【最近のオレンジレター&ウォーニングレター】ASTROM通信 265号

ゴールデンウィークが始まり、連休中の方も多いと思いますが、いかがお過ごしでしょうか?

今回は、日本のPMDAが最近発行したオレンジレター1件とアメリカ食品医薬品局(FDA)が国内の製薬会社に出したウォーニングレター2件を取り上げ、日米の規制当局が何を問題視し指摘したかを確認していきたいと思います。
是非最後までお読みいただければ幸いです。

PMDAオレンジレター

2023年3月、PMDAは、製品に内容物と異なるラベルが貼付された事例についてのオレンジレターを発表しました。
<事例>
◆国内の製材製造所で製造した製品に、内容物と異なるラベルが貼付されていることが判明。
◆原因調査の結果、手順書の規定に反し、複数の製品に係る一連の作業をまとめて実施したことにより、 製品間でラベルの取違えによる誤貼付が生じたことが判明。(バーコード照合でも、誤貼付が未検知)
出典:000251353.pdf (pmda.go.jp)

物の取り違えを防ぐために、昨今バーコードリーダを使って指図と現物を照合するしくみが普及していますが、現物に貼付するラベルがそもそも違ってしまうと照合が正しく行えません。
貼り間違えを防ぐ最善の策は、アナログな気もしますが、1製品ずつ作業を行うということしかないのかもしれません。

最近のウォーニングレターの概要  

注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。

■CMS 642595■

2022年8月3日~8月9日のフロリダ州の製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反について発した2023年2月1日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

貴社は、貴社が製造する医薬品が、それが持つとうたわれている、または、表示されている同一性、濃度、品質、純度を持つことを保証するために設計し文書化された手順と工程の管理を制定することを怠った。(21 CFR 211.100(a))
<指摘1詳細>
貴社は、これに限定されないがXX1を含む貴社のOTC医薬品に関し、製造工程がバリデートされていることを示すデータを提出することを怠った。貴社には、製造工程が管理されていて許容範囲内にあるかどうか判断するための適格性評価のプロトコル、レポート、検証が不足していた。
貴社は回答の中で、XX2の結果を含むXX1のバリデーションレポートを完成させると述べた。
貴社の回答は不十分である。貴社は貴社の製造工程が設計、制御され、均一な性質と品質のロットを再現可能な状態で製造できることを示していなかった。XX2にはXX1と同じ有効成分は含まれていない。
貴社は、別のOTC医薬品の製造工程のバリデーションに関する性能適格性評価と是正処置の詳細も提供できなかった。
プロセスバリデーションは、工程のライフサイクルを通して、工程の設計と管理状態の堅実性を評価する。製造工程の各重要な段階は適切に設計され、投入される原材料、中間材料、最終製品の品質を保証しなければならない。工程の適格性評価の検証は、初期の管理状態が定着しているかどうかを判断する。
商用の販売の前に、工程の適格性評価の達成が必要である。その後、製品のライフサイクルを通じて貴社が安定した製造作業を維持していることを保証するために、工程の性能と製品品質の継続的で慎重な監視が必要である。
FDAがプロセスバリデーションの要素と考える一般原則とアプローチについて、
FDAのガイダンス文書Process Validation : General Principles and Practicesを見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • ラベルの例を含む、貴社によりリリースされた全ての製品のリスト
    FD&C Actのもとで医薬品に該当するかどうかを判断するために、使用期限内にある貴社によりリリースされた全ての製品の徹底的で独立した評価を含めよ。
  • 製品のライフサイクルを通じて、管理状態を保証するためのバリデーションプログラムの詳細な概要と関連する手順継続的な管理状態を保証するために、工程性能の適格性評価とロット内及びロット間のばらつきを継続的なモニタリングする貴社のプログラムについて述べよ。また、貴社の装置及び施設の適格性評価に関するプログラムも含めよ。
  • 貴社の工程性能のプロトコルと、装置及び施設の適格性評価に関する文書化された手順を含めよ。
  • 貴社が製造する各市販医薬品に関する適切な工程性能適格性評価(PPQ)の実施に関するタイムライン
  • 貴社の製造工程が適切な規格と製造の標準を一貫して満たすために、ばらつきの全ての原因を特定し制御するデータ駆動型で科学的に妥当なプログラムがあることを保証するための、医薬品の各製造工程の評価
    評価には、これに限定されないが、使用目的に対する装置の適合性、貴社のモニタリング及び試験システムの検出可能性の十分性、投入原材料の品質、製造工程の各段階の信頼性と制御を含むべきである。

