
  • 正しい原材料が使用され、許容可能であることを保証するための入荷した原材料に実施したテストのXX年間の記録の独立した回顧的なレビュのサマリ

●指摘3

貴社は、試験の記録が、制定された規格や基準に従うことを保証するために必要な全てのテストから得られた完全なデータを含んでいることを保証するのを怠った。
 (21 CFR 211.194(a))
<指摘3詳細>
貴社の試験の記録は、分析が実施されたことを裏付けるための完全な試験データを含んでいない。例えば、貴社の記録は、試験に使用された方法の記述、試験結果及び試験結果を制定された規格とどのように比較したかの記述、使用された全ての重要な装置の記録、試験条件に準拠しているかの確認に欠けている。さらに貴社は各医薬品の代替試験方法の適合性を裏付けるローデータを提出できなかった。
全てのCGMP関連のデータは、QU及び顧客による適切なアセスメントと判断を可能にし、継続的な管理を証明するために、契約試験機関を含む全ての試験室で保持されなければならない。
貴社は回答の中で、不足している情報が含まれるように貴社の記録を改訂するつもりであると述べた。貴社は前に行われた試験の完全性と合否に関し、回顧的にレビュするという約束をしなかったので、貴社の回答は不十分である。
この文書の回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 文書化が不十分な場所を特定するために、貴社の試験作業全体で使用されている文書化手順の包括的で独立したアセスメント
    貴社が、貴社の作業を通じて、帰属可能で判読可能、完全で原本性があり正確で同時性のある記録を保持していることを保証するために、貴社の文書化手順を包括的に改善する詳細なCAPAの計画を含めよ。
  • 不十分な文書の製品品質への潜在的な影響を要約した独立したアセスメント

●契約試験機関の責任

FDAは請負業者を、製造業者の施設の延長とみなす。貴社のCGMP遵守の不履行は、貴社が試験した貴社の顧客の医薬品の品質、安全性、有効性に影響を与える可能性がある。貴社が顧客のために分析作業を実施する際、CGMPを完全に遵守して作業をするという貴社の責任を理解することが不可欠である。貴社の試験室の役割は医薬品のサプライチェインにとって重要で、貴社の機能に関連する全てのCGMPを満たすことが不可欠である。この責任の一貫として、貴社の顧客(例:製造業者)がロットの評価と請負業者の監視に関する品質の責任に対処することを可能にするために、迅速で完全で透明性のある分析情報を提供することが不可欠である。この責任は、これに限定されないが、貴社により実施される規格外(OOS)の調査を顧客に伝えることを含む。詳細の情報は、
FDA Guidance for Industry Contract Manufacturing Arrangements for Drugs : Quality Agreements
を見よ。

●CGMPコンサルタントの推奨

我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、貴社がCGMPの要件を満たすための助けをする21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタント(即ち、独立したサードパーティ)を雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを遵守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP遵守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。

●データ・インテグリティの改善

貴社の品質システムは、貴社のテストした医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるデータの正確性、完全性を十分に保証していない。CGMPに遵守したデータ・インテグリティの業務を制定して従うためのガイダンスとして、
FDAのガイダンス文書Data Integrity and Compliance With Drug CGMPを見よ。

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、全ての違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。この問題に迅速かつ適切に対応しない場合、通知なしで、これらに限定されないが、差し押さえや差し止め命令を含む規制または法的措置につながる可能性がある。未解決の違反は、他の連邦政府当局との契約を阻むかもしれない。
違反への対応の不履行は、FDAの輸出証明書の発行の差し控えにつながる可能性がある。全ての違反が完全に対応され、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。また、我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/sure-biochem-laboratories-llc-646619-03242023

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■CMS 638823■

2022年3月21日~3月30日のフロリダ州の製造所の査察や、収集した情報で見つかった生物学的製剤の製造に関する重大なCGMP違反について発した2023年6月21日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

全ての無菌及び滅菌プロセスのバリデーション手順を含む、無菌をうたう医薬品の微生物汚染を防ぐために文書化した手順を設計しそれに従うことの不履行(21 CFR 211.113(b))
<指摘1詳細>
例えば、
a.貴社の製品を製造するために使用される無菌プロセスは、2020年2月に貴社の製造作業が始まって以来バリデートされていなかった (例:XXの実施によるなど) 。貴社の製品は無菌であることがうたわれ、無菌であることが期待されている。
b.貴社は、貴社が製品を製造する無菌プロセスエリア内での環境モニタリングのための適切な文書化された手順を制定することを怠っていた。例えば:
i.重要エリア(即ち、生物学的安全キャビネット(BSC)の内側)内で貴社の微生物モニタリングに関するアクションリミット(即ち、活発に生存可能な空気、表面サンプル、職員の手袋をはめた指先)は、立法メートルあたりXXコロニー形成単位(CFU)で、“プレートとフロア”毎のXX CFUと、プレート毎のXX CFUより大きいことが確認された。そのような高い生物数は、製品の汚染の原因となり、潜在的に重大な安全上の懸念をもたらす可能性がある。
ii.クリーンルーム内の活発に生存可能な空気のサンプルのアクションリミットが、立法メートル あたりXX CFU以上であることが確認された。そのような高い生物数は、製品の汚染の原因と なり、潜在的に重大な安全上の懸念をもたらす可能性がある。
iii.貴社は、各製造ロットに関連する微生物に関し、生存不可能な粒子のモニタリング、能動的または受動的な製造可能な空気のサンプル、または、BSC内の重要な表面のサンプリングを実施していない。
c.査察中、FDAの査察官は、貴社の製品を微生物汚染から適切に守っていない職員の手順を確認した。例えば:
i.作業者が、ISO 8の廊下で着用された滅菌手袋の外側のペアを変更または消毒することなく、XXの処理を実施するのが確認された。処理のステップは、破片の除去や、中間材料の無菌の移動を含む、出生組織(birth tissue)のXXが含まれる。
ii.XXの無菌処理を行う作業者が、BSC内の開いた処理中の臍帯組織の容器の上を、手袋をはめた手と袖を繰り返し通過させたり、手袋をはめた手を処処理中の臍帯組織の開いた容器の上を覆うために使用しているのが確認された。

●指摘2

医薬品が、それが持つとうたわれている、または、表示されている、同一性、濃度、品質、純度を持っていることを保証するための製造と工程管理に関する手順を設計し文書化して制定することの不履行(21 CFR 211.100(a))
<指摘2詳細>
具体的には、製造プロセスを同一性、濃度、品質、純度に関してバリデートしていなかった。
例えば、貴社の臍帯の処理に関するバリデーションは、製品の属性の測定としてバイオバーデンのテストしか含んでいなかった。

●指摘3

医薬品の安定性を評価し、安定性試験の結果を保管条件や使用期限を決定するために使用するために、試験プログラムを設計し文書化して制定し、それに従うことの不履行(21 CFR 211.166(a))
<指摘3詳細>
具体的には、貴社は、製品の安定性に関する裏付けのデータなしに、製品の5年の有効期限を付与している。
我々はFDA-483のFDA査察所見に対する2022年4月20日付、2022年8月22日付の貴社の書面による回答を受け取りレビュした。我々は貴社がFDA-483に記載されているCGMPの不備を是正したと表明していることを認識している。しかし、貴社の回答の中で述べられている是正処置は、上記の違反に対処するには不十分である。例えば、貴社の回答は、貴社の無菌製造プロセスのバリデートの不履行に対処していない。さらに貴社は、貴社の製造プロセスはプロセスバリデーションを必要とせず、貴社の提案する安定性の検証は、貴社の製品の全ての安定性を示す特性を含んでいるわけではないと主張している。別の例として、貴社の改訂された更衣の手順は、XX手洗いの実施と滅菌手袋の着用前に、ISO-7クリーンルーム内で試験用手袋を取り外すべきであると示している。我々は、これは、無菌プロセスエリア内での肌の露出につながり、製造プロセス中の汚染のリスクを増すことを懸念している。
さらに、貴社の回答は、貴社の製品の継続的な製造と販売や、上記の違反条件のもとで製造された現在の在庫の廃棄計画に対処していない。
貴社は、上記の通り、貴社の製品PHS法の361条のみに基づいて規制されるべきであると主張するが、入手可能なエビデンスは、貴社の製品がPHS法の361条のみに基づいた21 CFR 1271.10(a)と、21 CFR Part 1271の規制の全ての基準を満たしていないことを示している。貴社の回答は、この文書で取り上げられている製品を研究するための治験許可を持っていないことと、貴社の製品を合法的に販売するには、生物製剤承認の欠如にも対応していない。上記の通り、生物製剤を合法的に販売するためには、有効な生物製剤ライセンスが必要である。そのようなライセンスは、製品が安全で、不純物が入っていなくて、効能があることを示した後にのみ発行される。開発段階の間、スポンサーがFDAの規則で指定された治験許可を持っている場合に限り、ヒトの臨床使用のために販売することができる。
この文書も、査察の終了時に貴社と話し合ったFDA-483に記載されている所見も、貴社の製品に関する不備の包括的なリストではない。貴社の組織がFD&C Act、その他全ての適用される規制に準拠していることを保証するのは貴社の責任である。
この文書は、我々の調査結果を通知し、貴社がそれらに対処する機会を与えるものである。
これらの問題に適切な対処の不履行は、更なる通知なしで差し押さえや差し止め命令を含む法的措置につながる可能性がある。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/row1-inc-dba-regenative-labs-638823-06212023