●指摘2

貴社は、医薬品の安定性を評価し、適切な保管条件と使用期限を判断することに安定性試験の結果を使用するために設計された、文書化された適切な試験プログラムを制定することを怠った。
(21 CFR 211.166(a))
<指摘2詳細>
貴社は、適切な安定性プログラムを制定し、貴社が製造するOTC医薬品の適切な使用期限を判断することを怠った。例えば、貴社は、医薬品XXロットXXに5年の使用期限を付与した。査察時、リアルタイム及び加速データのXXのみが利用可能だった。貴社にはXXの5年の使用期限を裏付ける十分な安定性データが不足していた。
貴社は回答の中で、5年の使用期限はXXの安定性に基づいていると説明しているが、XXはXXで使用されている有効成分塩酸オキシメタゾリンを含まない別の医薬品である。さらに貴社は、それは貴社の製品が安定してXXであるという貴社の仮定であったと述べた。また、貴社は、”今後のロットは、XXのデータのみ、または、リアルタイムの安定性データがある場合に限る“とラベル表示をするという約束をした。
貴社の回答は不十分である。貴社は、ラベルに表示された使用期限を通じて、貴社の医薬品の化学及び微生物特性が規格内にあると示すデータを提供することを怠っている。また貴社は市場に残っている貴社の医薬品が適切な安定性データを持っているかどうかについて対処するための暫定的な手段を提出することも怠っている。適切な安定性の検証がない製品は、医薬品が、ラベルに表示された使用期限を通じて、定められた規格を満たし、品質特性を維持していると裏付けるための科学的エビデンスが不十分である。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 貴社の安定性プログラムの妥当性を保証するための、包括的で独立したアセスメントと是正処置
  • 予防処置(CAPA)の計画
    改善されたプログラムには、これに限定されないが以下のことを含むべきである:
    • 安定性を示す方法
    • 出荷許可前に、販売される容器施栓システムの中の各医薬品の安定性の確認
    • うたわれている使用期限が妥当かどうかを判断するための、各医薬品の代表的なロットがプログラムに追加されるような継続的プログラム
    • 各工程(タイムポイント)で試験される特定の属性の詳細な定義
  • 貴社の改善された安定性プログラムのこれら及びその他の要素を述べた全ての手順
  • 使用期間を通じて規格に従うことを裏付けるデータを持っているかを判断するための、保管条件、製剤の違い、包装の構成、実施されてきた全ての過去の安定性の検証を含む、アメリカ市場にある全ての医薬品の包括的で独立したアセスメント
    貴社の医薬品がラベルに表示された使用期限を通じて品質特性を保持していることを科学的に裏付けるために必要とされるデータにギャップがある場合、市場にある市場期限内のロットに関する影響評価を含むCAPAの計画を提出せよ。
  • 存在する安定性プログラムに現在含まれていない全ての医薬品のロットの使用期限内の保管サンプルの試験から得られた結果のサマリ
    各ロットの試験は、この文書の日付時点から60日以内に完了されなければならない。貴社は、これに限定されないが、各ロットの同一性、有効成分の濃度、微生物学的品質(総菌数、好ましくない微生物を検出するためのバイオバーデンの特定)を含む全ての適切な品質特性を試験する必要がある。試験で規格外(OOS)の結果が出た場合、顧客への通知や回収の開始等、貴社がとる予定の是正処置を示せ。

●指摘3

貴社は、医薬品の製造、加工、梱包、保管において、適切な設計、適切なサイズ、使用目的とその洗浄やメンテナンスのための作業を容易にするために適切に設置された装置を使用することを怠った。
(21 CFR 211.63)
<指摘3詳細>
貴社の精製水システムは、意図した目的に合わせて適切に設計され維持されていない。例えば、水の滞留場所を含む水システムは継続的に循環していなかったため、バイオフィルムの発生が促進される可能性がある。水が使用されていない時は、POU(points-of-use)のXXが開かれている時を除き、システム内の水は停滞していた。
貴社は回答の中で、水システムに現在実施されている管理と、バリデーションレポートから得られた試験データの使用について説明している。さらに貴社はXXベースで製造中のXXの使用をすることも示している。貴社は、OTC医薬品のために正詩された水のロットを含め、XXするために、試験の頻度を増すことを約束している。
貴社の回答は不十分である。貴社は、貴社の水システムのメンテナンス、洗浄手順、季節変動、その他の実際の使用条件がバリデーション中にいかに考慮されているかを記述することを怠り、サンプリングの頻度の適切な正当化の理由を提供することを怠った。貴社の回答は、製造中に貴社が使用するXXのXX試験を実施していないことに対処することも怠っている。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 水システムの設計、制御、メンテナンスに関する包括的なアセスメントと改善の計画
  • 特定された全てのシステム設計の問題が完全に修正され、メンテナンス修理が完了した後に得られた水システムのバリデーションレポート
    システムのバリデーションプロトコル、全てのテスト結果、最終的なバリデーションレポートを含めよ。
  • このシステムが貴社の各製品の使用目的にあった水を精製しているかどうかをモニタするための微生物総数のリミット
  • 使用期限内で現在アメリカにある医薬品の全てのロットの品質への水システムの潜在的な影響に対処した詳細なリスクアセスメント
    リスクアセスメントに応じて貴社がとろうとしている顧客への通知や製品の回収などのアクションを明記せよ。
  • 貴社で製造される医薬品の各ロットの使用の許容性を保証するために水の定期的な微生物試験を明記した、水システムのモニタリング手順
    さらに、貴社の回回には、実際の製造条件を代表し、微生物の検知を損なわない方法で実施される精製水の収集を保証するために、いかにサンプリングの方法を改善するかを記述する必要がある。
  • 貴社の精製水システムに使用される総菌数と好ましくない微生物に関する現在のアクション(及びあればアラート)のリミット
    貴社の精製水に関する総菌数のリミットが、貴社で製造される各医薬品の使用目的の観点で適切に厳しいことを保証せよ。

●指摘4

貴社は、成分、医薬品の容器、蓋、中間材料、ラベル、医薬品が同一性、濃度、品質、純度の適切な規格に一致することを保証するために設計された科学的に理にかなって適切な規格、標準、サンプリング計画、試験手順を含む試験の管理を制定することを怠った。(21 CFR 211.160(b))
<指摘4詳細>
貴社の試験の管理は不十分である。例えば:

  • 精製水及び最終製品の品質を判断するために使用されている微生物学試験の方法は不適切だった。
    具体的には、貴社は、すぐ使用できる培地での全てのロットの成長促進試験の実施を怠り、貴社が製造する各医薬品に関する微生物試験の方法の検証を怠った。
  • 貴社は好ましくない微生物を含まないことが求められる医薬品の各ロットに関する適切な試験を実施することを怠った。(21 CFR 211.165(b))特に貴社は、リリース及び安定性試験時、多数の非滅菌の水性剤形の医薬品に関し、セパシア菌群(BCC)の試験を実施することを怠った。

非滅菌の水性剤形の医薬品のBCC及びその他の好ましくない汚染の重要性に関する更なる情報は、2021年7月7日に掲載されたFDAの勧告通知を見よ。
貴社は回答の中で、貴社の培地の品質管理は出荷の検証も実施した貴社のサプライヤにより実施されており、陽性・陰性の管理は必要ないと述べている。さらに貴社はBCCに関し試験を開始すると約束している。
貴社の回答は不十分である。貴社は、販売されたロットを含む医薬品の品質へのリスクだけでなく、CGMPの不備の範囲と影響や、関連するリスクに対処することを怠った。培地の適切な試験がなく、貴社は貴社の医薬品が適切な微生物の品質規格を満たすことを保証することはできない。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 貴社の試験の業務、手順、方法、装置、文書化、分析者の能力の包括的で独立したアセスメント
    このレビュに基づき、貴社の試験のシステムを改善し、効果を評価するための詳細な計画を提供せよ。
  • 貴社の製造作業の設計及び制御の、微生物の全ての危険の詳細で徹底的なレビュを含む、包括的で独立したアセスメント
  • 好ましくない汚染の可能性がある販売された医薬品によりもたらされる危険に対応した詳細なリスクアセスメント
    リスクアセスメントに対応して、顧客への通知や製品の回収等の、貴社がとろうとしているアクションを明記せよ。
  • 好ましくない微生物の汚染の可能性がある全てのロットの完全な調査
    調査は、汚染の根本原因に関する調査結果を詳細に説明すべきである。
  • 貴社の各医薬品のロットの適切な微生物のリリース規格(すなわち、総菌数、好ましくない微生物を検出するためのバイオバーデンの特定)
  • 貴社の各医薬品を分析するために使用されている全ての化学及び微生物試験の方法
  • アメリカ薬局方の目録に記載されている貴社の全ての医薬品が公定基準を満たしていることを保証するためのギャップのアセスメント
  • ロットの処遇の判断の前に貴社の医薬品の各ロットを分析するために使用されている試験方法を含む化学及び微生物の規格のリスト