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■CMS 650263■

2022年11月28日~12月2日のカリフォルニア州の製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反について発した2023年5月26日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

貴社は、医薬品の各成分の同一性を確認するために少なくとも1つの試験を実施することを怠った。また貴社は、適切な間隔で貴社の成分の供給者の分析試験の信頼性を検証し実証することを怠った。(21 CFR 211.84(d)(1),211.84(d)(2))
<指摘1詳細>
貴社は、OTC医薬品を製造するために使用される入荷した成分を適切に試験することを怠った。
その他のハイリスクな成分と共に、グリセリンは、ジエチレン(DEG)またはエチレングリコール(EG)に関し、安全の限界値を満たしていることを保証するために、米国薬局方(USP)に基づく確認試験が必要である。貴社はこれらの不純物を検知するUSP確認試験方法を使ったグリセリンの各ロットの積み荷毎の同一性試験を実施しなかったので、貴社の医薬品を製造するために使用されたグリセリンの許容性を保証することを怠った。さらに貴社は、製造業者の分析証明書(COA)を信頼して、製品のXXロットを製造するために、適格性評価がされていない供給者から得たグリセリン1ロットをリリースした。
グリセリンもプロピレングリコールも貴社の医薬品に使用される成分である。グリセリンとプロピレングリコールのDEG汚染は、世界中の人の様々な致命的な中毒事件をもたらしてきた。
医薬品の製造業者として、貴社には、製造に使用するためのリリース前に、成分の入荷した全ての積み荷の特定の同一性試験を実施する責任がある。
貴社は回答の中で、医薬品の製造のためにリリースする前に、同一性試験を含めるようグリセリンの原材料の規格を改訂すると約束した。貴社の回答は不十分である。貴社は、現在貴社の倉庫にあるグリセリンのロットの同一性試験を実施することを怠った。グリセリンを含む既に出荷され使用期限内にある製品について、全てのグリセリンのロットを評価に含めるか回答しなかった。成分の適切な試験なしに、貴社は貴社の医薬品の品質と安全性を保証することはできない。
DEGまたはEGの汚染のリスクある成分を含む医薬品を製造する際にCGMP要件を満たす助けとして、
FDAのガイダンス文書Testing of Glycerin, Propylene Glycol, Maltitol Solution, Hydrogenated Starch Hydrolysate, Sorbitol Solution, and Other High-Risk Drug Components for Diethylene Glycol and Ethylene Glycol
を見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 全ての成分、容器、蓋の供給者が適格性を評価され、原材料には適切な使用期限またはリテスト日付が付与されているかどうかを判断するための、貴社の原材料システムの包括的で独立したレビュ
    レビュには、入荷した原材料の管理が、不適切な成分、容器、蓋の使用を防ぐために適切かどうかも判断すべきてある。
  • 製造で使用する成分の入荷した各ロットを試験しリリースするのに使用している化学及び微生物の品質管理の規格
  • 同一性、濃度、品質、純度に関して、各成分のロットをいかに試験するつもりかの記述
    貴社が濃度、品質、純度に関して成分の各ロットを試験する代わりに、貴社の供給者の分析証明書(COA)の結果を受け入れるつもりなら、初期のバリデーションと定期的な再バリデーションを通じて、供給者の結果の信頼性をいかに確実に確認するつもりかを明記せよ。
    さらに、入荷した成分の各ロットについて、少なくとも1つの特定の同一性試験を常に実施するという約束を含めよ。グリセリンの場合には、これには、米国薬局方(USP)モノグラフのパートA,B,Cの実施が含まれることに注意せよ。
  • 各成分の供給業者から得たCOAの信頼性を評価するために実施した全ての成分の試験から得られた結果のサマリ
    このCOAのバリデーションプログラムについて述べた貴社の標準操作手順(SOP)に含めよ。
  • 貴社が製造した医薬品を試験する契約施設の適格性評価と監視のプログラムのサマリ
  • 30日以内に、貴社のグリセリン含有医薬品の製造に使用された全てのグリセリンのロットの保管サンプルのDEGとEGの試験結果を提出せよ。
    その一部は小児用である貴社の医薬品を製造するために使用された全てのグリセリンのロットの中にDEGまたはEGが存在したかどうかを示せ。さらに、DEGまたはEGの汚染のリスクがある、貴社で使用された医薬品の成分の全てのロットの保管サンプルの迅速な試験を実施せよ。
  • DEGまたはEGの汚染のリスクがある成分(これに限定されないがグリセリンを含む)を含む、使用期限内の製品に関する完全なリスクアセスメントを提出せよ。DEGまたはEGを含む可能性のある成分及び関連する医薬品の全てのロットの安全性を判断するために、汚染されたロットに関する顧客への通知や製品の回収を含む迅速で適切なアクションをとれ。これに限定されないが、全ての入荷した原材料のロットは、完全に適格性が評価された製造業者からのもので、安全でない不純物を含まないことを保証することを含む、将来のサプライチェインを保護する追加の適切な是正処置・予防処置を特定せよ。この文書への回答の中で、これらの処置の詳細を述べよ。