●指摘5

貴社は、ロットがサンプリング・試験・検査され、品質管理部門により使用のためのリリースがされるまで、成分、医薬品の容器、蓋の各ロットの使用を差し控えることを怠った。
(21 CFR 211.84(a))
<指摘4詳細>
貴社は、貴社の医薬品の製造で使用される成分の全てのロットの全ての荷物についての試験を怠った。具体的には、貴社は、医薬品の製造に使用する前に全ての荷物、容器、グリセリンに含まれるジエチレングリコール(DEG)とエチレングリコール(EG)を検出するための特定の同一性試験が不足していた。グリセリンのDEGの汚染は、世界中の人々に様々な致命的な中毒事件をもたらしてきた。さらに我々は、グリセリンとプロピレングリコールの両方が医薬品に使用されていることに注目している。医薬品の製造業者として、貴社は製造で使用するためにリリースする前に、全ての入荷した成分の荷物について、特定の同一性試験を実施する責任がある。
貴社は回答の中で、貴社はDEG試験のCOAをレビュしたと述べた。また貴社は、独立した外部の試験機関を使ってDEGについてグリセリンの試験をすぐに開始し、OOSが発生したら“適切なアクション”を検討すると約束した。
貴社の回答は不十分である。前に述べた通り、既に販売されたロットを含む医薬品の品質へのリスクだけでなく、CGMPの不備の範囲と影響や、関連するリスクに対処することを怠った。貴社のグリセリン含有製品に関する貴社の評価が、貴社が製造し、アメリカ市場で使用期限内にある各医薬品の全てのグリセリンのロットを含むかどうかについて対処していなかった。成分や含有物の適切な試験をせずに、貴社は貴社の医薬品の品質や安全性を保障することはできない。
グリセリンや、DEGまたはEGの汚染のリスクがあるその他の含有物を含む医薬品を製造する際に、貴社がCGMPの要件を満たす助けとして、FDAのガイダンス文書Testing of Glycerin for Diethylene Glycolを見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 成分、容器、蓋の全ての供給者が適格性を評価され、原材料に適切な使用期限やリテスト日付が付与されているかどうかを判断するための、貴社の原材料システムの包括的なレビュ
    レビュは入荷した原材料の管理が、不適切な成分、容器、蓋の使用を防ぐために適切かどうかも判断すべきである。
  • 製造に使用するために、入荷した成分の各ロットを試験しリリースするのに貴社が使用する化学及び微生物の品質管理の規格
  • 同一性、濃度、品質、純度に関する全ての適切な規格への一致について、貴社が各成分のロットをいかに試験するかについての記述
    もし貴社が、各成分のロットの濃度、品質、純度に関する試験をする代わりに、供給者の分析証明書(COA)の結果を受け入れるつもりなら、初期のバリデーションと定期的な再バリデーションを通して、供給者の試験結果の信頼性をいかに厳格に確証するつもりかを明記せよ。
    さらに入荷した成分の各ロットについて、少なくとも1つの特定の同一性試験を常に実施するという約束を含めよ。
  • 各成分の製造業者から得たCOAの信頼性を評価するために、全ての成分の試験から得られる結果のサマリ
    このCOAのバリデーションプログラムを述べた貴社のSOPも含めよ。
  • 貴社が製造した医薬品を試験する契約施設の適格性評価と監督に関する貴社のプログラムのサマリ
  • 貴社のグリセリン含有医薬品の製造に使用された全てのグリセリンのロットの保管サンプル内のDEG及びEGの試験結果を30日以内に提出せよ。その一部は小児科での使用を目的としている貴社の医薬品の製造に使用されたグリセリンのロットにDEGまたはEGが存在したかどうかを示せ。
    また、DEGまたはEGの汚染のリスクがある貴社により使用されて他の医薬品の含有物の保管サンプルの全てのロットの試験を実施せよ。
  • グリセリン(とDEGまたはEGの汚染のリスクがあるその他の含有物)を含み、アメリカ市場にある使用期限内の医薬品の完全なリスクアセスメントを提出せよ。含有物の全てのロットと、DEGまたはEGを含む可能性のある関連医薬品の安全性を判断するために、顧客への通知や汚染されたロットの製品回収を含む迅速で適切なアクションをとれ。これに限定されないが、全ての入荷した原材料が完全に適格性評価をされた製造業者から入ってきて、安全でない不純物が含まれていない、将来の安全なサプライチェインのために、追加の適切な是正処置・予防処置を特定せよ。