●指摘2

貴社は、公式またはその他の制定された要求を超えて製品の安全性、同一性、濃度、品質、純度を変える可能性のある誤動作または汚染を防ぐために、適切な間隔で、装置及び器具を洗浄、維持、また、医薬品の性質により必要に応じて消毒・滅菌することを怠った。
(21 CFR 211.67(a))
<指摘2詳細>
貴社は、貴社の医薬品の製造に使用される装置を適切に洗浄し維持することを怠った。例えば、我々査察官はXX内の“洗浄済”のラベルが貼付された非専用の混合タンクXX内の、製品に直接接触する表面上に未確認の目に見える残留物を確認した。さらに貴社は、これらの非専用の混合タンクの洗浄と使用のログを保持することを怠った。
さらに我々は、貴社が、XX内の非専用の混合タンクを使って製造された貴社のいくつかの最終製品内に好ましくない微生物汚染の複数の所見を報告していたことに気が付いている。貴社の是正処置・予防処置(CAPA)は、可能性の高い根本原因は、混合タンクの蓋とバルブの不十分な洗浄と、これらの活動の品質保証(QA)の監督の欠如であることを示していた。しかし、日々の洗浄活動が満足が行くように実施されていることを監督するため運用管理の不履行に触れていなかった。
貴社は回答の中で、洗浄手順を改訂し、ログブックの使用を命じることを約束した。貴社の回答は不十分である。貴社は残留物の正体を判断する際の洗浄効果の包括的なアセスメントを提出せず、その他の製造装置が不適切に洗浄されていたかの評価、交叉汚染された製品が販売のためにリリースされたかどうかの判断をしなかった。さらに貴社は、日々の運用管理とQAの監視活動の範囲と有効性を総合的にレビュするという約束をしなかった。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 交叉汚染の危険の範囲を評価するための、貴社の洗浄の効果の包括的で独立した回顧的なアセスメント
    残留物の特定、不適切に洗浄されていたかもしれない他の製造装置の特定、交叉汚染された製品が販売のためにリリースされたかどうかのアセスメントを含めよ。アセスメントは、洗浄の手順と業務の不備を特定し、2製品以上の製造に使用される製造装置を網羅すべきである。
  • 洗浄プロセスと業務の適切な改善、完了までのタイムライン、定期的で慎重な運用管理の実装のための計画、QAの監視を含む、貴社の洗浄プログラムの包括的なアセスメントに基づくCAPAの計画
    装置の洗浄のライフサイクル管理における貴社のプロセスの脆弱性の詳細なサマリを提出せよ。洗浄効果の向上を含む貴社の洗浄プログラムの改善;すべての製品と機器の適切な洗浄と実行の継続的な検証を保証するための改善;その他全ての必要な改善について述べよ。
    また、洗浄プログラムの包括的なアセスメントに基づき、貴社の洗浄バリデーションの検証をいかに更新するかについても述べよ。
  • 設備及び装置の定期的な監視を実施するためのCAPAの計画
    この計画は、とりわけ、装置/施設の性能問題の迅速な検知、修繕の効果的な実施、適切な予防保全スケジュールの遵守、装置/施設のインフラストラクチャに対するタイムリな技術的アップグレード、継続的なマネジメントレビュのためのシステムの改善を保証すべきである。
  • 過去3年間の微生物汚染に関係している可能性のある水システムの不具合、ロットの不具合、不合格になったロット、返品された製品、苦情、逸脱の回顧的で独立したレビュ