●請負業者として責任

医薬品は、CGMPを遵守して製造されなければならない。FDAは、多数の医薬品製造業者が製造設備、試験機関、包装業者、ラベル貼付業者などの独立した請負業者を使用していることを認識している。FDAは請負業者を製造業者の延長とみなす。
貴社には、製品のオーナーとの契約に関わらず、受託製造所として、貴社が製造する医薬品の品質に責任がある。貴社には、医薬品が安全性、同一性、濃度、品質、純度に関し、FD&C Act 501(a)(2)(B)に従って製造されていることを保証することが求められている。
FDAのガイダンス文書Contract Manufacturing Arrangements for Drugs : Quality Agreements
を見よ。

●CGMPコンサルタントの推奨

我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、アメリカ市場向けの医薬品の製造を再開するつもりなら、貴社は、CGMPの要件を満たす助けをする21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の製造所に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、全ての違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
もし、貴社の製造所で製造されている医薬品の供給の途絶につながるアクションを検討しているなら、CDERにすぐに連絡をとってほしい。
全ての違反を速やかに是正せよ。この問題に迅速かつ適切に対応しない場合、通知なしで、これらに限定されないが、差し押さえや差し止め命令を含む規制または法的措置につながる可能性がある。未解決の違反は、他の連邦政府当局との契約を阻むかもしれない。
違反への対応の不履行は、FDAの輸出証明書の発行の差し控えにつながる可能性がある。全ての違反が完全に対応され、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の製造業者としての新薬の申請やリストの補完の承認を保留するだろう。また、我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/profounda-inc-642595-02012023

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■CMS 642374■

2022年8月1日~8月5日のテネシー州の製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反について発した2023年2月15日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

貴社は、好ましくない微生物を含んでいないことが要求される医薬品の各ロットについて、必要に応じて、適切な試験を実施することを怠った。(21 CFR 211.165(b))
<指摘1詳細>
貴社は出荷前に、貴社のOTC医薬品を適切に試験することを怠った。例えば、手指の消毒剤や抗菌ハンドソープ医薬品のロットの記録は微生物試験に関する要求を含んでいるが、貴社は微生物特性に関して各ロットを試験することを怠った。代りに、貴社は我々査察官に、分析のためにサードパーティの試験機関にXXを送ることのみを行っていると述べた。貴社は、査察官に要求された際、標準平板菌数の試験に含まれていたものに関する文書も、サンプル試験の頻度に関する科学的根拠の文書も提出しなかった。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • ロットの処遇の判断の前に貴社の医薬品の各ロットを分析するために使用されている試験方法を含む化学及び微生物の規格のリスト
  • アメリカに販売され、この文書の日付時点で使用期限内にある医薬品の全てのロットの品質を判断するための、保管サンプルの全ての化学及び微生物学的試験を実施するためのアクションプランとタイムライン
  • 各ロットの保管サンプルの試験から得られた全ての結果のサマリ
    それらの試験で基準を下回る医薬品の品質が明らかになった場合、顧客への通知や製品の回収等の迅速な是正処置をとれ。