●バイオバーデンのOOSの試験結果の調査に関する追加の懸念

レビュ中、我々はセパシア菌群(BCC)を含むバイオバーデンのOOSの結果や、貴社の最終製品内の酵母やカビに関する貴社の調査の不備に気付いた。
例えば、2020年2月から2020年9月に、貴社は、XX内の非専用装置を使って製造された複数の最終製品のロットの中にBCCまたは酵母とカビに関するOOSの結果を得た。貴社の調査により、CAPA20—005は有効とみなされ、約8か月後の2021年4月2日に終了した。しかし、貴社は好ましくない微生物がみつかった時期に製造された他の影響を受けた可能性のある医薬品のロットに調査を広げなかった。貴社は、バイオバーデンの逸脱の再発を防ぐための効果的でタイムリなCAPAを実施しなかった。
CAPA20-005は根本原因の可能性の高いものを特定したが、調査の範囲に、影響を受けた可能性のある全ての製品のロットを含めなかった。
BCC及び非滅菌の水性の医薬品のその他の好ましくない汚染に関する詳細な情報は、2023年4月21日付で掲載されたFDAの勧告通知を見よ。

●CGMPコンサルタントの推奨

我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、貴社がCGMPの要件を満たすための助けをする21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを遵守するための貴社の義務を軽減するものではない。
貴社の経営陣には、継続的なCGMP遵守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、全ての違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。この問題に迅速かつ適切に対応しない場合、通知なしで、これらに限定されないが、差し押さえや差し止め命令を含む規制または法的措置につながる可能性がある。未解決の違反は、他の連邦政府当局との契約を阻むかもしれない。
違反への対応の不履行は、FDAの輸出証明書の発行の差し控えにつながる可能性がある。
全ての違反が完全に対応され、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。また、我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/neilmed-pharmaceuticals-inc-650263-05262023

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回取り上げたウォーニングレターは、契約試験機関、生物製剤の製造業者、製薬会社と異なるタイプの企業に出されたものでしたが、下記のようないつもの指摘が挙がっていました。

  • 手順を定めてそれを遵守することを行っていない
  • データ・インテグリティに関し、不備がある
  • 供給者の適格性評価、供給者のCOAの信頼性の確認が不十分である

アメリカ国内向け指摘ですが、これらはある意味、普遍的な指摘事項ですので、是非、皆様の会社にも該当するものがないかご確認いただければと思います。

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※本記事は株式会社プロスの許可を得て転載しております。

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