●指摘2

貴社は、そのロットが既に出荷されているかどうかに関わらず、ロットやその成分が満たすべき規格との説明のつかない不一致や不具合を徹底的に調査することを怠った。(21 CFR 211.192)
<指摘2詳細>
貴社は抗菌ハンドソープ医薬品のいくつかのロットについて、安定性の確認中の規格外(OOS)の分析結果の調査を怠った。例えば、貴社の抗菌ハンドソープ医薬品のクロロキシレノールの分析試験の、XXのタイムポイントの安定性確認で、0.31%を含む結果になった。この製品の属性に関する貴社の規格はXX%だった。貴社はOOSの結果について調査を実施することを怠った。
貴社は、原材料の隔離や、期限切れの不合格を行い、医薬品の製造に使用されるのを防ぐことを怠った。
2022年6月28日、貴社は、2021年6月17日に使用期限が切れている原材料の塩化ベンザルコニウム(BZK)を、販売のためにリリースされたインスタントの手指消毒フォームの製造に使用した。
我々は、貴社の回答の中で、貴社が期限の切れたBZKを廃棄のために隔離したことと、インスタントの手指消毒フォームの製造の回収を実施したことを認識している。
貴社の調査のための品質システムは不十分であり、安全で有効な製品の一貫した製造を保証していない。
不具合、規格外、傾向外、またはその他の予期しない結果の取り扱いと、貴社の調査の文書化に関する更なる情報は、
FDAのガイダンス文書Investigating Out-of-Specification(OOS) Test Results for Pharmaceutical Production
を見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • この文書の日付時点で最初の査察から3年以内で、現在アメリカ市場にあるアメリカ向け製品の全てのOOSの結果の回顧的で独立したレビュと、各OOSについて下記の内容を含む分析で見つかったことをまとめたレポート:
    • 科学的な正当性とOOSの結果に関係するエビデンスが、原因となる試験のエラーを決定的または非決定的に示しているかどうかの判断
    • 試験の根本原因が確認された調査については、論理的根拠を提出し、同じまたは類似の根本原因に対して脆弱な他の全ての試験方法が改善のために特定されていることを保証せよ。
    • 回顧的レビュで試験の根本原因が非決定的、または、特定されない全てのOOSの結果について、製造の徹底的なレビュ(例:ロットの製造記録、製造ステップの妥当性、機器/施設の適合性、原材料のばらつき、製造能力、逸脱の履歴、苦情の履歴、ロットの不具合の履歴)の結果を含めよ。各調査において、潜在的な製造の根本原因サマリと、全ての製造作業の改善を提出せよ。
  • 貴社のOOSの結果の調査システムに関する包括的なレビュと改善の計画
    是正処置と予防処置(CAPA)はこれに限定されないが、以下のことへの対処を含むべきである:
    • 試験の調査に関する品質部門(QU)の監督
    • 試験管理の良くない傾向の確認
    • 試験のばらつきの原因の解決
    • 試験の原因が決定的であると判断されなかった場合はいつでも、潜在的な製造の原因の徹底的な調査の開始
    • 各調査の適切な範囲の決定と、そのCAPA
    • これら及びその他の改善されたOOSの調査の手順の改訂
  • 逸脱、食い違い、苦情、OOSの結果、不具合を調査するための貴社のシステム全体の包括的で独立したアセスメント このシステムを改善するための詳細なアクションプランを提出せよ。貴社のアクションプランには、これに限定されないが、調査能力、調査範囲の決定、根本原因の評価、CAPAの有効性、QUの監督、文書化された手順の大幅な改善を含むべきである。調査の全ての段階が適切に実施されることをいかに保証するかを検討せよ。

●指摘3

貴社の品質管理部門は、製造された医薬品がCGMPに従い、同一性、濃度、品質、純度に関して制定された規格を満たすことを保証する責任を果たすことを怠った。 (21 CFR 211.22)
<指摘3詳細>
貴社のQUは貴社の医薬品の製造に関し適切な監督を実施しなかった。例えば、貴社のQUは以下のことを保証するのを怠った:

  • 調査の扱い、製品隔離、苦情の扱い、変更管理、安定性の不具合について述べた適切な手順
    (21 CFR 211.22(d))
  • 同一性、純度、濃度、その他の適切な品質特性に関する入荷した成分の適切な試験
    (21 CFR 211.84(d)(1)、(d)(2)))
  • 適切で継続的な安定性プログラムの制定(21 CFR 211.166(a))

貴社の品質システムは不十分である。CGMPの規制21 CFR、part 210, part 211)の要件を満たす
ために、品質システム及びリスクマネジメントアプローチを実装する助けとして、
FDAのガイダンス文書Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulations
を見よ。
この文書への回答な中で、QUが効果的に機能するために権限とリソースが与えたれていること
を保証するための包括的なアセスメントと改善計画を提出せよ。アセスメントにはこれに限定されないが、以下のことを含むべきである:

  • 貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
  • 適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体のQUの監督に関する規定
  • QUのロットの処遇の決定前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュの実施
  • 調査の監督と承認と、全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するためのQUのその他全ての職務の遂行

●指摘4

貴社は、貴社が製造する医薬品が、それが持つとうたわれている、または、表示されている同一性、濃度、品質、純度を持つことを保証するために設計し文書化された手順と工程の管理を制定することを怠った。(21 CFR 211.100(a))
<指摘4詳細>
貴社は、手指の消毒薬と抗菌ハンドソープ医薬品の製造に使用される製造工程と水システムを適切にバリデートすることを怠った。例えば、貴社のロットの記録には、抗菌ハンドソープの濃度が低い場合、必要に応じてXXを追加するようなバリデートされていない工程内の調整を含んでいた。貴社は、貴社の製造工程が、均一な性質と品質の医薬品を一貫して製造するために制御されていることを示さなかった。さらに、貴社は、水システムをバリデートしておらず、手順を保持せず、調査官の要求に応じて規格を提供しなかった。
貴社は、安定した製造作業と一貫した製品品質を保証するための工程の制御のモニタリングに関する継続的なプログラムが欠けている。
FDAがプロセスバリデーションの要素と考える一般原則とアプローチについて、
FDAのガイダンス文書Process Validation : General Principles and Practicesを見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

  • 製品のライフサイクルを通じて、管理状態を保証するためのバリデーションプログラムの詳細な概要と関連する手順 継続的な管理状態を保証するために、工程性能の適格性評価とロット内及びロット間のばらつきを継続的なモニタリングする貴社のプログラムについて述べよ。
  • 貴社が販売する各医薬品に関する適切な工程性能適格性評価(PPQ)の実施に関するタイムライン
  • 貴社の工程性能のプロトコルと、装置及び施設の適格性評価に関する文書化された手順を含めよ。
  • 継続的な管理状態を保証するための、ロット内及びロット間のばらつきの慎重なモニタリングを含む貴社の各製造工程の設計、バリデーション、維持、管理、モニタリングに関する詳細なプログラム
  • 貴社で製造される医薬品の各ロットで使用するためにその許容性を保証するための水の定期的な微生物試験を明記した貴社の水システムのモニタリングに関する手順
  • 貴社の水システムXXに関して使用されている総菌数や好ましくない微生物に関する現在のアクション/アラートのリミット
    貴社の水XXの総菌数のリミットが、貴社で製造される各製品の使用目的の観点で適切に厳格であることを保証せよ。
  • 改善されたシステムが一貫して、アメリカ薬局方の公定基準と適切な微生物の制限値を満たすXX水を製造することを保証する、継続的な管理、メンテナンス、モニタリングに関する貴社のプログラムを管理する手順

●未承認の新薬と虚偽表示の違反

省略

●CGMPコンサルタントの推奨

貴社がアメリカ市場向けの医薬品製造を再開するつもりであれば、我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、貴社は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために、21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うべきである。貴社がFDAと共に貴社のコンプライアンス状態の解決を達成しようとする前に、適格なコンサルタントが貴社のCGMP遵守に関し貴社の全ての作業の包括的な監査を実施し、CAPAの完了と効果も評価すべきである。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の製造所に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、全ての違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。この問題に迅速かつ適切に対応しない場合、通知なしで、これらに限定されないが、差し押さえや差し止め命令を含む規制または法的措置につながる可能性がある。未解決の違反は、他の連邦政府当局との契約を阻むかもしれない。
違反への対応の不履行は、FDAの輸出証明書の発行の差し控えにつながる可能性がある。全ての違反に完全に対応され、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の製造業者としての新薬の申請やリストの補完の承認を保留するだろう。また、我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/midlab-incorporated-642374-02152023

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ウォーニングレターを読むと、FDAにより厳しく管理されているであろうアメリカ国内の製薬会社でも、リリース前の原材料の使用、製品試験の不実施、手順の制定の不備、安定性試験データの不備といった、基本的な内容の指摘を受けていることがわかり、なかなか興味深いです。

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【発行責任者】

株式会社プロス 『ASTROM通信』担当 橋本奈央子 hashimoto@e-pros.co.jp

※本記事は株式会社プロスの許可を得て転載しております。

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